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誰よりも平和を求める魔王を救う物語  作者: GOA2nd
クラス内対抗試験編
31/32

生き残ったもん勝ち

遅くなってしまい申し訳ありません、次章の目処がたったので再開します。

「あれ、天音なんか寝不足?目元にクマができてるよ?」


「ちょっとね…」


少し不満そうなじとっとした目線を送って来た、何かした覚えは微塵もないのだが。

試験が終わってから2日経った、今日は久しぶりの登校だ。

珍しく既に飛彩以外の全員教室に集合している、なぜなら今日は試験の結果を元に席順の変動があるからだ。

もちろん全員仲がいいと思う、だがここにいるのは友でありライバル達なのだ、競い合うのは当然のこと。

ボクはせめて夜神には勝ちたいところだ。


「やあやあ諸君!この私が新しい席順を伝えに来たよ!」


飛彩がやけにハイテンションで入って来た。

もはやトレードマークとなりつつあるくっきりとした濃いクマを見る限り今日も寝不足なのだろう。

その手に握られる他茶封筒の中に試験の結果を考慮した新たな席順の書かれた用紙が入っていることだろう。


「茶封筒って…割とアナログだね」


隣の席に綺麗な姿勢で腰掛けている天音が若干苦笑いをしている。

きっと彼女の想像してるのはもっと魔術をフル活用したものだから、ヒトの学校と同じような風景なのに違和感を感じている。


「魔術師だって、無駄に魔力を消費したくないんだよ、ほら、ヒトだって無駄にジュラルミンケースにでも入れて厳重に持ってくるなんてしないでしょ?」


「なるほどね」


伝わる自信がなかったが今の説明で納得できたようだ。


「しつもーん!なんで飛彩が発表するの?」


大弥から当然とも言えるような質問が飛んだ。

飛彩は試験に特別で不参加だったが、それでも彼自身の席順が変動するかもしれない、なのに彼が発表するのはアンフェアだ。


「最近治安が悪くて先生は忙しくてねぇ…よって代わりに試験不参加の私が伝えに来たというコトさ」


「ええ…治安悪いって、怖………」


天音はこの魔術師の島で唯一のヒト、自己防衛できないから一番不安になるのは彼女で間違い無いだろう。

まあボクが何がなんでも守るんだけど。


「今回に関しては私は第9席で固定だ、私より席順が低いことはないから安心するといい…では!気を取り直して、新しい席順を発表しよう!まずは第8席!」


ゴクリと生唾を飲み込み、空気が一気に緊張感を孕む。

実質この試験で最も成績が良くなかったと言える第8席、そこに名を記すのは自分以外であってほしい、この場の全員がそんなことを考えている。


「新たな第8席は今川龍我、キミだよ」


「また最下位かよ…」


「しっかりとゼフュロスの作戦を元に計画通りに動くことはできていたが、1人では何もできなかったことが原因だね」


「わかってるけどよ………」


龍我は悔しいような、我慢するような苦い顔をしていた。

次に呼ばれるのは第7席、この時点で前回のボクを超えることは確定しているが、それでもまだこの乾きは潤うことがない。


「続いて第7席は………創真大弥!ついでに第6席は拓海だよ、2人ともおめでとう」


「いや席順下がってるのにおめでとうってなんなのさ!煽っりもほどほどにしてほしいのさ!」


「“ついで”というところも気になるが…大弥より上なのならよしとしよう」


大弥は慌てるように立ち上がって文句を言い、拓海はホッと胸を撫で下ろしており、まさに対照的だった。

生存時間がより長かったのは大弥だが、席順が上だったのは拓海、なんとなくその理由は察していた。


「一騎打ちでは拓海が完封、ゼフュロスが助けてくれなければ大弥は最下位だったかもしれないね」


「ぐっ………」


実際その通りなのだから言い返すことができない、大弥はしっかりと自覚して、自分なりに反省していたのだろう。

ゼフュロスの乱入がなければ拓海はもう少し上の席かも知れなかったが、たらればに過ぎないし、ライバルが増えては手が回らなくて困ってしまう。


「続いて第5席は………ゼフュロス、キミだよ」


「ワンランクアップ………まあ、及第点じゃねえの?」


敵チームの核となりボク達を翻弄し続けた疾風、鼬鎌隼人ことゼフュロスが第5席、完全に予想外だった。

驚いているのはボクだけではないだろう。


「私の予想だとゼフュロス君はもう1、2席上だったんだけど、意外だね」


「確かにゼフュロスは今回の試験において青チームの中枢として機能したいわば立役者だ、だが相手を3人仕留め損ねたのがマイナスポイントだったねぇ」


話に聞けば、ゼフュロスにボクのチームメイトは翻弄され続けたらしいが、言われてみればボクも瑠璃も玲音も仕留められていない、詰めが甘かったと言うべきだろう。

だがそれで済ませてはいけないような、ねっとりとした不気味さが喉に残っていた。

まるで全力をまだ見せていないような、そんな見逃してはいけない苦味が。


「続いて惜しくもベスト3を逃した第4席は………水恋瑠璃、惜しかったねぇ」


「悔しいですが、ひとつ上がったのでオッケーです!」


一瞬悔しそうな顔をしていたが、すぐにポジティブな思考に切り替えて明るい笑顔を見せた。

今回の試験で圧倒的に劣勢となっていた状況で3人の相手をこなしつつ一気に戦況をひっくり返したまさに切り札(ジョーカー)として活躍を見せた彼女、個人的に評価が高かったが、これまた予想外だった。



