普段は無愛想、それでもよく見てる。
「……あ、先輩、おはようございます。」
肌寒いグラウンド。
まだ朝も早いというのに、先輩は顔を出してくれる
「おう、おはよ。あれ?なんか今日早いんだな。」
「あっ、そろそろ大会があるんで朝早くから練習をしようと思いまして。」
「あぁ、なるほどな……。もうそんな時期か。」
先輩はそう納得した様子で手に持ったプロテインバーを齧る。
「……先輩、朝ごはんソレですか?」
「うん?」
「あ、いや、さっきからプロテインバーを食べてらっしゃるので。」
「あぁ、……普通に食い忘れてな。さっきコンビニで買って来たんだ。」
「そうなんですね。先輩がそう言うの食べるの珍しいなと思ってたんです。」
「言われれば確かにそうだな。」
私は額を拭いながら、水を飲む。
そして、もう一本走ろうとトラックに向かおうとした時、先輩は食べかけのプロテインバーを私の口へと突っ込む。
「む、むぐっ!?せ、せんふぁい!?」
「……お前、今日朝食ってないだろ。ちゃんと食べないと良い記録出ないぞ。」
先輩はモグモグと口を動かす私にそう言う。
「モグモグモグ……、ゴクッ……、はぁ、よ、よく分かりましたね、先輩。」
「そりゃ、何年もお前の先輩やってるからな。それぐらい分かる。」
「な、なるほど……。」
「それにそろそろ大会があるんだろ?勿論練習するのも大切だが、飯もちゃんと食わねえと体壊すぞ。気を付けろ。」
「は、はい。分かりました。……そう言えば先輩こそ就職の方は大丈夫なんですか?」
「フッ、人の心配するぐらいなら自分の体を心配しろ。俺なら心配しなくても大丈夫だからよ。」
「……わかりました。」
「うん、分かったらならいいや。……じゃあ、俺行くわ。ちゃんと出したものは片付けとけよ。」
先輩はそう言うと、グラウンドを後にする。
……やっぱり先輩には敵わないな。
普段は無愛想なくせに、こういうところまでよく見てるんだから。
でも、そんな余裕綽々としていたら先輩の記録、私抜いちゃいますからね。
そんな事を考えながら、私は改めて走る用意をするのだが……ん?あれっ?
そう言えば、まさかさっきのって間接キ…………
皆さんこんにちわ 御厨カイトです。
今回は「普段は無愛想、それでもよく見てる。」を読んでいただきありがとうございます。
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