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蛇の娘  作者: 雨世界
1/16

1 また君に会えるかな?

 蛇の娘


 登場人物


 谷龍子 小学六年生 十二歳


 山根美鷹 小学六年生 十二歳


 本編


 また君に会えるかな?


 ……真っ暗だね。なんにも見えない。

 あなたの顔も、形も、わからない。

 でも、声は聞こえるよ。

 君の声は確かに私の耳にちゃんと聞こえている。

 ちゃんと届いている。

 だから大丈夫。

 心配しないで。

 ……私は必ずあなたのところに、無事にたどり着いてみせるから。


 その日、その見知らぬ場所から見上げた見知らぬ夜空は、本当に怖くなるくらいに高くて、透明で、……綺麗で、そして、なによりも本当にとても、とっても広かった。(自分の存在が本当にちっぽけなものだと思えるくらいに、大きかった)


(私のことを、心から愛してください)


 ……どこかで鳥の鳴いている声が聞こえる。

 どこで鳴いているんだろう? 

 きょろきょろと周囲の風景を見渡してみても、どこにも鳥の姿は見えない。

 でも、確かに声は聞こえる。

 谷龍子はもう一度、今度は足を止めて周囲の風景をよく見渡してみた。そこには緑色の深い森があった。

 ……森は沈黙していた。

 どんなに耳を傾けても、なにも語りかけてはこなかった。

 鳥の鳴き声も聞こえなくなった。もしかしたら鳥の鳴き声が聞こえたと思ったのは錯覚だったのかもしれない。

 そう思ってしまうほどに、森の中は静かだった。

 森の中にとても寒い風が吹いた。

 そうだ。今は冬だった。

 そんなことをその風の寒さの中で、龍子は思い出した。

 龍子はまた歩き出した。

 見知らぬ森の中を。

 なるべく早く。

 できれば、夜になる前に、どこか安心できる場所を探さないといけない。

 慣れない森の中を歩きながら(龍子は都会育ちだった。都会で生まれて、ずっと都会で育った龍子は、十二年間生きてきて、都会から出たことは今まで一度もなかった)龍子は『もしも、本当に来世というものがあるのなら、私はきっと一匹の黒い蛇に生まれ変わるだろう』とそんなことを考えていた。

 龍子の美しい結んだ黒髪が、寒い冬の風の中で小さくゆらゆらと揺れていた。(それはまるで遊んでいる一匹の子供の黒い蛇のようだった)

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