「1人で劣勢を覆し勝利に貢献したのは素晴らしかった、言う事なしだが………競争相手が悪かったとしか言えないねぇ、残りの3名が瑠璃クンの評価を上回った、実際のところ夜神には凌がれたわけだしねぇ、仕方ないと割り切るのが楽だろうねぇ」


「なら、仕方ないですね」


ボクや龍我だったらコケにされて文句を言ってやるところを、彼女はぐっと飲み込んだ、やはり彼女は強い。

彼女が今回味方ではなく敵に回っていたらと考えると、悍ましくて鳥肌が立ってしまう。


「さて、残すところはラスト3人、現時点で学年の頂点に立つ3人だが………覚悟はいいかい?」


ボク、夜神、玲音と順番に目線で確認してくる、学年の頂点に立つ覚悟とそれに相応しい力がお前にあるか?と。

ボク達の答えは寸分違わず、同じ方向を向いていた。


「「「勿論」」」


「そう来なくてはならないね、では第3席を発表しよう、第3席は………夜神、キミだよ」


夜神の名が呼ばれた、それが示すことは即ち…


「夜神に、勝った…?」


自分は夜神より席順が上なことは確定している、だがここまで現実味のない勝利など存在するのだろうか、少なくともボクは知らない。

夜神の方に目線を向ける、やつは腕を組み瞼を下ろし、堂々と佇んでいた。


「3席、か………まあよかろう、貴様に負けたのは紛れもない事実、認めざるを得まい」


思ったより素直に受け入れていた。

夜神のことだから不平不満を主張するだろうと思っていたが、そんなことはなく再び拍子抜けした。


「結果から見れば順当な順位だろうねぇ、シャヴァルツとの1体1にギリギリのところで遅れを取り、勝利を決定付けられなかった、キミが今回出し切った結果に準じているだろう、不満がないのは意外だったがね」


「敗北を受け入れなければ真の強さなど遠のくものだからな」


「謙虚とは、美しいものだねぇ」


こいつにもこいつなりの美学がある、それは今回の一件で理解することができたし、きっとこいつもこいつなりの信念があり、その根幹の元行動しているのだろう。

ゼフュロスがそうであるように、ボクの大切な人に手を出そうとしなければ関与することではないだろう、まあムカつくんだけど。


「さて、では残るは主席と第2席なのだが………どちらの名を呼ぶべきだと思うかい、天音クン?」


「………え!?私に聞くの!?」


「そりゃあ、暇そうだったからねぇ、なんせ特別席様は変動など関係ないからねぇ」


「暇なんかじゃ………暇でした」


夜神はなんというか、傲慢で自由奔放だと思うからすごいムカつくし謙虚さを知って欲しいのだが、逆に天音はもっと我を出すべきだと思う、ちょっと謙虚すぎて何も言い返せてないのだから、1人になった時を考えると恐ろしくて考えたくもない。


「みたことある番組だと、1位を発表するのが定石じゃないのかな?」


「なるほどねぇ、ならば今回の試験で勝ち残った主席を発表しよう!!その名は………」


温厚な雰囲気が一気に緊迫感を孕み、全員がゴクリと息を飲んだ。


「雨野玲音、継続してキミが主席というわけだ、喜ぶといい」


ふーっと溜め込んでいた息を吐き出した、ため息のように、受け入れるように。

ある程度予測していた現実は、ボクに牙を向くほどではないが、軽く甘噛みしてきた。


「私が継続して主席ね………今回の試験、特に目立った活躍はなかったはずなのだけれど」


「よくわかっているじゃないか玲音クン、確かにキミは開始早々にゼフュロスに吹き飛ばされて最後の最後まで何もすることができなかったからねぇ」


「皮肉効かせすぎじゃない…?」


「これはあくまで私の分析なのだが………いくら惨めだろうが、いくら無様だろうが、最後に立っていた者が勝者なのだよ」


重く、強い意味のある言葉だった。


もしあの場が戦場だったら?気を失ってしまった自分は何もできずに死んでしまっただろう。

もしそれで大切なものを守れなかったら?間違いなく後悔する、きっと死にたくなってしまうだろう。


結局生きていなければ何も大切なものは守れない、最後まで立っていたやつが全てを総取りする、たとえどれだけ弱くともそれが覆ることはないのだ。


「玲音、キミは最後まで立ち続け、そしてその手で勝利の運命を手繰り寄せた、主席とは世代を率いて最後まで戦場に立ち続ける者こそが相応しい、そういう者こそ玉座でふんぞりかえる資格がある………と、私は考えるよ」


