2nd 黄金色の七日間
「クーちゃん、どこかに行こっか!」
私たちが出会ったのは昨日のようなのに、もう月が変わっているらしい。時間が流れるのは早いもので、いつの間にかGWを迎えていた。私はやっておきたかった課題が片付いたから、せっかくだしクーちゃんとどこかに行きたいと思ってこうして誘っているわけだけど……。ちなみに、実は今日がGW最終日。
「どこか?」
「うん。遊園地とかー映画館とか。それとも他にどこか行きたいところある?」
頭の中に、瞬時に色々な風景が浮かび上がる。全部は叶わないだろうけど……きっと一生の思い出になる。私はクーちゃんになにがあったのか知らない。それでも初めて会った時のあの孤独に苦しんで寂しそうな姿がまぶたから離れない。だから私は……。
「お姉ちゃん楽しそう。私最初のが気になる」
「最初の?えーっと、遊園地だったっけ」
「そう。クー、遊園地行きたい」
そして今、私たちは電車で一時間くらいの遊園地に来ています!
ここ、「はなだま遊園地」は予想していたより人も少なくて、少し安心しています。
「それにクーちゃんの分のお金がいらないなんて予想外だった……クーちゃん、あとでお土産屋さん行こっか」
「うん。あ、あれ……」
「えーっと、クレープ?食べる?」
私たちはイチゴとバナナがたっぷり乗ったクレープをふたつ買った。そばにちょうどいい木陰とベンチを見つけたから、そこで食べることにした。
「おいしい?」
「うん。クリームいっぱいでおいしい」
「良かったー」
なんだか視線を感じる……もうすぐ食べ終わるし、そうしたらさっさと移動しようかな……そう思った時だった。
「あの……」
おじいさんが突然話しかけてきた。初対面だった。私とクーちゃん以外、そばには誰もいない……私たちに対して、話しかけているらしい。
「はい、なにか……?」
「つかぬ事をお聞きしますが、貴女は今なにを?」
即座には理解できなかった。少し拍子抜けしてしまった……。まさかそんな話だなんて思っていなかったから。
「えっとぉ、クレープを食べてますが」
周りの視線を余計に感じる。せっかくの楽しい時間なんだから、放っておいて欲しいのに……。
「そうではなくですね……その……あなた」
おじいさんの目線は虚空に向けられた。そう、私でもクーちゃんでもなく、誰もいない場所。そこに向かって話しかけているようだった。
考えすぎかもしれないけど、もしかしたら危ないかもしれない……そう思った私はクーちゃんの手を引くと走って逃げだした。
「ごめんなさい!クーちゃん、行こう!」
「ごちそうさまでしたーお姉ちゃんの残りも貰うねーあむっ……きゃっ!」
「あ……」
おじいさんは追いかけようとはしてこなかった。振り返って見たおじいさんは、どこか驚いているように見えた。
「はぁ、はぁ、はぁ……ビックリしたね〜。はぁ、はぁ」
少し走りすぎてしまった。
入口近くのクレープ屋の辺りから、ちょうど反対側まで来ていたのだ。どれくらいかと言うと……一華が全力疾走してだいたい五分くらいはかかる距離だった。
「お姉ちゃん……ゼッタイここまで走らなくて良かったよぉ」
「ごめんねー、ちょっとね……かわりにじゃないけど、ほら、ここジェットコースターだし乗ろうよ」
ジェットコースター。実は今まで一度も乗ったことがない……だからワクワクしているけど、心臓はバクバクしている。大丈夫かな、運が悪くて事故にあってしまうんじゃ……。
「や、やっぱり別の」
「うん、乗ろうお姉ちゃん。お姉ちゃん?どうかしたの?」
私は心の中で神に祈りを捧げるしかできることはなかった。
カタ……カタ……カタ……。頭に響く音が心臓を震わせる。
少しずつ世界が小さくなっていく。楽しそうな顔の人たちがどんどん小さくなっていく。私たちはこんなにもちっぽけだったんだ。こうして見ると、空いているように見えたこの遊園地にも、結構人はいたらしい。
「それなのに……なんで……なんで他に誰もいないのー!?」
頂に達したジェットコースター。先頭に案内された私たちは、落ちる前に落ちることがわかる。さっきまではしゃいでいるように見えたクーちゃんの顔にも、少し恐怖の色がある。それじゃあ私はどうなんだろう。
「「キャーーーーーー!!!!」」
楽しい……!
「次、あれ行こー」
「ちょ、ちょっと待ってぇ〜……」
あの後ジェットコースター二回、船がゆらゆらするやつ二回、コーヒーカップ一回、オマケにお化け屋敷一回をしてきた。移動とハードな体験にもう身体が言うことを聞かない。今すぐにベッドに横になりたい……。
「お姉ちゃん早くっ」
クーちゃんの体力はもしかして無限なのかな。子供ってこんなに疲れないものだっけ。
なにかを指さして飛び跳ねる一人の少女は、ひとりの姉をずっと待っている。
「お姉ちゃん早くー!クー、ずっと待ってるよ!」
「ごめんね〜お姉ちゃん疲れちゃって」
「あれ行こーよー」
クーちゃんの指はずっと上を指さしていた。
幾重にも重なったカラフルな輪がゆっくりと動いていた。
「観覧車?」
「さいごはあれが良いなーって。お姉ちゃんも疲れちゃってるでしょ」
気づかわれちゃってる……。
「ご、ごめんね。気を使わせて……」
「そんなことないよっ、ほらいこー」
他の人たちが帰っていく中、私たちはその流れに逆らった。ふたりで手を繋いで、人と人との間を軽くすり抜けていく。どう思われたって構わない。顔をしかめられても小声でなにかを言われても。観覧車に乗ると言ったら乗るんだ。
「まだっ乗れますか!」
「観覧車……って、こんなに遅かったんだ」
「だね」
「クーちゃん、ここから見える景色、すっごく綺麗だよ」
「アトラクションとかビルとかの小さな明かり……たしかに綺麗」
「……クーちゃんは好きな季節ってある?」
「好きな季節?」
「うん。私は春が好き」
「……私も、春が好き」
アトラクションの輝きは、ひとつづつ、ゆっくりと消えていった。
こんにちは!はとです!
ふたりの描写むっずい。お互いの認識が現時点でどのくらいなのか……。
あと、もう既に結構張ってる伏線についても、あからさま過ぎないかどうか……。あ、別にこれに関してなにか気づいたことや考えたことがありましたら、ここのコメントでも私のx(プロフィールから飛べるはず)でも送ってください!結構こーゆーの待ってるので^^
そうそう、執筆ついでに今後について考えていたところ、だいたい二十話くらいになりそうです。ただ前作の「きみのこともっと知りたい」も、確かに短く終わらせるつもりで書いていたものの、ほんっっとうにはじめの頃はもっと長いつもりだったので信ぴょう性はないですけどね(苦笑)
最後まで読んでいただきありがとうございました!
意見・感想・考察その他色々お待ちしております!
それではまた!( *¯ ꒳¯*)ノばいばーい♪