4th 全部滲んでくすんでく。
雨が止まない。
ここ最近、ずっと雨が降り続けている。
「はぁ……雨止まないね、お姉ちゃん」
「そうだね〜……はぁ」
よく小説で登場人物の感情なんかを背景で描写する手法を見るけれど、現実は多分逆なんだ。私は天気だけが原因じゃないけど、でも明らかに私もクーちゃんも雰囲気に引っ張られている。
「はぁ〜……」
「……お姉ちゃんため息多いよー」
「うぅ……だって〜、梅雨のせいもあるけどね?中間テストあんなに酷い点数になるなんて思ってなかったんだもん……赤点がないだけ良かったかなぁ」
思わず机に倒れ込む。上半身が溶けていくみたい。視界が揺らぐ。クーちゃんの姿も、窓の水滴も、歪んで混じって黒くなって……消えてしまいそう。
一華は目をゆっくり閉じると、また一つため息をついてから呟いた。
「気分転換、したいよね」
でも遊園地には少し前に行ったばかりだし、そもそもお金がそんなにない。貯蓄はまだしばらくは持つだろうけど、そんなに使いまくって良い額じゃなかったはず。なにか収入源を見つけないと一年がギリギリじゃないかな。実はクーちゃんが来たことで大きく必要なお金が増えたわけじゃない。だから緊急でなにかしないといけないわけじゃない……けど。
「明日学校で葵に聞いてみよっかな」
一華はゆっくり目を開けた。そして安堵した。
(良かった、ちゃんと元に戻った)
翌日、学校にて。
「ねぇ葵〜」
「一華?ちょ、急にどうした〜そんなにベッタリと〜」
勢いよく抱きついた私の頭を葵がぽんぽん軽く叩く。私は葵のお腹に顔を埋めた。
「……あぁぁあい」
「は?」
「おえおぉあぁお〜」
「本当か〜?って、なんの用なの?」
一華はバッと顔を上げた。困惑しつつも優しく話を聞こうとする葵の顔。本当の母親のように安心する。
「最近梅雨で気分ずーっと下がっちゃってさ〜どこか気分転換しに行きたいなーと思って」
「それで相談ってわけね?うーん、どこが良いかな……水族館……いや、ショッピング……雨が大丈夫なところが良いよね……うーん」
そういうと葵は唸りながら腕を組んで座ってしまった。相談する人を間違えていた……葵はそういえば優柔不断だった。……今日中に答えが貰えると良い方だった。
「一華さん、それであんなに俯いてたんだ」
「ん?ビックリした〜、さゆー」
佐々木 小百合、通称さゆ。葵と同じ、クラスメイト。私の家の近くのマンションに最近引っ越してきたばかりらしい。結構大人しい印象だし、あんまり話しかけてくることはなかったんだけど……。
「もしかして見られてた?」
「別に見ようと思って見てたわけじゃないんだけど、たまたま。一華さんにあんまり俯いてるイメージなかったから驚いて」
さゆはそういうと窓に腰掛けた。
「そっか、一華とさゆ家近いもんね」
「さゆ、危ないよ?」
「……大丈夫だよ、これくらい」
さゆは窓の枠から降りると私に向かってこう言った。
「私……最近ちょっと吹っ切れてさ。今はいわゆる無敵だよっ」
「違うからね!?」
ピースとグッドで猛アピールするさゆに思わずツッコむ。でもさゆ、たしかに急に吹っ切れた……なにか良いことでもあったのかな。いやっ、どんだけ良いことがあっても人間、無敵になんてならないから!
