商品開発
ウィズと対面してから数日後、俺は必要なものを現地の人間たちから仕入れてから、拠点で商品開発に勤しむ神樹精のもとへ向かった。
「よーし、必要な道具をそろえてきたから、商品開発の方を行っていく」
「「「はーい」」」
俺は開拓地で労働に励む人間たちを訪ね、調理器具や作業道具などを物々交換で手に入れてきた。
その間に神樹精たちには周辺の森で材料集めをしてもらっていた。目の前には様々な果物や野菜、穀物など十分な材料がある。
「ウィズは?」
「このところ見てないのう。こういう場合は遠出して木の実や鉱物を採取しているのがほとんどじゃ」
「非常時だってのに。……まあいい、構ってる暇はねえ」
力は借りたいものの、意図的に非協力的な態度を取る奴に協力を頼みこむ暇なんかない。それならそれで、自分たちでできることをやるまでだ。
俺は神樹精たちを指導しながら、食料や飲み物などの作成に取り掛かった。
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そして、数時間後。
「できたか? 試作品」
「「「「…………」」」」
俺の問いかけに食料作成に取り掛かっていた神樹精たちが、ばつが悪そうに目をそらした。
ルミナが背に隠していたものを、さっと奪い取ると、ルミナが恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「なんだ。できてるじゃないか」
「いや……、出来るには出来たのじゃが……」
俺はルミナが隠していた、平たい煎餅のような物体をじっくりと眺めた。
平たい鉄鍋で焼いた、ビスケットのようなパンだ。材料はライ麦に近い香りや触感のイネ科の植物の種子を粉にしたもの。言ってしまえば、俺の知識の範囲で作った小麦粉である。
ふっくらしたパンを焼くには膨らますための酵母もないし、パン窯もない。
ほぼ暗中模索状態で作ったパンを、俺はとりあえず食べてみる。
「……」
「そ、その お主の世界のパンと比べれば味はだいぶ落ちるが……」
俺が嚙むたびにボリボリと音が鳴る。パンというよりは小麦で作った煎餅だなこれは。
フワフワのサンドイッチを食べた後で、これを食わせるのは気が引けるのか、作ったルミナたちはどこか申し訳なさそうな表情だ。
まあ、確かに小麦で作ったサンドイッチなんかと比べると味は落ちるが——
「濃い味のおかずなんかと合わせれば食えるな。悪くないんじゃないか?」
「そ、そうか?」
「とりあえずある程度日持ちして、持ち運びしやすくて食えるものなら大丈夫だって。これはその条件をクリアしている」
俺の言葉に、作成した神樹精たちはひとまず胸をなでおろした。美味くはないが、食えなくはない。食感は岩だけど。
「ヨスガさん。こっちも水の煮沸が終わりました」
「冷ましたらひょうたんに詰めて持ってきてくれ。大樽用もたのむ」
大鍋で水を沸騰させていた神樹精たちが、俺の返事に頷いた。ペットボトル、なんて便利なものはないので、自然に生えていたヒョウタンのような植物を原料に水筒を作った。大きさは不ぞろいになるが、それを容器にして販売する。大樽は人間たちから仕入れた品だ。
パンや飲料など、商品が出来上がり次第、皆の前に纏めていく。
「ぬぬぬ……ヨスガの世界のコンビニを見た後では、いささか物寂しく見えるのう……」
並べられた商品は、平たいビスケット上の黒パン、自然に生えていた果物を使って制作したドライフルーツ。ヒョウタンに入った飲料水や、果実を絞って作ったジュースといったところだ。
「あの、救世主様」
「救世主って呼ぶの禁止」
「あ……ヨスガさん。本当にこんな商品で大丈夫なんですか?」
全員が不安そうに俺の顔を伺ってくる。まあ、散々美味いもの食ったり飲んだりした後で、これを出されたら拍子抜けにもなるだろうし、その辺は作った神樹精たちが一番わかっているのだろう。
「自信ない?」
俺が尋ねると、全員すぐに首を縦に振る。うん、正直でよろしい。
皆の暗い表情を前に、俺はあえて意地悪な笑みを浮かべて見せる。
「実際に販売してみりゃわかることだ。作った商品を使って、明日コンビニをプレオープンしてみようじゃねえか」




