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誰よりも平和を求める魔王を救う物語  作者: GOA2nd
魔術学園編入編
9/32

聖奉飛彩という男

ほぼ飛彩回です。

「夜城天音...そしてリューゲ...私の物語に、あなた達は要らないのよ...」

1枚目の写真には灰色よりのふわっとした黒髪と、日本人とはかけ離れた碧眼が特徴の学園唯一のヒトが。

2枚目の写真には左眼が隠れるほどに伸びた白髪から垣間見える黒い眼帯が特徴の男子が。


この数分後、魔術学園の女子寮にて、1人の女子生徒が稲妻に貫かれ、心肺停止に陥る事件が発生した。





私は瑠璃ちゃんに寮についての説明を受けていた。

「寮は男子寮と女子寮で別れてて、互いの寮には立入禁止です、食堂は10時まで開いていて、大浴場は11時まで、完全消灯は12時です、部屋割りは私と玲音ちゃんが同じ部屋ですよ、あ、これWi-Fiのパスワードです」

「うん、大体わかった、ありがとう」

あのあと、瑠璃ちゃんに学園の施設を案内してもらっていた。

日替わりで定食の出る食堂に始まり、自由に使用できる最新設備の整ったトレーニングルーム、国立のと比べても遜色ないほどの広さの図書館と、開いた口が塞がらなかった。

まだ島の施設を全て紹介できていないというのに、日はすっかり傾きだしていた。

女子寮の廊下を通って部屋に入ると、予め送ってあった荷物が入ったダンボールが部屋の一角に積まれていた。

「じゃあ私は隼人くんに用事があるので、これで失礼しますね」

「うん、何から何までありがとう!」

「お安い御用ですよ〜、それでは、何かあったら連絡してくださいね」

瑠璃ちゃんはそう言い残し部屋を出ていった。

何も置かれていない机とベッドがあるからそこが私のパーソナルスペースなのだろう。

試しにダンボールを1つ開けると家で詰めてきたものがそのまま入っていた。

海底にある島に地上からどうやって送るのか少し興味が出てきたが、先に荷物の整理をしてしまおう。

ペン立てを机の上にだし、バッグを引っ掛け、2つ目のダンボールに手を付けようとしたその時だった。

キイィ...と音を立てて扉がゆっくりと開く音がした。

部屋に入ってくるということは瑠璃ちゃんか玲音ちゃんだろう。

振り返ると、私の視界は眩しい閃光で染め上げられ、轟音が耳を劈き、一瞬だけ酷い痛みが襲いかかり私の意識はなくなった。




「...あっ、いたいた!ゼフュロス!瑠璃もいるじゃん!」

「んあ?どしたリューゲ?」

「あの...その背負ってる方は...?」

ボクは1人の男子生徒を背負っていた、疑問に思うのも当然だろう。

背負っているのは第12席、術式は“石礫”その名の通り石礫を飛ばす術式。

「ボクを襲ってきた愚か者だよ、お陰様でボク達の部屋は石だらけさ」

ボクは龍我と目の前にいるゼフュロスと相部屋で、Sクラスのもう一つの部屋が創真兄弟、聖奉飛彩、第7席で、拓海のストレスがとんでもないことになりそうな部屋割りだった。

話を戻すとこいつはボクに「くたばれ編入生!」と言いながら攻撃してきた。

因みに真後ろに転移して回避して気絶させた。

このとき、ボクの中で一つ疑問が湧いた。

「こいつ、ボクを編入生って呼んだんだよね、名前は聞いてたはずだから知ってるだろうし、第8席とも呼べたのにわざわざ編入生って呼んだんだよね」

「それって別に何もおかしくなくねえか?」

「編入生はボクひとりじゃない、もしこれが、ボク達の編入を快く思わないやつの犯行だったら?」

これは単なる可能性に過ぎない、でもたった一つの慢心がその身を滅ぼす。

「姫、今夜城天音はひとりか?」

「確か1人だったと思う...」

「悪いが確認してきてくれねえか?済んだら連絡してくれ」

「わかった!」

瑠璃は女子寮に駆け込んでいった。

「...で、俺には何のようだ?」

まだ何も言ってないのにゼフュロスにはお見通しだったようだ。

「情報がほしいんだ、3つ程ね」

「言ってみな」

「まずひとつ、聖奉飛彩の研究室の場所だ」

「そんぐらいいつでも教えてやるよ、で他の2つは何だ?」

「第20席より上の、術式と人間性を確認したい」

ゼフュロスはニヤリと不敵に笑った。

「なるほどね...じゃあ対価としての情報は?」

「ボクが出す情報はそうだな...多分今の程度の情報10個分の重さはあるよ」

ボクが提示するのは切り札、それもまだボク以外の知らない超重大情報だ。

「言ってみな」

「悪いが聖奉飛彩のところで彼にも聞かせたい、先に案内してくれないか?」

「りょーかい、ついてきな」

ゼフュロスは校舎も寮もない方へ歩いていく、後ろからついていきしばらくすると、ちょっとした林にたどり着いた、しかしゼフュロスは堂々とザッザッと足音を立てて歩いていく。

