花嫁に相応しい
第2章、クラス内対抗試験編開幕!
「やあ飛彩」
夜中の1時、ボクは飛彩の研究所に来ていた。
飛彩はカタカタとキーボードを叩くのをやめて、こちらに振り向く。
「こんな朝早くから一体何のようかな、リューゲ、いや...名を教えてもらってもいいかな?」
そっか、今までリューゲって偽名を使っていたから名前を言わなくてはいけない。
「シュヴァルツ・ノワール、それがボクの本名だよ」
ふうん...と飛彩は少し考える素振りを見せるとニヤリと笑って喋った。
「随分と真っ黒だね」
僕はどうやら医者を舐めすぎていたみたいだ。
「まあいいさ、それで何のようかなシュヴァルツ?」
「ちょっと魔石を持ち出すよ」
「構わないが、何をするのかい?」
「僕にプライバシーってないの?」
ケケケ、と気味の悪い笑いを浮かべて飛彩は許可してくれた。
ほんと睡眠が足りていないと思う、こんな時間に研究所にいる僕が言えることじゃないけど。
「じゃあこの土日は富瀬島にいないからよろしく」
「わかったよ、では私は研究対象もなくなったことだし...久しぶりに寮に戻るとしようかな...」
「拓海が激怒してたよ〜、いつ帰ってくるのだあの馬鹿者は、とか言って」
「それは恐ろしい、手土産に新装した武具でも持っていこうか、ではきみがこの後何をするのかわからないが、楽しんでくるといい」
と言い残し、飛彩はパソコンを閉じると奥の方へ引っ込んでしまった。
…本当に食えないやつだな...取り敢えず行くとするか。
術式を起動して僕はドイツの実家へと向かった。
「やあやあ諸君!久しぶりに私が帰ってきたぞ...って、これは一体どういった状況かな?」
「ああ、ちょっと待ってろ」
「この馬鹿者どもが俺にいたずらを仕掛けてきてな...あとはリューゲだけだが...」
「彼の本名はシュヴァルツ・ノワールだ、あと彼なら土日留守にすると言っていたぞ?」
「え?」
「兄貴が?」
「その兄貴が、だ」
「「...はえ?」」
「...どうやら逃げたようだな...仕方ない、帰ってきてから説教だが...貴様らは今ここで制裁を下してくれる!」
「「ヒヱェェェェェェ!!」」
「あー...そうだな...俺、姫んとこ行ってくるわ」
「私はあちらの部屋で一眠りするよ」
「貴殿こそ、余の花嫁に相応しい」
「「「...え?」」」
突然だが、私は見知らぬ男子に手の甲にキスをされていた。
もう一度言おう、突然だが私は見知らぬ男子に手の甲にキスをされていた。
「は...花嫁っ!?」
「ああ、余の花嫁になるがいい」
こんなことを突然言われてパニックにならないほうがイカれているだろう。
「月華さん...流石に軽蔑します...」
「夜神、今すぐに天音の手を離しなさい」
夜神...月華...何処かで聞いたことがある。
「ああ!自己紹介のときゼフュロス君が言ってた第7席の人!?」
「なんと!花嫁殿は余のことを知っておられたのか!やはりこれは運命の...」
再びキスしてこようとしたものだからつい力任せに振り払ってしまった。
「おや...花嫁殿は素直になれないようだね...でも大丈夫さ!時期に恥ずかしくもなくなるからね!」
こりもせずに近寄ってくる。
ガチャ、とドアが開き、そこにはゼフュロス君がいた。
「...姫、これどういう状況だ?」
「あ、隼人くん...ちょっと月華さん追い出してくれない?」
するとゼフュロス君の声音が一層重く、恐ろしいものになった。
「お前...まさか...また姫に言い寄ったのか...?てめえ今度こそぶち殺してやるよ...」
なんと瑠璃ちゃんにも言い寄っていたそうだ。
「従者は従者らしくじっとしておれんのか、これだから人間は」
その一言がゼフュロス君を烈火の如く燃え上がらせた。
「ああ!?てめえ表にでろ!誰が姫の従者...じゅうしゃ...」
ゼフュロス君が私達の方をちらりと一瞥すると、その炎が段々と弱まってきた。
隣からとんでもなくおぞましい気配がして背筋がピンと伸び、震えた。
恐る恐るその気配に目を向けると、瑠璃ちゃんが笑っていた。
訂正しよう、目が1ミリも笑っていない。
「月華さん...誰が、誰の従者ですって〜?」
「まったく...聞こえなかったのかい?この下劣な人間が、瑠璃殿の従者だと...」
「あなた、死んだわね」
玲音ちゃんの言葉でも彼はまだ状況を理解していないようだった。
もう彼は終わった、誰もがそう感じた。「隼人くんは私の従者なんかじゃなくて!対等な!私の婚約者です!隼人くん、月華さんなんかけちょんけちょんにしちゃってください!」
怒っててもけちょんけちょんとか言うんだ、可愛い。
「お望みとあらば...さーて夜神ィ...お兄さんと遊ぼうか...」
夜神くんは服を掴まれ、部屋の外に爆速で引っ張られていった。
断末魔は日光はぁ!日光だけはぁぁぁ!だった。
夜神くんがせめて苦しまずにお仕置きをしてもらえることを祈るのみだった。
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