王様嫌いの原因
俺はドミニク王が待っているという店舗の前に向かうと、コンビニの前で従者と思わしき竜燐族を連れて、自動ドアの前に待機していた。
「休みの日に悪いな。伝えておきたいことがあるもんでよ」
俺の顔を見ると、ドミニク王は「よっ」と手を挙げて笑って見せた。だが、以前と違い、笑いながらもそのまなざしはどこか真剣みを帯びていて、何かあったことを俺も察した。
「中いいか? ちょっと話したいことがあるもんでな」
「わかった今開ける」
俺は店のドアを開け、ドミニクを中へと案内した。ドミニクは従者に「外を見張っていてくれ」と告げ、一人中へと案内される。
「人間たちに妙な動きがあってな。どうやら開拓地域を広げるつもりらしい」
「今開発している場所よりも、更にか?」
「ああ」
ドミニクがいきなり本題から入ると、ルミナの顔が一気に険しくなった。
今開発している土地だって国際的にみればまだ神樹精たちの領地。それを勝手に開発しているだけ。
そこから更に開発地域を広げる=侵攻を進めるということだ。
「この前の話だが、早めに返答が欲しい。お前らを守るとなった場合、侵攻が始まる前に、こちらで手を打つ必要がある」
確かに侵攻が始まってから保護されるより、その前に事前に保護をされ、侵攻自体を牽制しておいたほうが人間にとっても神樹精にとっても理のある話だ。この世界の負の寛恕が負のマナを生み出すなら、それを抑制する意味でも、早めに手を打つ他ない。
「期限は?」
「遅くて2週間だ。それ以上は待てない」
「わかった」
俺の返事にドミニクは満足そうに頷いた。
どうやらこの現状を突きつければ、俺たちが早めに竜燐族の配下に下ると思っているようだ。
まあ、確かに今すぐにでも保護してもらったほうが、楽といえば楽なのは間違いない。
だが、
「2週間で同盟を結びたくなるような新商品を開発してやる。あと2週間、あがかせてもらおうか」
あくまで狙うべきは竜燐族との対等な関係性。ぎりぎりまであがかせてもらう。
保護=こいつらの配下に下ると同義。世界平和のためにマナの管理をしなければいけない神樹精にとって、誰かの下につくことは、他の種族たちから反感を買う可能性がある。
短いが時間があるのなら、今、楽に逃げるべきじゃない。ベストな結果を得るためにやれることはやるべきだ。
俺の不敵な笑みを見て、「強がりめ」とドミニクは笑う。うん。虚勢であることは見抜かれているらしい。
2週間、それ以上は待たんと、帰り際に釘を刺してから飛び立つドミニク王を見送り、ルミナが俺に尋ねる。
「……2週間でいけるのか?」
その言葉に俺は返答することができなかった。そもそも2週間という期限がなくても、ある程度早い段階で、向こうに成果を提示することは大事だと思っていた。短い納期がさらに短くなったわけだが、そうなるとゆっくりと商品開発するなんて余裕はない。
ここから先はスピード勝負。スピード勝負をするには、すでに知識を持っている奴の助けが必要だ。
「早いとこあいつを説得するしかない」
「……童がもう一度話してみる」
「いや、今のまま行っても軽くあしらわれるだけだろ」
何が原因で『王様』が嫌いになっているかを突き止めないと意味がない。
俺が考えあぐねていると、「あの……」とドアの隙間から、ひょっこりと子どもの神樹精が顔を出した。
コンビニの文具に興味を示していた、大人しく、少し口下手な神樹精だ。
「どうした?」
「いや、あの……ルミナ様の件と関係があるかはわからないけど……」
その神樹精はその場で逡巡とした後、腹をくくったかのように、絞り出したような声で続けた。
「前の王様と……ウィズが仲が悪かった原因は知っている……」
「なんだと?!」「なんじゃと?!」
前の王様っていうと、ルミナの親のことか。
欲しかった情報が思わぬところから出てきて、俺とルミナが反射的に大きな声を上げてしまった。
そのことにびっくりした神樹精が体を硬直させると、ルミナが「すまない」と気持ちを落ち着かせ、改まった様子で尋ねる。
「母上と仲が悪かったというのは……本当か?」
ルミナの問いに、国利と頷いた。
一気に複雑な表情にな様子を見るに、ルミナはそのことについては何も知らなさそうだ。
「原因はわかるか?」
「私も、ウィズが皆のいないところで怒られているのをたまたま見ただけだから……詳しくはしらない。……だけど、ウィズは今の私たちと同じことをしていた」
「今の俺たちと同じこと?」
すると、その神樹精が取り出したのは、この世界の共通貨幣だ。
「黙って色んな種族と商売していたの。人間とも……」




