プレオープン
ルミナたちとコンビニの立ち上げを宣言して約1か月後、俺は場所を変えて、再びスキルを使用し、コンビニを立ち上げた。
以前コンビニを立ち上げた人間の開拓地側とは異なり、今度はそこから離れた馬車道沿いの草原だ。
「おっ? なあ、あれって噂の……」
「その店は開拓地の側にあったって話だろ? さすがに違う店じゃ……」
「いや、でもあの見た目は……」
俺が突然店舗を移動させて以来、商人たちや開拓者たちの間では、異世界に突如として現れたコンビニのことが話題に上がらない日はないらしい。
立ち退く前に何人かの商人に挨拶をしたが、次はどこに出すのかとか、商品の仕入れ先はどこからなのかと質問攻めにあった。
買ったものは残っている以上、幻ではないのは確かだが、結局あの店は何だったのか、いまだに真相は知られないでいる。
そんな中、まったく同じ風貌の店が場所を変えて存在しているというもんだから、当然、もしかしたらと期待に胸を膨らませて、お客様たちはやってくるわけだ。
……わけなのだが。
「いらっしゃいませー!」
「「「……」」」
うきうきとした表情から一変。店に入ったお客様たちの顔は、並んでいる商品を見た途端、拍子抜けしたような表情になる。
「あ、あの神の店の店長さんだ!」
「ってことは、やっぱりここはあの店なんですよね?」
「ええ。再びご来店いただきましてありがとうございます」
「あの、前の商品はどうしたんですか? なんだかしょぼ——」
「こら!」
しょぼい。と言いかけた男の口を、慌てて連れの男がふさいだ。
俺は軽く笑いながら、「お気になさらず。お客様の言う通りですので」と宥める。
俺の世界の商品が並んでいた華やかな売場は一転し、黒パンや、木の実や果実を干して作ったドライフルーツ、塩漬けの干し肉や木樽に入った飲料水など、この世界で手に入るものしか置いていない。
フワフワのサンドイッチや、おいしい炭酸飲料や菓子、酒類を期待していたものからすると肩透かしを食らった気分だろう。
これらは1か月の間に神樹精たちと一緒に作った商品だ。黒パンは自生していた麦類を粉にして、鉄鍋で焼いたビスケット状の乾パンのようなもの。
ドライフルーツは自生している木の実や果実を天日干しで乾かしたもの、干し肉は狩猟した野生動物を加工したものだ。
他にあるのは、木で作ったカトラリー類などの小物と、ヒョウタンで作った木製の水稲などの旅用品、一度煮沸した飲料氏の入った木樽など。
「前の商品はもう手に入らないのですか?」
「そうですね……しばらくは手に入らなさそうです」
「そうですか……正直期待していただけに残念です」
といったやり取りを、今日は来た客全員と繰り広げた。
そして、店を閉め、あたりに人気がないことを確認してから、俺は店舗に神樹精たちを呼び寄せた。
「どうじゃった……?」
不安そうな顔で、神樹精たちが店の前に立つ俺を見つめてきた。
設備がないなりに売れそうなものを考えて、一生懸命に商品開発に取り組んだのだが、以前のコンビニと比べて大幅にグレードダウンしたということを気にしているらしい。
確かに、自分たちが丹精込めて作った商品が売れないとなるとショックだし、ましてや俺の世界の商品と比べられるとなっては不安も当然だ。
「童たちで作った商品、売れたかの……?」
「その答えは、店舗を見て確かめたらどうだ」
俺がクイッと親指を立て、店舗の中を示す。
神樹精たちは顔を見合わせてから、覚悟を決めた表情で店の中へと入っていった。
「これは……?」
そして、店の状態を見た神樹精たちから、困惑した声が漏れるのだった。