ようやく立ち止まったと思うと、近くにあった青い紐のついた大樹に触れた。

「その大樹になにかあるのかい?」

「ま、見てな」

大樹の前にしゃがみ込み、ちょっとしたへこみを押し込むと、なんとびっくり大樹の一部が開いた。

暗くてよく見えないが、空洞になっており、どこかに繋がっているのは確かだ。

「じゃ、俺の後に続いて飛び降りてこいよ」

ゼフュロスは躊躇なく大樹の中にある大きな穴に飛び降りた。

意を決し、彼の後に続くと、20メートル程の長い穴を進んだ後にようやく床が見えた。

お尻から着地するが、床に落ち葉が積まれていたため衝撃はなかった。

「ふむ、ゼフュロスの言う来客とは君のことか、名は確か...リューゲと言ったかな、編入生君」

振り返ると制服の上から白衣を羽織った女性のような顔立ちの男子、第2席の聖奉飛彩がこちらを伺っていた。

「リューゲであっているよ聖奉飛彩、君とひとつ契約のようなものをしてほしくてね、彼に案内してもらったってわけ」

ここからはおふざけなしの真剣モードだ。

「契約?この私と?」

「そのとおり、ボクからの要求はまあ、ボクと天音になにかあったときの救命だよ」

「...なら、提示するものはなにかね?私はただでさえ研究で忙しいのさ、相応の対価じゃないと断らせてもらう」

聖奉飛彩は断るつもりだろう、しかしボクには彼にこの契約を結ばせる算段があった。

「ではゼフュロスもちょっときて」

「なんだ?」

「これを見てほしい」

ボクが制服の中から取り出したのはネックレスについた深い青色をした涙型の大粒の宝石。

それを見た瞬間、二人の顔は驚愕の色に染まった。

「おいおいおい!なんでお前がこんなモン持ってんだよ!?」

「...私はまだ睡眠不足なのかな?」

「ふたりともいい反応するじゃん」

するとゼフュロスは両肩を掴んで揺さぶりながら問い詰めてきた。

「いい反応するじゃん、じゃねえよ!一体どこで手に入れた!?この魔石はなんなんだよ!?」

ボクが二人に見せたのは魔石と呼ばれるもの。

世界に9つしかない始祖の残した秘宝で、“世の理に反するもの現れし時、9つの魔石は1人の平和を願う者のもとに集い、大いなる力を与えん”という伝承がある。

魔術師は本能で魔石を判別することができる。

因みに会長が5つ持っており、その数は前人未到な事もあって会長は史上最強の魔術師と言われている。

その中でもボクが見せたのは“深海の涙”と呼ばれるもので、行方不明だったものだ。

「それはトップシークレットだよ、で、これが君の情報への対価だよ、ゼフュロス」

「...わかったよ、しばらく無償で提供してやるよ、俺史上初の出血大サービスだかんな!こっちもきついんだよ!」

「今度ご飯でもおごるよ、聖奉飛彩、ボクが提示するメリットはこれの研究をする権利だ、研究者として、君も興味があるだろう?」

魔術師の研究者の誰しもがやりたい研究、それが魔石の研究だ。

一体どのような原理で大いなる力が得られるのか、創ることは不可能なのか、わからないことしかない、だから研究してその謎を解き明かしたい、という思考なのだ。

「...是非ともやらせてもらいたい、研究者としての悲願が叶うんだ、その程度の代償ぐらい払うさ」

「一応言っておくけどボクのものを貸すってことだから勘違いしないように」

ボクはネックレスごと“深海の涙”を飛彩に渡した。

彼は嬉しそうに眺め、奥にある箱に入れた、鍵も掛けている様子はないため、不安になった。

「ああ、この箱は魔道具でね、持ち主である私の赦しなく開けられないスグレモノさ、因みに君には既に赦しを与えているから問題はないさ」

「ならよかった」

セキュリティに関しては問題ないらしい。

というかゼフュロスの姿が先程から見当たらない。

どこにいるのかと思い周りを見渡すと、ゼフュロスは入り口の落ち葉に寝っ転がって、スマホで連絡をしていた。

「...リューゲ、お前の読み、当たってるわ、姫からの連絡、夜城天音が第17席の“電撃”受けて心肺停止だ、今姫が応急処置してるとこだ」

やっぱりか...妙に胸騒ぎがすると思えば。

「私もついていこう、さっそく契約を果たすときが来たようだからね」

「ああ、さっそくで悪いが頼むよ、ドクター」

「まあ、側で見ているといいさ、この研究者兼医者が第2席である所以をね」




「あ、因みに天音に手出さないでよ?」


「ええーーー!?いいじゃないか!」


「魔石取り上げるよ?」


「冗談じゃないか、そんなことするわけがないだろう?」


「お前ってそんなキャラだったか?」





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それではまたお会いしましょう!

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