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1st 出会いの季節

一部今後の展開を含む可能性があります。現時点で確定はしていませんが、念の為気をつけていただければと思います。

また、今後展開の変更や皆さんの声を受けて追加する可能性もあります。たまに見直していただけると嬉しいです。




▼以下注意点(これらの描写・要素を含みます)


・極めて暴力的描写や残虐な描写

・宗教に関わる描写(現実をモチーフにはしておりません)

 とても長い夢を見ていたような気がする。

 幸せで……でもなぜか、心のどこかが痛い夢。おかしなぐらいにリアルな夢。

 でも目が覚めるとそこはいつもの私の部屋で、いつものように夢の出来事なんて忘れてしまった。

 アラームが朝の七時を告げている。

 私は夢を見たことさえ忘れた。



「今日も疲れたぁ……早く家で休みたい……」

 日が暮れかかった帰り道。私は早く帰りたくて普段あまり通らない近道を通ることにしていた。

 人通りはない。昨日の雨のせいか少しジメジメしているような気がする。

 ぴちゃ、ぴちゃという足音は、私のものしか聞こえない。心なしか不安になってくる。でも、離れたところから車の走る音がする。私は独りじゃない。

「もうすぐここを抜け……うわぁっ!」

 角を曲がろうとした私は、突然目の前に現れた女の子を見て驚き、思わず変な声が出た。

 まだ小さな女の子。白い綺麗な髪。キラキラとした目で私をじっと見つめてくる。でも服はボロボロで、見るからに古そうな靴には泥やなにかよく分からないものなんかが固まってくっついていた。可愛い顔なのに、不釣り合いでもったいないなと思った。

「まったく気づかなかった……ね、大丈夫?」

 女の子の返事はない。

「……ビックリしちゃったね。もう遅いよ?……お母さんとか心配してない?」

 女の子はじっと見つめ返した。まだなにも言わない。

「困ったなぁ、どうしよう」

 その時だった。

「ママいない」

 か細い声で女の子はそう言った。

「そうなんだ。じゃあパパは?」

「いないよ。クーひとりぼっち」

 そう言うと女の子は制服の裾をつまんだ。

「……クーってのは、君の名前?」

「……うん。クワっていうの。お姉ちゃん……クー、お姉ちゃんと一緒にいたい。お姉ちゃん、私を助けて……」

 私はどこかおかしかった。普通は乗らないその提案に、なぜか乗ってしまった。きっと近親感が湧いていたんだ。私にも両親がもういないから。だから自分のように見えて、助けたくなったんだと思う。

「わかった。それじゃあお姉ちゃんのお家に行こっか。もうすぐ着くからね」


 私たちがこうして出会ったのは、四月の初めの頃だった。


「お姉ちゃん行ってらっしゃい」

「クーちゃん、行ってきます!」

 それから一週間くらい経って、私たちはすっかり仲良くなった。私、(くれない) 一華(いちか)が出会って助けたクーちゃんことクワちゃんは、あまり自分のことを話したがらなかった。無理に聞くのも悪いと思ったから、私から詳しく聞くことはなかった。だから私はクーちゃんのことをほとんどなにも知らない……でも、それで良かった。

 私は歩きながら出会ったあの日のことを思い出していた。


 クーちゃんはあの日、余っていたレトルトカレーをあげて少し話すとすぐに寝てしまった。やっぱり疲れていたみたいで、しばらく全然起きなかった。

「お姉ちゃん……ありがとう」

「起きたの、お腹すいてない?」

「大丈夫だよ」

「そう?じゃあお姉ちゃんもうちょっとしたら出かけるから、お腹すいたら机の上のカレー昨日みたいにあっためて食べておいてくれる?」

 クーちゃんはコクンと小さく頷いた。

 クーちゃんは私が思っていた以上にいろいろできる子だった。その日私が帰ってくると、クーちゃんは部屋に掃除機をかけていた。

「クーちゃん!?」

「あ、お姉ちゃんおかえり」

 掃除機をかける手を止めてこっちに軽いステップで駆けてくる。

「鍵のかかってる部屋以外はみんなやっておいたよ」

 鍵のかかってる部屋とは、私の部屋や作業部屋なんかだ。危ないものも多いから、突然誰かがやってきても大丈夫なように念の為鍵をかけてあった。クーちゃんが怪我をしていないようで良かった。

