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動物奇譚  作者: 彼方
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クラゲとトナカイ

ぼくはトナカイ。

名前はカイト。角はこれから大きくなるの。

大人じゃないけど子どもでもない、微妙な年頃なんだ。


ぼくは大好きなものがいっぱいある。

パパもママも兄ちゃんも、角もキノコもだーいすき。

それから、クラゲのウミちゃんのことも、とってもとっても大好きなんだ。


ウミちゃんはクラゲだからいっつも海にの中にいる。

でも、ときどきこっちにやってくるから、ぼくたちは岩場に座ってお話するの。


ウミちゃんはよく、「可愛いねぇ」と言いながらぼくの頭を撫でる。サラサラで気持ち良いんだって言ってた。

ぼく、ウミちゃんに頭撫でられるのだーいすき!


「ウミちゃん、ぼくかわいい?」

「とっても可愛いよー」


ウミちゃんはぼくのほっぺを両手で包む。

プニプニして気持ち良いんだって。


「ぼくのこと、すき?」

「大好きだよー」


まぁ、当たり前だけど。

ぼくはかわいいんだ。

パパもママも兄ちゃんも、みんなぼくがかわいいって、大好きだって言う。

みんなぼくのことがすき。当たり前のことなのに。


ウミちゃんにそう言われると、なんだかドキドキ。

これが恋って言うんだって、ぼくは知っている。


「ぼくもウミちゃん、だいすきだよぉ」

そういって、ギュッと抱きついてみる。


ウミちゃん良いにおい。

おっぱいやわらかい。


・・・慌てたようにウミちゃんが何か言っている。


「もー・・・、なにー?」

「な、何じゃないよ!」


ちぇっ。ぼくはウミちゃんと同じことしただけなのに。


「ヤメテよ!」

「やーだよー。ウミちゃんだってさっきぼくの頭ナデナデしたじゃない。なんでぼくはおっぱいナデナデしちゃいけないの」

「だめでしょ、それは・・・」

ウミちゃんはちょっと疲れたみたいな顔してる。


「わかったよ。もうナデナデしないから」


そういってもう一度ウミちゃんに抱きつく。

やっぱり柔らかくて良いにおい。

このまま、ちょっとだけお昼寝したいなぁ。


それなのに。

・・・ウミちゃんがまたごちゃごちゃ言っている。


「もー、うるさいなぁ」

「う、うるさいじゃないよ!」


本当にやめてと、ウミちゃんがぼくの肩を掴む。


「なんで」

「なんでって・・・」

「なんでおっぱいプニプニしちゃだめなの。ウミちゃんと同じことしただけなのに」

「いや、だめでしょ!」


ウミちゃんの顔が真っ赤だ。

かわいい。


「なんでだめなの?」

ウミちゃんは困ってる。


「ぼくはウミちゃんに頭ナデナデされるのも、ほっぺプニプニされるのもだーいすき。」

何かウミちゃんがごにょごにょ言っている。


「ウミちゃんぼくのことだいすきって言ったのに。うそなの?」

「嘘じゃないよ、でも、あのね、そう言うことじゃなくて・・・」


ウミちゃんが下を向いてしまった。

なんでこうなっちゃうんだろう。ぼくはただウミちゃんと一緒に居て、楽しく過ごしたいだけなのに。

ぼくはウミちゃんを困らせてばっかりみたい。

ウミちゃんはぼくといると、疲れちゃうみたい。


「さみしい。こんなにだいすきなのに」


ちらっとウミちゃんをみる。

ウミちゃんはなんだか、よくわからない難しそうな顔をしていた。相変わらず顔は真っ赤。

相変わらず、かわいい。


「ウミちゃん、さみしい・・・」


ウミちゃんは勢いよくぼくから目を逸らす。

「そ、そんな顔したって!ダメだから!」

そう叫んで、さらにギュッと目を瞑る。


ぼくはそんなウミちゃんのほっぺにチューをする。

おっぱいと同じくらい柔らかかった。





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