イヌとナマケモノ
ボクはテンテン!
イヌ!
昨日お散歩していたら、木の上に誰かいるのを見たんだ。
誰だろうって気になっちゃって。
今日はそのこにご挨拶するの。
お友だちになれたらいいな!
「こんにちワン!」
そのこは昨日と同じ所に、同じように居た。
毛むくじゃら!ボクと一緒!
尻尾を振りすぎて体まで揺れる。ちょっと恥ずかしい。
「ボクはテンテン!イヌだよ!」
「キミはだれ?木の上で何してるの?」
「寝てるの?おーい、こんにちワン!」
しゃべりかけてみるけど、返事はない。
寝てるのかな?そう思っていた時、そのこはゆっくりと目を開けた。
キャラメルみたいな目だなと思った。
「・・・うるさい」
怒られちゃった。尻尾が下がっちゃう。
どうしたらいいわからなくて、その場でグルグル回る。
ハァハァ!
回り続けているうちに。
なんだか楽しくなってきた!
「うるさくしちゃってごめんね!」
「どうしてもキミとお話してみたかったんだ!」
「昨日からそこにいるよね?何してるの?」
「よかったらボクと遊ぼうよ!」
グルグル回りながらおしゃべりするのって楽しい!
「落ち着きないなぁ、ドタドタしないでよ」
また怒られちゃった。
「ごめんなさい」
今度はちゃんと座って、改めて木の上を見る。
「ボクの名前はテンテン!キミは?」
ニコッと笑顔で聞いてみる。
「こんにちワンって、何」
無表情で聞かれた。キャラメルみたいな目はボクの方を向いているけど、ボクを見ているのかはわからない。
改めて聞かれると、なんだか恥ずかしい。
「え、っと・・・。ボクってイヌだから吠える時はワンワンっていうの。それで、お友だちのルイちゃんが」
「あ、ルイちゃんはカエルの女の子なんだけど」
「その子が、こんにちはとワンを繋げて言ったら面白いんじゃないかって!」
「教えてくれたの!だから、こんにちワンっていうのは、えーっと・・・イヌギャグかな!」
言い終わったから、ニコッと笑ってみる。
「声でか」
それだけ言うと、そいつは目を閉じた。
「キミって、キミってやつは!」
「なんだかイヤなやつだ!」
ワンワンと、木の上のこに向かって吠える。
「なんだい!ボクがうるさくして気分を悪くしたなら謝るよ。」
「だけどさ!ボクがお話してるのに、キミってば文句とか不満とかばっかり!」
「質問されたから答えたのに、それを『声でか』って、いくらなんでも酷すぎるや!」
するとそいつはゆっくり目を開けた。
「今の、僕の真似?」
そいつは、あはは〜とたいして面白くもなさそうに笑う。
笑い方までイヤなやつだ。
「そうさ!キミの真似だ!」
「『あはは〜』って、ほら、笑い方も真似しちゃったぞ!」
するとそいつは、いひひ〜と笑う。
「なんだい、キミ。それ本当に笑ってるの?それともやっぱりボクを馬鹿にしてるの」
「あはは〜、あ〜疲れた。君はなかなか面白い。君は一体誰なんだい?」
「何にも聞いちゃいないんだな」
チクリと嫌味を言ってみる。
言った後でものすごく後悔して、ちらっとそいつを見たけど、対して気にもしてなさそうだ。
「ボクはテンテン!イヌだよ!」
「へぇ・・・イヌかい」
「ボクはコガタシュで、今より大きくならないけど」
「小さくってとっても可愛いでしょ!」
「ボクのパパはパピヨンで、ボクのママもパピヨンだから、ボクもパピヨンなんだ!わかる?」
「わからないねぇ」
そう言って頭を掻く。
「わぁ、キミの手って長いんだね、それは爪?」
「僕は」
そのこはボクの質問は無視して喋り出した。
「ナマケモノ。ホフマン」
「ナマケモノ?キミがナマケモノなのかい?
「散歩もしないで一日中木の上に居て動かない面倒臭がりさんで」
「水浴びもしないで体に苔が生えちゃうキタナイチャンで」
「しゃべりかけても返事しないへそ曲がで有名な、あのナマケモノなのかい!」
「あははいひひ〜。君の方こそ嫌な奴じゃないか」
そう言ってホフマンはヘラヘラ笑っている。
「ねぇ!今度一緒にボール投げして遊ばない?」
「嫌だね。僕はここから動きたくない」
「そんなこと言わないで。明日も誘いに来るよ!じゃあね、ホフマン。お休みの邪魔をしてごめんね!」
ニコッと笑って立ち上がる。
「じゃあな、イヌ。君とのおしゃべりは当分遠慮したいよ」
「ボクの名前はテンテンだ!キミだって、ねぇナマケモノって呼ばれたらイヤだろ?」
「確かに嫌だなぁ」
ホフマンはニヤリと笑う。
「悪かったよ、テンテン。来年までさようなら」
「うん、ホフマン!また明日!」
うぜー、と上から声がするが気にしない。
話してみたら仲良くなれるかもしれない。
そん気がするから!
あぁ!一緒にボール投げするの楽しみだな!
遠くにボール飛ばしてくれるかな。
そうじゃなかったら、お散歩でもいい!
歩きたくないっていうなら、背負って歩いてあげよう。
ボクはウキウキ、そしてご機嫌。
尻尾を振りすぎて、また体ごと揺れる。
やっぱりちょっと恥ずかしくなった。