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炭酸飲料の作り方

 俺は皆を集め、その中心にウィズを配置し、ウィズの口から今回の目的である炭酸について説明させた。


「ヨスガ君。こういうのは君がやればいいんじゃないか?」

「お前の口からじゃないと意味がねえんだよ」


 開始のギリギリまでウィズが渋ったが、今後商品開発は、俺が欲しいものを注文して、ウィズがこの世界の知識で解決していくのが主になっていくだろう。そのためにも、ウィズから皆に説明する形式を慣れさせる必要がある。


 当然ウィズもそれはわかっているため、やれやれと仕方なさそうに首を振ってから、説明を始めた。


「今回の目的である、シュワシュワの液体——タンサンについてだが、入手方法は2つある。自然に存在するものを入手するか、自分たちで作るかだ」

「自然にもシュワシュワがあるの?!」

「そうだとも」


 ウィズの提示した情報に子どもの神樹精(ドリアード)が食いついた。

 どうやって作っていいかわからなかった謎の液体が、自然にも存在するという事実に、皆が若干高揚を含めたざわめきをみせた。作りたかった炭酸飲料へのルートが一気に開けたような気がして、皆の顔が少し明るくなる。


 だが、皆を落ち着かせるようにウィズが興奮を手で制した。


「だけど今回は天然ものは使えないね。自分たちで作るしかない」

「自然にあるのを使ったほうが早いのではないか?」

「理由はいくつかあるんだけど、まず、天然に存在するタンサン水は、不純物が多くてそのままだと飲めないことが多いのさ。それに、輸送の問題がある」

「輸送?」


 ルミナが首をかしげたところで、俺が用意していたものと紙コップを取り出し、皆に渡して回った。

 渡した紙コップは2つだ。


「一つは開けたばっかりの缶ビール。もう一つは開けてしばらくの間放置した缶ビールだ」

「飲み比べてみたらわかるよ」

「ヨスガ。童にもよこすのじゃ」

「ダメ」

「はあ?! なんでじゃ?!」


 だってお前15じゃん。お酒は二十歳からだっての。

 ガキはこっちな。とルミナを強引に子どもたちと一緒にまとめると、ルミナは不服といったように頬を膨らました。

 皆が飲み比べするのを羨ましそうに見ているのが面白かったから、飲む必要はないが、俺も缶ビールを見せつけるようにルミナの前で飲んだ。仕事中のビールはクソうめえわ。


「どっちもおいしいけど……」

「放置しているほうはシュワシュワしないわね」


 その通り、とウィズが相槌を打つ。


「俺の世界の原理だがな。水をシュワシュワさせる物質が放置していると、空気中に逃げるんだよ」

「僕も一度外へタンサン水を汲みに行ったことがあるけど、木樽や水筒なんかじゃそれを防ぐことはできなかったね。輸送の時間を考えると天然物を利用するのは難しそうだ」


 開拓地の人間たちの反応や暮らしぶりを見ていたけど、水の携帯手段は革水筒がほとんどで、蓋は瓶の飲み口に木の栓をしたものが大半だ。

 木樽や木の栓じゃ密閉性能が足りていない。天然の炭酸水があるのに、世に出回っていない理由の一つはこれだろう。


「それに、僕たちは自分たちで商品を作らなくちゃいけないからね。安定した供給の為にも、自分たちで製法を持っておくほうが今後の為にもいいだろう」


 ウィズの説明に、皆が納得したようにうなずいた。あれ程変人呼ばわりしていたウィズの言葉に、今は真剣に聞き入っている。


「というわけで、自分たちでタンサンを作るしかないわけなんだけど、その必須アイテムがこいつさ」


 ウィズが取り出したのは、白い粉のような結晶だ。


「面白いことにね。柑橘系の果汁を混ぜた水にこいつを混ぜると、タンサンが発生するんだよ」

「もしかして重曹か?」

「なんだ。知っているのかい」


 確か、レモンとかライムとかの柑橘類に含まれるクエン酸と、化学反応を起こして二酸化炭素を発生させるんだったか。

 家でも簡単にできるレベルの簡単な作成方法だ。材料さえあればできるから、大きな設備がない現状、その簡単さがありがたい。


「重曹の結晶はどこで手に入れた?」

鋼竜族(ドラゴニュート)の国に天然のタンサン水の源泉があるんだよ。その付近で手に入れたかな」

「珍しい鉱物が採れるって言っていたが、重曹もあるんだな」

「だが、向こうに天然のタンサン泉があるのなら、向こうにビジネスとして持ち掛けるのは難しくないか?」


 ルミナの疑問に、「むしろベスト」と俺は頷いた。


「ライムやレモンといった材料は神樹精(ドリアード)の土地で採れるんだ。お互いが材料を出し合って商品を作るんだから、双方に利益のある話になる。最初に俺が出した条件に一致する」

「確かに」

「それに、炭酸水が他の国に流通していないってことは、鋼竜族(ドラゴニュート)は輸送手段は持ってないんだろ?」

「そうなるね」


 鋼竜族(ドラゴニュート)の主な取引の相手は人間らしい。だが、その2つの国は神樹精(ドリアード)の領地を挟んで、相当な距離離れている。

 人間たちが俺のコンビニで扱っていた炭酸飲料を、珍しそうに買い求めていた理由がそれだ。


「最後のもう一押しに、輸送手段をくれてやればいいのさ」

「炭酸を長期保存できる当てがあると?」

「ああ、それを提示すれば、向こうは確実に食いついてくるだろうぜ」


 材料がそろえば、あとは交渉するのみだ。

 俺はルミナに頼んでドミニクに書状を送ってもらい、炭酸飲料を使ったビジネスの話をしたい旨を伝えてもらった。


 そして、俺はルミナとウィズを連れて、ドミニクが治める国【ドラガリア】に乗り込むことになったのだった。


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