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誰よりも平和を求める魔王を救う物語  作者: GOA2nd
クラス内対抗試験編
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嫌われ者

「行くぞ嫌われ者」


脚の疲労はまもなくピークを迎えるだろう。

脚だけではない、身体中になんとも言えない倦怠感がある。

だがこの嫌われ者と決着をつけるまで、ボクは走り続け、剣を振り続ける。

防戦一方だった今までの戦いから一転、今度はこちらが攻め落とす番だ。


「来るがいい嫌われ者」


漆黒の翼をはためかせて、夜神は再び舞い上がった。

月光を背に受けるその姿はまさに“吸血鬼”と言うべきだろう。

炎を纏った黒翼を振るい、炎は獲物を見つけた隼の如く迫ってくる。


「複合術式、“炎神鳥(フェニックス)”!!」


炎神鳥(フェニックス)”に使用する術式は“爆炎”、“魔翼”、そして正体不明の一つ。

“爆炎”で不死鳥の本体を創り出し、“魔翼”で動かして攻撃する。

そしてもう一つあった“炎神鳥(フェニックス)”の性質、それは自動追尾だ。

どれだけ逃げ回ろうと全自動で敵を殲滅するまで追い続けてくる。

つまりボクの読みが正しければ………


一粒の不安が残るせいで僅かに震えるこの腕を、上段に構えた刀を火の鳥に振り下ろす。

魔力を刀に纏わせると音を鳴らしてぶつかり合い、一瞬拮抗したのちに炎が消え去った。


「………やっぱりね」


温かくなった鍔を撫でた。

そう、刀身が熱くなっていないのだ、勢いのある炎を切り捨ててなお温かい程度で済んでいるのだ。

炎が弱い、これから分かることはすなわち、威力を上昇していない夜神の魔術は脅威になり得ないと言うこと。


「掴んだよ攻略の糸口、“炎神鳥(フェニックス)”は“爆炎”、“魔翼”、あとは動かすための術式を組み合わせているから威力が落ちている、防ぐことは造作もないね」


「そこまで見破るとは、腐っても第8席というわけか」


ならば、と夜神は翼をたたんで地に降り立った。

ボクに空を飛ぶ手段はない、だから射程圏内に降りてくれたのは有難い。

だがそれは夜神もわかっているはずだ、無策なわけがない。


「“爆炎”」


夜神の握り締めた右手の拳に爀灼の炎が灯る。


「“氷雪”」


空いている方の、左手の拳に今度は白い冷気がかかった。


対照的な二つの術式を同時に使用する、警戒を強めた方がよさそうだ。

夜神が同時に使えるのは3つまで、なら最後の一つに選んでくるのは。


「“格闘”」


見た目に変化はない、だが肌で感じる。

その二つの拳は致命傷になり得ると、一度でも喰らったら立ち続けられるか怪しいだろう。

愛刀を強く握り、いつでも術式が使えるように構える。


「複合術式“調和する相対(ハーモニクス)”、第一楽章“炎と氷の双拳(ツヴァイランサー)”、今度はこちらの番だ嫌われ者」


「来いよ、嫌われ者」


攻撃とはいくら強くても当たらなければ意味がないのだ、こちらは既に構える事ができてすぐに反応できる。

流して勢いを利用したカウンターを叩き込む。


夜神がこちらに歩いてくる、一気に間合いを詰めないのは走ってもそう変わらないからか、基本術式である“速化”すら同時使用が不可能なのか。

両の拳を天高く振り上げて、勢いよく振り下ろす。

地面を同時に叩いた瞬間、辺りに真っ白な霧が広がり、視界がまっさらになった。


「水蒸気か!」


冷気を一気に加熱させて目眩しになる水蒸気のカーテンをかける、それだけが一瞬の隙を生み出す事ができる。

藍闇(カナシミ)を使えば晴らすことはできるが、それではどうぞ攻撃してくださいと言っているようなものだ。

ここは構えを解かずに、反撃を狙い続ける。


ピリピリとした空気が場を支配する。

焦らされ続けるが、動いては負ける、後出しジャンケンと同じだ、先に出した方が負ける。


やがて霧が晴れる、先ほどまで夜神がいた場所にもうあいつはいなかった。

逃げたわけじゃない、こんな心の踊る勝負から逃げるなんてあいつがするわけない。

後ろからも気配はしない、透明になる術式か、目眩しのためだけにあんなブラフを?

客観的に考えろ、自分の死角を、俺の視線から絶対に外れるのはどこだ、地上ではないならば地中か?それなら“掘削”の後があるはずだ、下じゃないなら………


「上か!!」


「“風上連射(ウィンドジャベリン)”!!」



真上から真紅の疾風が吹き荒れる。

地表を冷やしたことで発生した微かな下降気流を利用し、加速しながら目前に迫ってくる。


「喰らい尽くせ!!藍闇(カナシミ)!!」


藍闇(カナシミ)切先を真上に向けて術式を発動する。

真紅の疾風はたちまち闇に吸い込まれて消え去った。

術式を使うことすらやむを得ないタイミングだった。


「使ったな!!妖刀の術式を!!」


気がつけば炎と冷気を拳に込めた夜神が、拳を振りかぶっていた。

いつの間にここへ来たんだ、移動にも時間はかかるのになんでだ。

同時に使えるのは3つまで、なら何をしたんだこいつは。


胴体にもらったら危険だ、咄嗟の反射で藍闇(カナシミ)を握る右腕を盾に回避しようとした。


「“炎と氷の双拳(ツヴァイランサー):双撃無双(ツインアップ)”」


冷気の拳で弾かれる、耐えられないほどではないツンと刺すような冷たさに感覚を奪われる。

胴体がガラ空きになってしまった、夜神は炎の宿る右の拳を既に中段に構えている。

やばい、そう思った瞬間にはもう手遅れだった。


_____“吸血鬼の戯れ(ブラッディバラード)”_____


体が、空を舞った。





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それではまたお会いしましょう!

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