表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート11月〜5回目

執筆するなら

作者: たかさば

 ……私は、しがない文筆家。


 ひがな文字をつなぎ、わずかばかりの飯代を稼ぐ、独身者。

 飯を食うために文字を綴る、夢を忘れた、凡人。

 己の世界を文字にしきれず、夢を追う事を諦めた、負け犬。


 今日も私は…文章を書く。


 文字数、内容、文体、装飾、結末…、依頼にこたえるために、作業に取り掛かる。

 己の書きたいものとはかけ離れた、依頼者のための文章を…自分にとってはつまらないものを、ただひたすらに書く。


 ……文字を、つなぐ。

 ……文章を、書く。


 文字を望んで、文章に思いを馳せる。

 文字を睨みつけて、文章の到来を待つ。

 文字を選んで、平凡な文章を組み立ててゆく。


 幾度となく繰り返されてきた、苦痛というほどではないが…決して心地の良くない、日々の習慣。


 ……文章を、書く。

 ……文章を、書く。

 ……文章を、書く。


 文章を書くなら…、早朝がいい。


 寝起きは特に、直接的な文章が書ける。

 難しい言葉を使わずに理論的な事をかけるのは、この時間帯だ。


 文章を書くなら、昼間がいい。


 騒がしく慌ただしい世界の音が聞こえてくると、まわりくどい文章が書ける。

 無駄に文字数を稼ぎたい時は、この時間帯に作業をするのがいい。


 物語を書くなら、平日午後三時ごろがいい。


 子供たちが家に帰ってゆく姿を見ながら書く文章は、どこか幼い日々を思い出させる。

 自分しか知らない物語をそっと文章に忍ばせると、ほんの少しだけ満足できる。


 文章を書くなら、食事前がいい。


 空腹であればあるほど、食への渇望そのものに集中することができる

 腹が満たされた状態では到底思い浮かばない、迫真の文章を書くことができる。


 文章を書くなら、夜がいい。


 華やかすぎる色が闇に染まる時間帯は、頭の中の色が映える。

 自分の文章に自信が持てなくなった時は、夜の力を借りるのが正解だ。


 文章を書くなら…、真夜中がいい。


 夢の世界が一番賑わっているこの時間、味気ない現実が薄れることで見えてくるものがある。

 夢、希望、喜び…、かつて心の中心にあったものを思い出すと、ぬくもりのある文章が書けることもある。


 物語を、書くなら…。

 眠る前に、書くのがいい。


 寝てはダメだ、でも眠い、寝てしまったらマズい、寝てしまう前に何としても仕上げなければ…。

 追い込まれて書く文章には、鬼気迫る迫力が備わる。


 ただ……、眠くなるから、寝てしまうから、途中までしか書けないのが、残念だ。


 眠ってしまえば、文章を書くことはできない。

 夢の中で文章を書いたとて、現実に持ち出すことなど…できるはずもないのだ。


 ……もう、寝てしまったんだから、仕方が、ない。


 私は、文章を書くことをやめ。


 夢の世界で、自由気ままに…遊び惚けることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