「……あ、そろそろ来る頃じゃん!私らも準備しなきゃ」
葵が時計を見てそう言った。その時だった。
「おはよー、さゆもいるとは珍しい。三人ともなに話してるの?」
「噂をすれば!黄雪ぃ、今日ももうすぐ三時間目始まるんだから、おはようじゃないでしょー」
葵が軽く言った。もう少し強く言っても良いと思うけどなー。
石竹 黄雪。この娘もクラスメイト。中学は別だったんだけど、私とも葵ともすぐに打ち解けた。少なくとも今日までに十回はこうやって遅刻している。
「えっへへ……朝弱くって〜」
「そんなので大丈夫?」
私がそういうと、黄雪はバッと私に詰めてきた。
「一華!さっきなんの話してたの?」
「あ、後で黄雪にも話すから、今は次の準備した方が良いと思うけど?」
と言い終わると同時にチャイムがなる。
「やっばー!私が怒られたら、みんなの席が遠いせいだからね〜!!……いたっ!?もー机じゃま!!」
お昼になって。
「ふんふんなふほほー、ゴクン……たしかに、気分転換したいよね〜」
「黄雪なにか良さそうなのはない?葵はずっと考えてて三時間目も四時間目もノートほっとんど書いてないし……」
「一華よく分かったね」
「ずっと放心してたもん。よく先生怒らなかったってレベル」
「マジ?」
私、さゆ、黄雪の三人で強く頷いた。葵は驚いた表情のまま固まった。
「……ほうああぁ〜ゴクン……葵ずっと考えてたんでしょ?なにか案のひとつくらいない?」
黄雪の質問に、葵はお弁当のトマトをひとつ摘むとちゃんと飲み込んでから言った。
「雨が降っても大丈夫な、水族館とかショッピングとか、あと映画とか〜そうそう、博物館とか」
「……」
さゆ?さっきから黙って……黄雪も……。
「……そっか葵!ちゃんと考えてたんだー!」
「そりゃそうだよ〜ね、一華」
「ん?そうだね〜」
「一華聞いてなかったでしょ!まったく〜あんたのために話してんだからね?ほれほれ〜」
葵が一華のほっぺをつまんで引っ張ったり逆に押したり。
「やへへほ〜、ほへんっへ〜」
結局、その日答えは貰えなかった。
「クーちゃん」
「なにー?お姉ちゃん」
お風呂を上がった私は、一緒に入っていたクーちゃんをタオルで拭きながら聞いてみた。
「クーちゃんはどこか行きたいところある?」
「行きたいところ?」
「うん。気分転換したくって」
一華はタオルを洗濯機の上に置き、服を着ながら続けた。クワはうーんと難しそうに考える。
「私はお姉ちゃんとなら別にどこでも……うーん……」
「身体が冷えた分お風呂……あ!ねぇクーちゃん、温泉とかどう?ちょうど近くに良いところがあるの!」
「温泉?行きたい」
「それじゃあ今週末……確か土曜日は葵と遊ぶから日曜日、二人でゆっくり癒されよぉ〜」
「お姉ちゃん髪の毛わしゃわしゃしないで〜」
「ふっふっふ……温泉は良いよ〜疲れも汚れもみーんな洗い流して落としてくれるから」
「ほらお姉ちゃん、はやく行こ?」
「待って待って〜」
日曜日、楽しげに駆けていくその様子を遠くからじっと見る一つの影があった。
「……紅……一華」
その人物は握った拳を震わせる。
「ふざけるなよ……お前……」
震えた拳が机に向かって振り下ろされる。その時だった。
「っ!!……気のせい……か」
一華と目が合った……気がした。あいつの赤い目が、鋭く鋭利に刺してくるような感覚……なぜか最近おかしい。ようやく確信を持って、ようやく……決意したのに。
「お前は幸せになっていいわけがない。救われていいわけがない。お前は歪んでいて……間違っているんだから」
幸せそうな一華の笑顔。その影の目には、それしかうつっていなかった。
こんにちは!はとです!
お久しぶりです!アレや文化祭の準備やらで忙しくって。もう現実は梅雨というより夏だし中間というより期末だよな。おぇ……。
それで学生のみんな、聞きたくないけどどうだった?アレ。私は無事死にかけたよ☆一華と一緒^^;
そうだ、先にお伝えしたいんだけど……この先(特に終盤・最終話辺り)だいぶ決まってきたからGPTに相談したらR18相当確定らしいんだよね。何とか描写方法次第ではカバーできるらしいし私もそっちがいいんだけど……私の腕が足らなかったらすまん_|\○ _
最後まで読んでいただきありがとうございました!
意見・感想・考察その他色々お待ちしております!
それではまた!( *¯ ꒳¯*)ノばいばーい♪