主席でいるということ。
もう1、2話でクラス内対抗戦編が完結です。
少女は歩みを進める、まるで探し物の在処がわかっているかのように、一欠片の迷いもなく。
しかしその手にまっさらな本も物語を記すペンもない。
やがて少女は探し物を見つけ出す。
「あったわ」
地面に落ちている見覚えのある少し分厚い本と、少し離れたところに落ちている金属製のペン、そして“圧縮”の魔法石。
拾い上げると本に記されていた一文が、既に戦いの結末を記していたのだった。
『私は新たな力を得る』
「私にしては賭けに出たけど………結果オーライってやつね」
彼女は突如現れた風神の戯れに吹き飛ばされた。
だがただでは終わらないのが“主席”、そのプライドが敗北を許すことはなかった。
飛ばされる直前に本に記したその一文、それが自らの手で勝利を手繰り寄せる運命の糸となった。
「遠隔で発動するのは初めてだったけど、ここで出来なきゃ主席の格が落ちるし、私に出来ないわけないもの」
突風が吹いた後に彼女は遠隔で術式を発動したのだ。
その結果彼女は“運命”の通りに新たな力を手にしたのだった。
「練習がてら使うのが良さそうね………」
本もペンも仕舞い、彼女は空中を指で指し示し、物語を綴り始めた。
『私は敵のクリスタルを発見する』
不思議なことに綴られた文字は消えず、宙を浮遊し、やがて微かな光を発してその先の運命が指し示された。
_____“そらの巡り合わせ”_____
美しく長く整ったまつ毛がかかる瞳を閉じて、数秒時が止まったような静かさが訪れる。
開かれたその瞳には、一瞬黄金の輝きが見えた気がした。
「そう、そこにいるのね」
歩みを再び進め始める。
真っ直ぐに、目的地へと最短のルートで。
その歩みを邪魔する者はどこにもいない、その瞳に映るのは確たる自信。
ずっと、第1席として君臨し続けた彼女は、突如として現れた白髪の少年に突きつけられた敗北を糧に、更なる力を得たのだ。
そして少女は洞穴の中に、巨大な透き通る水晶を視認した。
歩み寄り、剣さえも弾くことが可能な強度のボールペンを逆手に持ち、クリスタルに振り下ろす。
「これで、終わりよ」
クリスタルにペン先が突き立てられ、放射状にヒビが走り、やがて粉々に砕けた。
ペンをしまう澄まし顔には僅かな微笑みが垣間見えた気がする。
最強の学年の頂点に君臨する少女、雨野玲音によって、長かったクラス内対抗戦はようやく幕を下ろした。
素晴らしかった、その一言に尽きる。
意地と意地のぶつかり合い、時に運も絡んだ戦い、見ていて思わず興奮してしまった。
鳥肌が立ち、ゾクゾクするような勝負だった。
「私もいつか………」
ここにくる前までは考えることもなかっただろう、私もいつか彼らと肩を並べたいだなんて。
でもこの2ヶ月と少しだけでここまで考え方が変わってしまうだなんて。
やっぱり、私はここにいたい
試験の内容を自分なりにまとめたノートの最後の感想に、そう付け足した。
「まとめる作業は終わったかい天音君?」
背後から声をかけられる、長身の美形である飛彩君だ。
興味深そうに私のノートに覗き込んでくる。
しばらくふぅむと唸りながら一ひと通り眺めると、彼はニヤッと少し不気味に笑い、その目が私とぱっちりあった。
「不安がらなくても、天音君なら強くなれるだろうねぇ」
励ますような言葉だったが、声に芯が通っていて確固たる確信が宿っていた。
ふわっと浮つくような、なんだか不思議な気分だった。
「それとこのノート、後で借りてもいいかい?ヒト目線の意見を知りたくてねぇ」
「もちろん」
「感謝するよ、では…ようやく私の出番だねぇ」
ひとつ大きなあくびをして彼は先ほどまで激闘が繰り広げられていた場所に向かっていった。
その姿は医者の鑑そのものだった。
試験も終わり、1学期はもう試験はない、しばらくはゆっくりすることができそうだ。
もう夜も更けている、飛彩君のあくびが私にも伝染してしまったようだ。
うーんと伸びをすれば、集中も切れてどっと眠気が来てしまった。
明日は休みだし、ゆっくりと眠ろう。
その時だった。
「痛いって!!痛いって兄さん!!散々煽ったの謝るから!!」
飛彩君に治してもらったであろう双子の弟の悲鳴がここまで響き渡って来た。
「………眠れる…のかな…?」
休みが休みでなくなりそうな予感がした。
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