第四話-想い人-
「各員、配置に着きました」
クラルの声だ。全員無事にたどり着いた知らせだ。さすがにもう反乱や、この機に乗じて犯罪を犯す人間はいないようだ。始めは「世界が滅びるならヤりたい放題やってやる!」という人間がいるのでは? とも思ったが、世界中の国と天才たちが共同で取り組み、そして勝算が高いと自信をもって表明したのだ。むしろ、もう二度と見られない宇宙最大のイベントのような扱いになっていた。
「何食ってるの?」
「八賢者饅頭。食うか?」
八人の顔を型どった?似てるような似てないような饅頭まで売られていた。なんとも商魂逞しい。二人で分けて食べる。ここ、ウィンダリア城の会議室には俺とレオンがいた。全ポイントを繋ぐ役目である。ここに集めた魔力をケイトへと転送し使うのだ。そのケイトはアレクと共に故郷ルベリアにいる。
「守りたいものが目の前にある方が、集中出来ると思うから」
という理由だった。反対する理由はない。
アミーは人員配置の関係で、サピエナ様と天界に行っている。初めての旅行と少し嬉しそうでもあった。
意外だったのはソーマだ。てっきり俺とここにいてくれると思ったのだが。
「俺も森に戻るよ。守りたいものが目の前にある方がいいからね」
そう言ってシルヴァの肩を抱き寄せた。
(いつの間にそういうことに!? それに年…)
と年の差はいくつだっけと考えそうになった時、ものすごい睨まれたので思考を止めた。なるほど、こうやって経験を積んでいくんだな…
「レオンはさ、守りたいものってあるの? 」
「国以外でか? ん~家族はいないし、部下たちってのも違うな~ん~」
「好きな女子とかいないのか?」
「いきなりストレートに聞くのな! いや~実はいるんだよな~ これが終わったら告白してみるかな…」
「やめろ。それ死亡フラグ」
「なんだそれ!?」
「地球の文化だよ。全部終わったらいろいろ教えてやるよ」
「死亡フラグ?」
二人で大笑いした。
「お前の方こそ好きな女は… いや、ごめんな」
あの事件以来、気になる人は何人かいた。だが、それを恋愛と思うことはなかった。いや、思わないようにしていたのだと思う。もしかすると、トラウマというやつなのだろうか? だが、それも薄れつつあるように感じた。
「もう過ぎたことだよ。俺もいつまでも悪かったな」
拳を突き合わせて笑った。いよいよ時間である。
「総員、魔力充填開始!!」




