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第40話 トイレを使いたかったら奴隷になれって言っただけ

「本物の勇者様は、既に聖剣アークを手に魔王討伐の旅に向かわれています」

「…………早く言ってよ、それ」


 何だよその重大事実。聖剣アークとか初めて聞いたわ! 

 そういうことは、さっさと教えてくれよ。後出しじゃんけんはズリーだろ!


「分かりましたか? 偽勇者ツクモ。では改めて罪状を言い渡します。あなたは勇者をかたり、人心を惑わした。それどころか悪魔アスタロッテの手先である可能性が非常に高い」

「また、それかよ」


 その流れは聞き飽きたわ。お前みたいな三十秒で似顔絵描けそうな、モブ野郎に大悪魔と人異の契約出来る訳がないとか言いだすんだろ? 耳タコだわ!


「勇者が別に居るってのは分かった。勇者を名乗ったのも悪かったと思う。でも、俺が悪魔の手先ってのは言いがかりだっての!」


 国王だか、王女だか何だか知らねえが、勝手に決めつけやがって。


「大して調べもせずに言いたい放題しやがって……少なくとも俺はエトラスの街を救ったんだぞ! それをこの扱いは酷すぎるだろ!」


 そうだ。俺はヴリトラを改心(?)させて街を救ったんだ。それに比べて――。


「それに比べてお前らは何なんだよ! エトラスの人たちが邪竜の被害に苦しんでる時、お前らは何もしなかったじゃないか!」


 あの絨毯爆撃ジジイが言っていた。

 王国騎士団に助けを求めたが、魔王軍との戦いのせいで来てくれる気配すらないと。

 だが、俺の言葉にパロミデスは怪訝な表情を浮かべる。


「エトラスが邪竜の被害? 私たちが何もしなかった? あなたは何の話をしているのですか?」

「何の話って……だってジジイが、ヴリトラに生贄や貢物みつぎものを要求されて困ってるって。騎士団に討伐を頼んだけど来てくれる気配が無いって……」


 俺の言葉にパロミデスは、ますます不思議そうな顔をする。


「あの……エトラスからそのような報告は受けていませんよ? それに貢物って……それは貢物ではなく、正当な借金の返済では?」

「は? 借金の……返済?」

「そうです。数年前、エトラスの議会が王都に視察で来たときに、カジノで大負けして大借金を抱えた結果、街の近くに住居を構えていたヴリトラに泣きついて借金の肩代わりをしてもらったと聞き及んでいますが」

「ほわ?」


 ほわ~~~~~???

 話が飲み込めない俺は、ぎぎぎぎぎ、とヴリトラの方に顔を向ける。


「もしかして、もしかすると……毎年の貢物は、借金の分割返済に過ぎなかったってこと?」

 

 すると、ヴリトラが首をぶんぶん縦に振る。


「じゃあ、生贄の女の子たちは?」

「あの……ご主人様。生贄って何の……話?」

「お前が食ったんじゃないの?」

「た、たーーべーーーなーーーいーーーーー。人間なんてかじったら血がたくさん出て怖い……痛そうだし、かわいそう」


 拘束されたまま、ちっちゃく両手をぶんぶんして否定する姿がちょっと可愛い。


「じゃあ、生贄の女たちが二度と帰ってこなかったってのは……?」

「うー、分からないけど。お話の相手をしてくれたお礼に、いくつか宝石とかあげたら……とっても喜んでくれて、それで……二度とあんな街に帰らないって、みんな……言ってた……よ?」


 あ、察し。


「それって、自分を生贄なんかに選びやがった街には絶対戻らないってことか……?」

「よくわからない……けど、あげた宝石を元手にお店を開いて成功してる――なんてお礼に来てくれた子も……何人か……いる」

「はぁぁぁぁぁぁ、話が見えてきたぞ」


 要は、ヴリトラはエトラスの街の借金を肩代わりしてあげただけなのだ。

 そして、利息を取らない代わりに、毎年の返済に合わせて食料と話し相手の女の子を希望した。

 けれども街のジジイどもが、カジノでこさえた借金を隠すために、『ヴリトラに脅迫されている』と話を捏造ねつぞうしたのだろう。

 騎士団にヴリトラの討伐を依頼したっていうのも、口から出まかせだったわけだ。


「じゃあ、ヴリトラは邪竜どころか……」

「街を助けるために、無利子無利息で借金の肩代わりをしたヴリトラに、あなた、毒を盛って、無理やり人異の契約をしたそうですね。何たる非道!」


 悪漢許すまじ! といった風に、俺に剣の切っ先を突き付ける王女様。


「そーゆーことになるよねーーー」


 街を救った心優しき竜に、悪魔と共に毒を盛って無理やり奴隷契約させた最低最悪のニセ勇者。 

 それが今この場での、俺の評価だった。


「誤解だ! 俺は本当に街から依頼を受けてヴリトラの討伐に向かったんだよ! なぁ、ヴリトラお前も知ってるよな!? 俺そんな酷いやつじゃないよな? な?」

「う、うん。ご主人様、酷いこと……してない」


 うんうん、そうだよな。


「ご主人様は、わたしに超強力利尿剤を飲ませて……それで、トイレを使いたかったら奴隷になれって言っただけ。あと、わたしが我慢できなくて、あの、その……漏らしちゃった時……ピクトの魔法で撮影されたことくらいで……酷いこととか、何もされてない……よ?」

「ちょ、おま」


 ヴリトラの発言にざわつく周囲。


「へ……変態……」「鬼畜だ……」「やっぱ普通っぽい顔してるやつの方が、性癖歪んでんだよ」「女の敵……死ねばいいのに」


 引いてる! 王女様とか、周りの騎士とか、ずっと厳格な表情を浮かべてた王様にまで、ガチで引かれてるから!

 誰もが『うわ、こいつマジかよ……』って顔してるんだけど!?


「あれは、私とご主人様の……運命的な出会い。可愛いって言ってくれて……すごく、嬉しかったの……」

「フォローのつもりか何なのか知らんけど、もうお前の主観じゃ取り戻せないくらい、俺の性癖は崖っぷちだよ!」


 今や場の空気が、偽勇者裁判じゃなくって、性犯罪者の裁判になりつつあるからね!

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