10
龍子はその日の夜、不思議な、不思議な夢を見た。
龍子は夢の中で、真っ暗な闇の中にいた。
月のない夜。
真っ暗な闇を見上げてそんなことを龍子は思った。私は今、月のない暗い夜の中にいるのだと思った。
周囲にはなにも見えない。
完全な闇だ。
龍子はそんな真っ暗な闇の中で、本当にひとりぼっちだった。
ひとりぼっちの龍子は、月のない夜の中で、泣き始めた。……それから、龍子は、ずっと、ずっとひとりぼっちでうずくまって、小さなく、丸くなって、子供みたいに泣き続けた。
美鷹ちゃん。美鷹ちゃん。美鷹ちゃん。
もう納得したはずだった。
それは、自分でもわかっているはずだった。
美鷹ちゃんはもう遠くに行ってしまったのだ。私のところには、もう二度と、美鷹ちゃんは帰ってきてはくれないのだと、……わかっていたはずだった。
でも、龍子は悲しくて仕方がなかった。
だから龍子は、真っ暗な夢の中で、ずっと一人で泣いていたのだ。
やがて、そんな龍子のひとりぼっちの夢の中にある一つの変化が訪れた。
泣き疲れた龍子がふと顔をあげると、涙でにじむ視界の中に、遠くにぼんやりと淡く光る小さな白い光のようなものが龍子の目に写り込んだ。
龍子は、あれはなんだろう? と疑問に思って、それから、なんとなく、その淡い白い光のところまで行ってみることにした。
深い闇の中を龍子はそうして、一人でぼんやりとしながら、ふらふらとした足取りで歩き始めた。