似た者同士
月光に照らされる中、漆黒を体現したかのような斬撃と、炎と冷気を纏い矛盾の権化となった拳撃が衝突した。
魔力が辺りに迸り、鮮やかに輝きながら荒れ狂っている。
魔力を全て消費したというのに拮抗して剣が進まない。
腕に全身全霊を込めて前へ推し進めようとする、しかし拮抗は崩れることがない。
このままでは押し負ける、魔力をフルで解放して拮抗しているなら、魔力が少量でも残っている夜神に持久力で負ける。
接近するまでに魔力を使いすぎた、決して甘く見ていたわけではないが、藍闇の変換効率が酷すぎる。
これだけ捧げてもまだ届くことがない、間違いなく全身全霊フル稼働の“夢幻泡影”、それでも決定打にならない。
「貰ったぞ!!」
天秤が、夜神の方へと傾く。
とうとう“夢幻泡影”が弱まっていく、拳はさらに勢いを増して刀が押し戻される。
いやだ、負けたくない。
恨みだとか、復讐だとか、今はそんなことどうでもいい、ただボクは今何もかも、名前ですら捨ててもいい。
「ボクはお前に勝つ!!」
一つだけある、ボクが差し出すことの出来る最大の魔力の塊が。
デメリットもある、これからのプランも崩れる可能性もある、だとしてもボクは勝ちたい。
なんの利益にもならないただの意地の張り合い、でもここで引いたら一生の心残りになってしまうから。
ボクは覚悟を決めた。
ボクはボク自身の術式を愛刀に捧げた。
もう戻ってくるかもわからない、2度と使えないかもしれない、でも大丈夫だと、ボクと藍闇を信じる。
斬撃が勢いを増し、絶体絶命だったボクを救い、夜神を窮地に追い込む。
「貴様なぜここまでしぶといのだ!!なぜ倒れないのだ!!」
チャンスから一転し劣勢になった夜神は怒るように問いかける、でもそんなもの夜神自身にもわかるはずだ。
ボクにはわかる、夜神が必殺の一撃を手に入れて戦いに臨んだ時、相手に同じことを問われたであろうことが、なぜならば
「ボクらが似た者同士だから、夜神にだってわかるだろ?」
「クソめが!!アアアア!!」
「ハアァァァ!!」
夜神の喉から自然と雄叫びが飛び出してくる。
呼応するようにこちらの雄叫びも上がる、柄でもないだろうに。
早く終わって欲しい、頭ではそう考えていても心は違った。
まだ続いて欲しい、決着なんて来なくていい、だからずっとこの戦いをしていたい、ずっと夢に浸っていたい。
だがもう終わる、魔力も術式も全てを捧げた一撃、夜神の全てが込められた究極の拳、ここから先は感情論になってしまう。
全身から力という力を振り絞り、気合いで押し続ける。
もっと、もっと強く、もっと硬く、限界なんて超えた先の先へ。
斬撃が拳を押し退け、漆黒の一太刀が夜神に浴びせられる。
ぐらりとふらつくが、一歩だけ揺れを踏みとどまって耐えるも、夜神は倒れた。
もう息が絶え絶えになって、それでもなおこちらに鋭い眼光を向けてくる。
「貴様………余と貴様が…似た者同士だと…言ったな………」
「ああ…似た境遇に置かれて、似た扱いを受けて、復讐を考えて」
夜神は必死に嘲笑うような笑みを浮かべた。
「確かに似ている、だが余は復讐に生きているわけではない、余と貴様は同じではないのだ…そこを履き違えるでないぞ………」
声がなくなった、言いたいだけ言いやがって。
気絶しているようだ、動く気配が微塵も感じられない。
眩暈がする、肺が痛い、体が重くて今にも倒れそうだ。
立っているのはボクで、地に伏しているのは夜神だ。
勝った、勝ったんだ。
全力を出し尽くしてようやく、ボクは勝つことができたんだ。
一歩、夜神に近づこうとする、だが足は動くことがなく、代わりに体がぐらりと前に倒れかかった。
意識が遠のく感じがする、魔力を出し尽くした代償が来た。
せっかく相手倒したのに、ボク自身も倒れるだなんて、これだったら勝ちというよりは………
「引き分けかな………」
意識がするりと手からすり抜けて目の前が真っ暗になった、心地よかった。
途切れる瞬間、黒板を引っ掻くような不快な声が聞こえた。
起きないのか?返事をしないならなら喰いきってしまうぞ?
悪魔に何か大切なものを捧げてしまった気がする。
画面越しに、2人が事切れて倒れるのを見届けた。
まさに激闘と言うべき勝負だった。
目まぐるしく変わっていく戦況、その中で新たな力を掴み取り、互いの渾身の衝突を繰り返し、ギリギリの差でシュヴァルツ君が辛くも勝利した。
だが問題が一つ発生したのだ。
彼らの序列は決まったが、試験自体の決着が不明瞭となってしまったのだ。
「飛彩君、これって引き分けで終わるの?」
仮眠から復活して、私と一緒に今の勝負を食い入るように観ていた飛彩君に聞いた。
すると彼は不気味な笑みを浮かべて応えてくれた。
「何を言っているんだ天音君、私の記憶が正しければ勝利条件は“敵陣営のクリスタルを破壊すること”だったはずだが?」
「確かにそうだけど………」
確かにこの試験の終了条件は敵陣営のクリスタル破壊だ、しかしもう立っている者はいない、戦いは終結したはずだ。
まさかここから復活するまで待てと言うわけではないだろう。
「よく見たまえ、1人だけしぶとく生き残っているだろう、新しいものを掴み取ったのはシュヴァルツだけではないようだねぇ」
やけに耳に残る言い方で彼はモニターを指差した。
激闘に次ぐ激闘を生き残った最後の1人は一体誰だ。
怜音ちゃんはゼフュロス君の不意打ちによって戦線離脱。
拓海君は同じくゼフュロス君の不意打ちでノックアウト。
大弥君、龍我君、ゼフュロス君は瑠璃ちゃんの決死の道連れで戦闘不能に。
そしてシュヴァルツ君と夜神君はほぼ相打ちに近い状態で倒れたばかり。
考えても誰が生き残ってるわけでもない、もう1人いるのが信じられない、それこそ私の知らないうちに飛彩君が参加していたぐらいしか考えられない。
「思い出すといい、天音君がその目で確実に倒れるのを見ていないのは誰だい?」
記憶を辿り、脳裏に焼きついたシーンの数々を思い出す。
確実に倒れるのを見ていないのは………
1人の、最も執念深い少女の名前が脳から弾き出された。
「そっか、遠くに飛ばされただけで倒れたわけではないんだ!!」
「そうさ、最後に生き残ったのは彼女だ、流石は第1席様と言ったところだね」
画面の先には、運命の少女が立っていた。
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