国家間会議②
俺たちが提示した内容を要約すると、
・世界樹周辺の領土はどの国の領土にも属しないものとして扱い、神樹精はその管理を担う役割を持つ。
・貸し出す土地は神樹精が選定。それ以外の土地の貸し出しや開拓は禁止。
・貸し出した土地及び、神樹精が管理する領土の、極端に負のマナを生み出す行為の禁止。
・土地の貸与者は希望者の中から面談し、問題なしと判断した者にのみ限る。
・開拓した土地で得た利益の一部は税として神樹精側に納付してもらう。
その他雇用条件や、俺が提案した福利厚生についても説明し、ルミナの説明は終了となった。
「都合のいいことを言って、結局は貴殿らが世界樹の利益を独占するための決まり事ではないか?」
「得た利益は正のマナを循環させるための活動資金とさせてもらう。私腹を肥やすような使い方はしないと誓う」
「貸与者を選定する条件は? 神樹精が審査を行うなら、偏るのではないか?」
「公平性を保てるよう、はじめのうちはドミニク王にも協力してもらう手はずだ。友好国の王の意見も取り入れるとなれば、不安もあるまい」
説明する間で、リガル王が細かな質問をかぶせてくるが、それに対し淡々とルミナが返していく。
そして、
「土地の管理という責務を、貴殿らが果たせなかった場合の責任は?」
「土地を皆に明け渡し、管理の権限を譲渡する」
「——わかった」
少し間を開けてから、リガル王が一度だけ小さく頷いた。どうやらこれで最後の質問らしい。
「しばらくは泳がせてやる。人間の利益にならんと判断した場合は降りる」
「とりあえずは仲良くしてくれるって認識でいいか?」
ドミニクの問いかけに、リガル王は何も返さなかった。
「黙ってるってことはそういうことでいいな? んじゃ、今日の会議はこれまでってことで! 皆さまお疲れさんでした!」
ドミニクが強引にその場を纏めると、リガル王は早々に席を立ち、部屋を去っていった。
「やれやれ。昔はもっと温厚な男であったはずじゃがのう」
リガル王が消えていった扉を見つめながら、フリューゲル王が俺たちに寄ってきた。
「そうだな」とドミニクも少し遠い目をして答えた。
「知り合いだったのか?」
「それこそこういう場でしか会わねえが、俺やフリューゲル王とも国同士では仲良くさせてもらっていたからな。神樹精のことを良く思っていなかったのは相変わらずではあったが」
「む……」
ルミナが口角を下げて不満を表明するも、「それでも」とフォローを入れるようにドミニクは続けた。
「こんな強引な侵攻をするような奴じゃないと思ってはいた。急激なマナの減少で何か変化があったかな」
どうやらドミニクたちには何か思うところがあるらしく、神妙な様子で顔を見合わせていた。
だが、いくら考えたってその答えは本人以外知る由もない。
「それはそうと」と話題を切り替えながら、愛嬌のある笑みを浮かべながら、フリューゲル王がルミナと俺に向き直る。
「土地を開放するとは、神樹精にしては思い切った選択をしたのう。そこの救世主様の入れ知恵か?」
「その通りじゃ」
フリューゲル王の推察に、少しだけバツが悪そうにルミナが言葉尻を濁す。
「ヨスガに指摘され、新しい管理と共存の道を探る必要性があると思い知った。今更ではあるが、世界の平穏の為に、そなたたちの力をお借りしたい。それに見合った利益を約束しよう」
「ホホホ。こちらとて良き商売の場を用意していただいたこと感謝しておるよ。それに、お主らの提示した福利厚生とやらも魅力的じゃったからのう」
どうやらフリューゲル王とは友好的な関係を築いていけそうだ。
ルミナとフリューゲル王が握手を交わす様子を見て、俺も安堵し表情を緩めた。
「それでは、民たちに此度の内容を持ちかえるとしよう。ああ、それと救世主殿」
俺たちを残して部屋を出ようとしたフリューゲル王が、何を思い出したか、俺に向かって振り返る。
「いずれ孫が世話になるかもしれん。そのときは仲良くしてやっておくれ」
「え? はい」
突然何の話か分からないが、とりあえず頷いておこう。
俺の返しに「ホッホッホ」と満足そうに笑ってから、フリューゲル王は部屋を後にした。
「さて、姫ちゃん、ヨスガ。俺たちも帰ろうか」
「だな。しなければならない準備が山積みだ」
これから世界樹周辺の土地の貸与希望者が各国から殺到することになるだろう。
俺たちは再びドミニク王の背に乗り、神樹精たちが帰りを待っている、開拓予定地へ向かって国を発った。




