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次のミッション


 同盟を結んだところで、俺たちはドミニクに送られてコンビニの店舗へ戻ってきた。


「なんだ、ヨスガは帰らんのか?」

「ちょっとドミニクと仕事の話をしないといけなくてな」

「童もいたほうがいいか?」

「値入とか販売方法とかの調整についてだから、纏まったら報告する。先に皆にいい知らせを入れてやれよ」


 俺がそう告げると、「それもそうじゃな」と納得して、ルミナとウィズは他の神樹精(ドリアード)の元へと戻っていった。

 

 そして、姿が見えなくなったところで、俺は一息ついてから、


「んじゃ、商談しますか」

「おう。酒は出してくれるんだろ?」


 ドミニクを事務所に案内し、俺は鋼竜族(ドラゴニュート)との炭酸ビジネスについて、細かな部分を話し合った。

 販売する商品の種類に、必要な材料。販売の規模から、商品一つ当たりの値入、得た利益の分配の割合など、纏めなくてはいけないことが山ほどある。


「結構値入は高めにするんだな」

「開発費以外にも金は必要なんでな。これ以上は譲れない」

「世界樹を管理する神樹精(ドリアード)が必要以上に利益を上げることは、他の種族は良く見ないと思うが」

「世界の為に重要な使い道があるんだよ」


 俺が考えている計画を離すと、ドミニク王も「そういうことなら」と納得の表情だ。


「……だが、そのために解決しなきゃいけない課題がある。実を言うと、今のままだと、いくら良い商品を作ろうが、大きな利益を上げることはできない」

「あ? 話が違うぞ。儲けさせてくれるって話だったじゃねえか」

「今のままならだ。解決策は考えてある。……あるんだが、ドミニク王。ルミナたちより先に、あんたの意見を聞きたい」

「……?」


 俺の言葉に首をかしげながらも、ドミニクは俺の話に真剣に耳を傾けた。

 そして、すべてを聞き終えた後で、


「……いや、まあ、なんだ、言うことはわかる。……わかるんだが、その……」


 うん。やっぱそういう反応になるよね。

 ドミニクが頭を抱えるということは、ルミナたちからすれば、なおさら複雑な気分になるに間違いない。そのことについては残念ながら予想通りというわけか。


「感情論抜きに、始めるならいつだと思う?」


 俺のその問いにドミニク王は、更に難しい顔になって、しばらく天井を仰いで沈黙した後、


「……今、だな」


 と諦めたような声を漏らした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


 そして、以前の休業から、久しぶりにコンビニを開業し、その日は大変な大盛況となった。

 以前のように珍しい品が手に入らないことは残念がられながらも、長い旅の途中で食料や飲み水を手に入れられることについて、感謝の声が多く寄せられた。


 そして、夕方に店を閉め、店の清掃を終えてから、俺はルミナたちを店に呼び出した。

 

「ヨスガ。皆を連れてきたぞ。……って、ドミニク王。お主もいるのか」

「ああ。俺が呼んだ」


 ドミニクがルミナに軽く手を挙げて挨拶をする。いつもなら豪胆な振る舞いで元気に挨拶をするドミニクだが、少し落ち着いた様子なので、ルミナが少し不振がっていた。

 ドミニクからすれば、俺がこれから話す内容を知っているわけなので、気が重いのは仕方ない。正直俺だって自分から切り出したくない。


 だが、話さないわけにもいかないので、俺は息を少し整えてから、改まった声で切り出した。


「全員、今の店の状態を見てどう思う?」

「どうって……」


 俺が質問すると、ルミナやウィズを含む神樹精(ドリアード)たちが顔を見合わせてから、店をぐるりと見渡した。

 そして、少し間をおいてから、


「うむ。品切れになるまで商品が売れて実に大盛況といったところじゃろう。この調子で店を利用してもらい、店を通じて正のマナを生み出せば————って、あいったああああああああああああああ?!」