「ありがとう。カレー食べた?」

「んーん、忘れてた」

「そっか、お腹すいてないの?うーん……それじゃあお風呂にしよっか。クーちゃん一緒に入る?」

「うんっ」

 もう次の日になる頃だった。倒れたままの掃除機はいつもの場所に立てておいた。


「一華どうかしたー?」

 そう呼びかけられてハッとした。いつの間にか学校に着いていたみたいで、友だちの天笠(あまがさ) (あおい)がもの凄い至近距離で顔を覗き込んでいた。

「ビックリしたなぁもう」

「ごめんごめん。教室入ってくてずーっとぼ〜っとしてたから気になって。なにか考え事〜?」

「うーんそんなとこ。一時間目なんd」

「もしかしてさ!」

 葵が言葉をさえぎって詰め寄ってくる。急いで引いたから椅子が倒れかけた。

「う、うん……なに?」

 葵は私の耳に口を近づけると、囁くように言った。少しくすぐったかった。

「好きな人のこと考えてたでしょ」

「あーわかんない」

「わかんないってなに!?それってそういうこと!?」

「どういうこと!?」

 葵好きだよね、こういう話。普段ずっと優柔不断なのに、この手の話題になると脊髄がものを言い出すから。発言を考える間もなく畳み掛けるから、落ち着くまでちょっと大変なのが、葵。そういうギャップが面白いなって思う。

「そっかー。一華もそんな歳なのかーお母さん嬉しいよぉ」

 このノリはよくある。私が両親をなくしたと知った葵が、私を元気づけるために始めてくれたノリ。そのことを知らない人からすると不謹慎に見えるみたいだけど、でも私は……もう葵が本当のお母さんのように見える時もある。支えになってる……のかな。

「そっかそっかー別にそんなことないんだけどねー。それより、一時間目なんだっけ」

 学校生活は賑やかで楽しい。クラスの仲もいいし、わかりやすいイジメはもちろん、裏で陰口みたいなのもない。確かに悪ノリみたいなとこはたまにあるけど青春だなぁってぐらいだし、私はこのクラスが好きだと思う。

 あっという間に時間は過ぎていった。また明日も来る楽しい時間。クーちゃんを連れてきて見せてあげたい。


 家に帰るとクーちゃんはテレビの前の椅子で机に突っ伏して寝ていた。

「ただいまー」

「あ……おかえりお姉ちゃん。今日は早いね」

「部活ないからねー」

 カバンを下ろして制服を着崩す。クーちゃんはなにかを指さして言った。

「そういえばあの黒いのなぁに?」

 指さされた先には小さな土台の上に積まれたお塩があった。


 ー「我が家ではここに置かせて頂こう。誰も触るんじゃないぞ、穢れてしまうからな」ー


「あぁ、盛り塩って言ってね。昔……お父さんが置いて触らないようにって。だからずっとそのままなんだけど……流石に古くなっちゃったのかな」

 クーちゃんは黙ってそれを聞いていた。こう、真剣な面持ちで聞かれると緊張するものなんだね。私はあまり気にしたことがなかったから、クーちゃんにも無視していいと伝えておいた。

 そうこうしているうちに、あっという間に夜になった。クーちゃんが来てからなんだか一日の時間が短くなったような気がする。

「クーちゃんおいで」

 私はベッドにクーちゃんを呼んだ。両親が使っていたベッド。私用に布団があるんだけど、あんまり好きじゃないから二人をなくしてからはこっちを使っている。

 クーちゃんはベッドに入るとすぐに眠った。静かな夜。今までとなんら変わりないような気がするのに、それは確かに違う。私の隣にクーちゃんがいる。小さくて細くて大人しくて、可愛いクーちゃんは、すっかり私の一日に組み込まれ、これからの人生を大きく変えた。幸せそうなクーちゃんを見て心から思う。私はこの子にとって間違ったことはしていないんだと。

「四月は出会いの季節……クーちゃんのおかげで、一番好きな季節になった。クーちゃんも、そうだと良いなぁ」

 私たちは眠りについた。

 幸せな夢。

 忘れていた希望。


 明日が楽しみで仕方がない。

こんにちは!はとです!

私自身は男ですので気になる描写があるかもしれませんが、今後ともこの作品をよろしくお願いします(*^^*)

なお私の好きな作品の影響をかなり受けているような気がします。パクリにならないよう組み立てていきますが、もしなにかありましたら遠慮なく伝えて欲しいなと思いますm(_ _)m

最後まで読んでいただきありがとうございました!

意見・感想・考察その他色々お待ちしております!

それではまた!( *¯ ꒳¯*)ノばいばーい♪

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