玲音は数秒間沈黙を貫き、ようやく口を開いた。


「そう、なら玉座(ここ)で待ってるから、いつでもかかって来なさい」


迷いを残すその横顔は、女王と呼ぶにはまだまだ若々しすぎたのかもしれない。


「そして、第2席が残ったシュヴァルツ、キミだねぇ」


「だいぶ上がったし、及第点ってところかな」


「キミは今回素晴らしい活躍をした、先程まで最後に立つ者が強者と言ったが、それはキミの完璧に近いお膳立てがあってのことだねぇ、その功績は計り知れないねぇ………だが」


次に来るであろう言葉は予測できていた。


「キミは今回、“藍闇”がなければ何もできなかった、そのはずだよ」


「痛いところを突くなぁ………実際“藍闇”がなかったら最初に退場してただろうけど」


悔しさがないと言えば嘘になる。

こちらは使いこなせれば反則じみた威力を放つ“藍闇”をフル活用していたのに対して夜神は己の磨いてきた実力のみで対抗し、ほぼほぼ互角の戦いだった。


地力では夜神は言うまでもなく、おそらくこのクラスでボクは下位に位置するだろう。

それだけボクは道具頼りで、本質は空っぽだ。


今回はいい経験になったと思う。

自分がどれだけ“藍闇”に頼っていたか、それが浮き彫りになったのだから。


「しかし、改善すべきところが見つかったなら、改善するのみだねぇ」


そう、改善点があるということはまだボクは先に進むことができるということと同意なのだ。

惨めだったボクが、世代の2番手に到達してなお強くなれる。

こんな程度では望みなんて叶うはずがないのだから、手を伸ばす資格すらないのならば、より至高へと近づき、がむしゃらに叶えるのが当然。


まだボクは強くなれる、その事実に気分が高揚した。

ああ、次の試験が待ち遠しい、早く、より上質な経験をしたい。

今すぐにでも訓練がしたい。


「ボクは強くなって、最後まで生き残って見せるさ、必ずね」


ひとまず試験は終わりだが、ボク達の一生が決まったわけではないのだ。

まだ茨の道を踏み出したばかり、失敗は大物を狩るための武器とすればいい。

次が待っている、さあ次はどんな壁が立ちはだかるのだろうか。

これまでにないモチベーションの高さが背中を押してくれた。


「以上がたった今からの序列だねぇ………さて、最後にそこでウトウトしている天音クン」


「は、はいっ!?」


肩をビクッとさせて跳ねるように反応した。

さっきもだったし、そんなに眠くなるようなものだろうか。


「姉御寝過ぎー!」


「姉御ぐっすりー!」


「余の嫁にならぬか?」


「姉御って呼ぶな!!あと嫁にはなりませんから!!」


「そんな………」


バカふたり(龍我と大弥)のお陰で天音の目も覚めた、夜神は説教が必要なようだが、まあ泡吹いてるし今は放置してても問題ないだろう。


飛彩が笑みを浮かべながら話を続ける。


「天音クンの“眼”から見て、今回のMVPは誰かな?」


うーんと数秒唸っている。

ボクは夜神とずっと殴り合いしてただけだから貢献度は低い、多分違うだろう。


「そうだね………瑠璃ちゃん、かな」


「私ですか?」


「うん、瑠璃ちゃんがいなかったら勝敗は変わってたと思う、だって1人で3人をダウンさせたんだし、味方に最高のパスをした今回の影の立役者かなって」


全くもって天音の言う通りだった。

瑠璃がいなければ夜神との1体1に集中できなかっただろうし、彼女の決死行がなければ夜神に競り勝っても負けていただろう。

最高のお膳立てをしてもらったわけだ。


天音がそれに、と話を続ける。


「なんというか………瑠璃ちゃんの魔術が1番洗礼されてて、綺麗に見えた………気がする」


魔眼をもつ天音だからこそ見える景色がそこにあったのだろう。

知らないところで眼をコントロール出来るようになっててなんだか嬉しかった。

そしてもう1人、自分のことではないのに喜んでいる風がいた。


「天音お前わかってるじゃねえか!そうだよな姫の術って美しいもんな、お前はわかってるやつだって信じてたぜ!」


天音の背中をバシバシと少し強めに叩いている。

少し痛そうだが、あながち嫌そうな顔はしていないから止める必要はないだろう。


「隼人くん!そろそろやめてあげてください!」


ゼフュロスの愛しい婚約者様からの横槍が入った、頬を膨らませて少し不機嫌そうにしている、嫉妬というやつなのだろうか。

和やかな雰囲気、温かい眼差し、平和というものを強く感じた。

この平和を守れるぐらいには、奪われなくなるぐらいには強くならなくてはいけない。


頂点はどうでもいい、ただ1人、ただ1人だけこの手で亡き者にできればいいのだ。

静かな決意は、この場にある誰も気づかなかった。





読んでいただきありがとうございます!

よろしければ高評価、ブックマーク、レビューの方もよろしくお願いします!

作者の励みになりますので!

それではまたお会いしましょう!

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