第一話-提案-
「私たちと一緒に行こう?」
そう問いかけるケイト。少女は自然と視線を父親の方へ向ける。
「貴女がどうしたいか、だよ?」
軽く叱られて、少女は戸惑うばかり。
「まだ自分では決められないかな? なら、俺が勝手に決めるよ。一緒に来てくれ。打算的なことを言えば、君の力は貴重で強大だ。これから星を救うためにも必要な存在なんだ。助けてくれないかな? その後のことは、またその時に考えればいい」
少女は声をあげて泣いた。父親以外の人間と会話すること自体初めてだろう。他人は優しかった。父親から聞かされていた世界とは真逆であり、少女にとってはむしろ父親こそが…
ケイトは少女をしっかりと抱きしめた。
「もう大丈夫だから」
と声をかけながら。
「さあ、帰ろう!」
ケイトが少女と皆に向かって元気よく言った。皆も負けじと元気に返す。だが、これで終わりではない。最後の大仕事が待っているのだ。
「そう言えば、さっき俺らの邪魔をしたが、何か意図があるのか?」
カジャが話しかけてきた。さっき、俺が男の喉を潰した時だ。他の皆もヤツに攻撃を仕掛けていた。が、俺が結界で守ったのだ。わざわざ生かした意味を聞いてきたのだ。
「ちょっとした悪巧みさ。彼女には悪いが、彼女のためにその命を有効利用させてもらう」
「なるほどな。食えないヤツだ。それじゃ、あの少女のことはお前たちに任せるとするか」
ウィンダリア城にて
「で、その少女は?」
「はい。その男が身の回りの世話をさせるために、何処からか連れ去ってきた女の子です。残念ながらショックで記憶が曖昧で、それ以上の素性は不明です。救世主がその素質の高さを見抜いたこともあり、保護してきました」
ガルド王が男を見る。男は暴れるばかりで喋ることは出来ない。そもそも、ここに来る前から暴れっぱなしで、俺の言葉に反応したものかもわからない。
「で、その格好は?」
ここに来る前、ルベリアに寄り道し、少女の髪を切り着替えさせていた。あの服装と髪型では、外界との接触もなく洗脳されているかもしれない危険分子、と判断されかねないと思ったからだ。実際その通りだったのだし。
おかっぱ頭は流行りのショートヘアになり、ケイトの御下がりのメイド服を着ている。
「なんでメイド服!?」
「なんか好きだった時期があって、司教様に買ってもらったの。結局あんまり着なかったけど、逆に良かったね」
「その服装は?」
「男の趣味では?」
「いや、お前らのだろ!」
と回りから突っ込みの視線が痛い。断じて俺のではない。俺はメイド服よりも… いや、そうではない。
「信用しろと?」
「救世主ら八賢者、そして王2名の証言です。この男が首謀者で実行犯です」
全員ニヤニヤと笑っている。察しろ、認めろ、さっさとしろ、といった圧力すら感じる。
「はぁ… まぁ、問題はないだろ。それじゃ、規定通りに、その少女は城で預かる。後で手続きな」
ケイトと少女は抱き合って喜んだ。




