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先を見越して

「色んな種族と……商売じゃと?!」

 

 ルミナが驚愕の声を上げると、その子どもの神樹精(ドリアード)はコクコクと小さく頷いた。


「世界の中立を維持するために、他種族との交流はタブーだったっけ?」

「……ああ。最低限各国の王との面会をするぐらいで、基本的には……ましてや商売など……」

「詳しく聞かせてもらえるか?」

「私たちの土地に生息している果物や野菜なんかを、行き交う商人たちと物々交換の材料に使っていたみたい……。そうやってねぐらに集めていたものが見つかって、呼び出されたみたいだった……」

「……」


 恐る恐る語られていく過去の出来事を、俺もルミナも固唾を飲みながら聞き入った。


「ウィズは外の世界の知識や文明に興味を持っていたの。それで、自分たちよりもずっと、他の種族が進んだ暮らしをしているのを知ったみたいで、自分たちも早いうちに商売の輪に混ざるべきだって、王様たちを説得しようとしていたの……」

「それで、母上たちはなんと……?」

「世界樹を管理する私たちが、その恵みを利用して富を得ることがあってはなりません。『王』として今後他種族との交流を一切禁じます……って言ってた。……それで、ウィズが集めていた書物や、他の国の品物なんかを、まとめて処分するって……。それに怒ったウィズが、外に出て行っちゃったの」

「なるほどな、ようやく合点がいった」

「ああ……」


 ルミナと仲が悪かったわけじゃなく、その両親と仲が悪かったわけか。

 それに、もしかしたらウィズは——

 

「ウィズは、お主と同じことを、お主が現れる前から考えておったわけじゃな」


 最初の動機は自分の知的好奇心だったのかもしれないが、それでも奴なりに神樹精(ドリアード)のことを思って出した結論を跳ねのけられた。

 それだけならよかったが、懸念したことが実際に起こってしまったわけだ。

 それを余所者の俺に指摘され、今更になって反省して、他の種族と交流するためのきっかけづくりに勤しんでいる。


 そりゃあ、当人からすればむかつく気持ちもわからんでもない。


 ルミナも同じ結論に至ったのか、「話してくれてありがとう」と子どもの神樹精(ドリアード)に優しい顔で礼を言うと、店の外へ踵を返す。


「どこへ行く」

「決まっておろう。ウィズに謝りに行く」

「お前の親が起こした問題だろ。お前が誤る必要あるのか?」

「結果的にウィズの判断が正しかった。童の両親がそれを跳ねのけた。そして今の王は童じゃ。王としてのけじめはつけねばならんじゃろう」


 そういって、俺に顔を見せないまま、ルミナは店の外へ出て行ってしまった。


「ルミナ様……大丈夫かな……」

「知らね」


 結果的とはいえ、両親の判断で種族が存続の危機に陥った事実。

 それを王として咎められた過去。

 そして、その王という立場を背負っているのは、今はルミナだということ。


 ルミナがつらい時には、他の奴に顔を見せたがらないのは、しばらく一緒にいてわかっている。

 

「大丈夫になるように、できることするしかねえだろ」


 俺は子どもの神樹精(ドリアード)の頭をワシワシと撫でてから、「情報サンキュ」と言って、仕事へ送り出した。

 


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