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誰よりも平和を求める魔王を救う物語  作者: GOA2nd
クラス内対抗試験編
23/32

兄とは弟に敗北出来ない生き物である、だが

パソコンが消滅したので投稿頻度が凄まじく低下します。

『まさか、俺がここに来るまで何もしていなかったとは思ってないだろう?』


『そりゃ兄さんのことだからなにかしてるとは思ったさ』


今優勢なのは誰がどう見ても弟、だがより余裕のある方は兄、不思議な空間だ。


『この勝負が始まった時点で、大弥、お前の敗北だ』


拓海君は腕を精一杯に広げて、ワニが獲物に狙いをすまして顎を閉じるように勢いよくパンっと心地いい音を響かせながら閉じた。

何の意味もないように思える動作、しかしすでに彼の術中にはまっていた。


大弥君の左右から突如として無数の矢が飛来する、それはさながら弾丸の雨のように。

三次元(ディメンション)駆動(ドライヴ)の合間を縫うように正確にくぐり抜け、着実に彼の元へと進んでいく。


『お前は勝負の結末の場に選ぶならここが一番いいと踏む、そしてそれを疑うことなく自分の舞台に俺を誘い込んだと勘違いする、ならそこに罠を張るのは定石だろう?150発の矢の雨がお前を襲う、逃れられると思うな』


大弥君のこの一撃は矢を打ち出す角度、タイミングが重要だが、それ以上に周囲の環境が絶対条件だ。

木の本数、位置、地面の傾斜、ぬかるみ具合、その全てが整った場所でしか使用することが出来ない、言ってしまえば再現性皆無の技だ。


そう安安と出来るわけないものを、敢えて可能な状態の場所を創っておく、そうすれば自然に誘導される。

そこまで考えた上で彼は150本もの矢を空中に準備しておいた。


途方に暮れてしまいそうな地道な道を、この短時間で済ませてしまう胆力、これこそが第3席たる真髄。

だがそれだけではない、最早光の如き速さで動き回る矢をかすりもせずに正確に150本もくぐり抜ける事が出来るはずがない。


『くっそ!なんで当たらないのさ!』


大弥君も同じ疑問を浮かべたようだった、努力だけでは到底不可能だ。


『大弥、俺はお前の速すぎる思考に追いつくことは出来ない、だがお前のたどり着く結論を先読みできる、だからこそお前は一生俺に勝つことが出来ない、どれだけお前が俺を置いて行こうとしても、俺はお前の終着点で待っている』


きっと、相手が他の誰かだったら考えるまもなく大弥君が勝っていたことだろう、だが相手は自身の双子の兄、自身のやることなすこと全てが読まれる。

弟を何よりも大切に思い、愛しているからこそ全てがわかるのだろう。

やることなすことすべての対策が開始前に整っている、まさにガンメタだ。


だがそれでも圧倒的な数の矢を全て規格外のスピードでありえないほどの精密な動作で操作するなど、脳が焼ききれてしまいそうになるはずだ。

それを難なくやってのける彼は大弥君とは別の天才だ。


『兄とは弟に敗北できない生き物だ、なんせ弟を守らなければならないからな』


倒すためではなく守るための強さ、それは今この瞬間私の目には最も輝いて見えた。


『さあ終結(チェックメイト)だ、“千々矢吹(サウザンド)雪摩天楼(マンハッタン)(バインド)”』


縦横無尽、正確無比に矢がぶつかることなく大弥君の周辺を動き回る。

まるで踊るかのように、降り注ぐ弾幕の嵐はなぜか大弥君を仕留めることなく動き回る。

まるで誘うかのように、怪しげにのらりくらりとしながらも芯のある飛び方をしている。

そしてとうとう矢たちは大弥君を中心に放射状に離れて行き、そして木や地面至る所に着弾した。


『なっ!?』


両手を上に持っていかれ、弓を手放してしまい、大弥君はピタリと動かなくなってしまった。

よくみると大弥君の体に銀色の見えるかどうかぎりぎりの糸が絡みついていた。

飛び回っていた大弥君の矢も空中でピタリと止まっている、まるでトリックアートのようだ。

矢の尾に糸をつけた状態で縦横無尽に動き回る矢に当たらずに動かし続けていた、とんでもない精密能力だ。


『そこで頭を冷やしていろ愚弟が、俺は雨野達の加勢に向かう』


大弥君の腰の魔石を奪い取り、ポケットに仕舞う。

くるりと縛られた大弥君に背を向けて混沌とした戦場に脚を運ぼうとする。


だがそれは叶わなかった。


『おっとそいつはいけねえな、お前はここでお咎めだぜ?拓海お兄様ぁ?』


拓海君の体が突風に攫われ、宙に舞う。

風は拓海君を木や地面に力強く叩きつけて、抵抗させる間も無く意識を奪い去った。

風は乱雑に拓海君を地面に捨て、大弥君を縛っていた糸を切り裂き、大弥君を解放した。


『兄とは弟に敗北できない生き物だ、だが弟は兄を超えるために生まれてきたんだぜ?』


風の正体はゼフュロス君だった。


玲音ちゃんを連れ去り、そのついでと言わんばかりに兄弟対決を制した拓海君の意識を刈り取った死神の風。

もう彼を止められる者はいないのだろうか。


『行くぞ大弥あとは2人だ、正直姫からなんとかしたい、姫にあれ使われちゃあどうしようもできねえからな』


『じゃあさっさと行くのが正解だろうさ』


大弥君は倒れている拓海君に歩み寄り、弓と魔石を奪い返した。

そしてポツリと、誰にも聞こえない声で呟いた。


『………今度は負けないからさ、また喧嘩(遊ぼう)よ兄さん、また兄さん喜ばせるからさ』


『ん?お前なんか言ったか?』


『なんでもないさ、ほら行くよ!』


2人で走り出してして行った。

ゼフュロス君による盤上遊戯(ボードゲーム)、詰みまであと2手。




読んでいただきありがとうございます!

よろしければ高評価、ブックマーク、レビューの方もよろしくお願いします!

作者の励みになりますので!

それではまたお会いしましょう!

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