人間か?神様か?
「酷いのは、人間か神か、どっちだろうな?」
「わかりません」
「そうだな!私もわからない。ただ、魂の数は決められていて、秩序を乱されるのを神は嫌がるだけだ」
「わかっています」
「誰かが幸せになるなら、誰かは不幸でいなければならない。それが、この世界のルールだろ?」
「はい、そうです」
ルシア様は、杏奈の隣にしゃがんだ。
「桜木杏奈の赤ちゃんが死んでくれなければ、三井百合子の赤ちゃんが死んでいた。わかるだろ?」
「はい」
「医者は、神になった気がする。しかし、こちらのルールは知らない。それは、所詮人間だからだ」
「はい」
「こちらのルールを守っていただけないから、こちらからルールを守らせるしかないのだ」
「魂の数は、決まってるから……」
「そうだ!人間、動物を含め魂の数は決まっている。世の中に存在できる数も決まっている。だから、お腹の中に宿っても死んでいただくしかないのだ。それをわかられずに、赤ちゃんを授かっていただくと、こちらが来るしかないのだ」
ルシア様は、泣いていた。
「人間は、残酷だと嘆き、赤ちゃんを失い絶望される、しかし、こちらにはルールがあるのをきちんとわかって欲しい。あの、神と呼ばれる医者のようにうまくされたら困るのだ。年寄りも命が生き長らえる今…。もって、還ってきやすいのは、子供の魂なのだ」
ルシア様の言葉に、強く頷いた。
大人は、ややこしい。
年を重ねれば、特にややこしさが増すのだ。
「命は、長ければいいわけではない。きちんと世代交代をしてくれなければ、こんな風になる」
「誰かが命をもらう為なら、誰かが死ななければならない。生と死は、表裏一体でなければならない。死神学校に入った時にならいました」
私の言葉に、ルシア様は立ち上がった。
「リゼ、その通りだ。なのに、人はそれを忘れて生ばかりを産み出そうとする」
「その回収作業が…」
「天変地異だったりするのだよ!リゼ」
ルシア様は、ずっと泣いている。
「まだ、今から行くのですね?」
「今から、行く!虐待された2歳児を迎えに…」
「気づいてないだけで、世界は繋がっているのですよね?」
「そうだよ!リゼ。虐待されて、亡くなってくれる子供がいるから…。あの人は、子を宿せるのだ」
たまたま、通り過ぎる妊婦さんが見えたらしくルシア様は、双眼鏡を差し出した。
「本当ですね」
「生きれる事を当たり前だと思わないで欲しい。それは、表裏一体。誰かの死のお陰にある命なのだ」
「俺が、死んだ日もどこかの誰かに赤ちゃんが?」
「授かっただろうね」
ルシア様は、そう言って双眼鏡をしまった。