 このやろう。ドヤ顔で俺が求めていた回答と真逆のことを言うんじゃねえ。

あまりにも浮かれた様子で宣言するもんだから、思わず頭をはたいてしまったじゃねえか。


「物が売れるのは良いことじゃろう?! 何が問題なのじゃ?!」


 ルミナが涙目で頭をさすりながら抗議すると、それに同調するように周囲の神樹精(ドリアード)も頷いた。

 まあ、これに関してはこの間まで商売と無縁の生活をしてきたんだから、認識のずれがあるのは仕方がないか。

 皆がルミナと同様の疑問を浮かべていた時に、「コンビニって丸一日営業するんだよね?」と聞いて来たのはウィズだった。

 俺はその問いに頷くと、「それじゃあまずいね」とウィズは息を吐いた。


「24時間店を開けるなら、常に売り場に商品がなきゃいけないね。時短営業で売り切れるのは論外だ」

「「「あ……」」」

「その通り」


 ウィズの言葉に、皆が虚を突かれたように声を漏らした。

 ウィズが指摘した通り、コンビニの利点の一つに、基本24時間営業というのがある。それは、昼でも夜でも物が必要になったときに、買いに行ける店があるという安心感や、周辺地域に対して物流の安定をもたらしている。

 だからこそ、売り場に何もない、なんてのはコンビニを利用しに来たお客様を裏切ることになる。時短営業で開業時間が短いってのに売り切れなんてもってのほかだ。


「じゃが、皆一生懸命に商品を作ってこの量しか作れておらんのじゃ。これ以上作るのは人員的にもできないし、自然にも影響が出る」

「人間みたいに、田畑を開拓すれば材料問題は解決するけど、それをするにも多くの人員や時間が必要だよ」

「んなことはわかってる」


 現在神樹精(ドリアード)の数は全員合わせて40名弱。しかも商品に使っている果実や肉は、神樹精(ドリアード)の土地に自然に生っているものを採集したり、狩猟して得たものだ。これ以上生産量を上げれば、周囲の生態系に影響が出るという指摘は正しい。


 安定して商品を開発するために、田畑の開発や管理、商品政策を行う労働力が必要なわけだが、今の神樹精(ドリアード)ではそれを補うのは無理だろう。


「一応ドミニクにも聞いたが、国防に人員を割いてくれる以上に人員の派遣は厳しいそうだ」

「じゃあ他に頼れるあてなどないではないか」

「ああ、他にあてなど——いや……まさか」

「ウィズ?」


 俺の考えを察してウィズが険しい顔になった。まあ、お前は気が付くよな。だってさっき、自分で答えを言っていたもんな。


「ヨスガ君……さすがの僕も、それには抵抗があるよ?」


 ウィズの様子に、「まさか……!」とルミナが険しい顔で俺に向かいなおった。

 どうやらルミナも気が付いたらしい。


「労働力がなければ雇うんだよ。ちょうど近くに元気のいい働き手がいるじゃねえか」

「ヨスガ! それだけはダメじゃ! 童が許さん!」

「いいや、決定事項だ! 遅かれ早かれ、この世界の平穏の為に必要なことだからな!」


 激昂して俺に迫るルミナに、俺は一喝浴びせると、ビクッと怯んだ。

 俺の後ろで、そりゃこうなるわなあ、といった様子でドミニクが気まずそうに頭を掻いた。


 周囲にどよめきが広がる中、俺は落ち着きながらも、低く真の通った声で、皆に静かに突きつけるように告げた。


「コンビニの安定した経営の為、俺たちとは別の労働力……、人間に仕事を依頼する‼」


 鋼竜族(ドラゴニュート)との同盟が成立し、国防の安定性を確保できた今だからこそやるべきミッション。

 それは神樹精(ドリアード)が危機に陥った元凶——人間たちに仕事を依頼し、味方に引き込むことだった。


2章終了です。

最近忙しくてなかなか執筆できていませんが、

長い目で追って頂けると嬉しいです。


リアクションやブックマーク、評価など、物凄く励みになっています。

少しでも楽しんでいただけるよう、更新していきたいです。

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