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ワールドリンク  作者: さばみそ
第十一章-敵-
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第八話-真相-

「その時の一族の当主は魔法研究の第一人者で、王宮からも召し抱えられていた。その力は、この島を動かしたことからも理解出来るだろう。だが、人というのは恐ろしいものよ。その才能を妬んだお前たちに有らぬ罪を着せられ、その席から追放されたのだ。大魔道師ファルスファム、その偉大なる名を思い出したか!!」


八賢者たちは全員凍りついた。そして、脳内で古代の資料を漁った俺も固まってしまった。

「え… と… 誰?」

「記憶に… ないけど…」

「記録にも無いな」

「まったくわからん…」

「あなた、気は確かですの?」

男の顔がみるみる真っ赤になる。

「お前たちはっ! この期に及んでも尚もっ!!」

男の演説に合わせて緩くなった少女の動き。その隙に、念のため俺はさらに記録を探ってみる。

「あっ!?」

見つけた。見つけてしまった。

「どうした?」

「何かわかったのか?」

男は俺の能力を知っているのだろう。やっと見つけたかと言わんばかりのドヤ顔である。のだが…

「その名前で検索したんだけどさ、いくつか引っかかった事件があるよ」


「希代の詐欺師集団、その首領ファルスファム脱獄」


洗脳魔法を得意とした詐欺師。世界中を荒らし回った犯罪者集団の首領であり、ウィンダリアで投獄されていたが脱獄した。と記載されている。そう。つまり彼の一族は、その先祖の詐欺師に子々孫々騙され続けていたことになる。何故そんなことをしたか、今となっては誰にもわからない。しかし、これが事実だろう。何しろ、検索すればするほど事件は出てくるが、その偉大なる大魔道師が残したような功績は出てこないのだから…

「なんだよ… ここまでやっといて、世界中巻き込んでおいてこんなオチかよ…」

俺はガックリと肩を落とす。

「バカな… 嘘だ! また貴様らはっ! そうだ、この島はどう説明する!?」

「単独では無理でも、複数ならぜんぜん可能だ。犯罪者集団なのだろう?」

「ぐっ…」

「ソンナコト ニモ キヅケン ホド コワレタカ」

「てか、3000年も他人の恨みのために生きてきたの? 正直キモい…」

「うぐっ… アマデウス! こいつらをさっさと…!?」

少女は泣いていた。自分に与えられた使命、生きる目的、生かされた理由、母を殺してまで… その全てが消え失せた。彼女は振り返り、父親を愛おしそうに見つめる。おそらくは最後の希望。これを機に、違った人生を送れるのではないか? 遥か昔に一瞬だけ見せた、母親と共に自分に見せたあの笑顔がまた見られるのではないか? そう思ったのだろう。しかし、男は小物だった。その一族の使命を全うするために犠牲にしたもの。その重さに既に耐えきれていなかった。

「なんだその目は! お前は、お前も裏切るのかっ! 私はっ! お前はあっ…」

そう叫び、土人形をさらに追加して襲いかからせる。

「いい加減にしろっての。マジキモい!」

ニゲルの影が広範囲に広がり、人形たちを一瞬に引きずり込み飲み込んだ。禁呪の加護もない只の土人形ではこんなものだ。

「ああああぁー」

男が叫び崩れ落ちる。少女の希望は消えた。さらに大粒の涙を流す。もう彼女の結界は消えていた。

「じ、自分だけ助かろうと思うなよっ! そうだ、お前なんだ! 全ての実行犯はお前なの…」

突然、喉から血を吐く。俺が喉の内部で箱を発動させ、声帯部分を削り取ったのだ。本来なら他人の制御下にある体内に発現させるなど不可能だが、ずっと放出し続けていた俺の魔力が、男の呼吸によって体内まで侵入していたのだ。

「もう黙れ、お前」


ケイトが少女の前に歩み寄る。皆が気を遣って、男と少女の間に入り、お互いの姿が見えないようにする。ケイトは少女の前に立つと、両肩に手を乗せてしっかり確認目を見て話しかける。

「貴女に罪が無いとは言えない。でも、罪を償って生き方を変えることは、まだ十分に出来るよ? だから… 私たちと一緒に行こう?」


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