第六話-対峙-
「まだ結界は解除出来ないのか?」
「はい。ごめんなさい。お父さん…」
「クソッ! 何故だ、何故バレたんだ!」
「悪事ってのは、いつか必ずバレるもんさ。それより、ラスボスの城のくせに罠ひとつなくて拍子抜けだったわ」
部屋というよりは体育館のような、だだっ広い空間。そこに敵はいた。たった二人で。後ろから入ってきた仲間たちも意外と感じていた。
「ラスボス? 何を言っている! 」
俺たちが誰で、何のために此処に来たのかはわかっているのだろう。現状打破のためにわからない言葉への質問をするあたり、頭はそれなりに動くらしい。
「悪党の総大将ってことだよ」
仲間たちも鼻で笑う。
「悪党は貴様らだろうが! この悪党どもがっ!! いけ! アマデウスよ! 全員殺せ!!」
急にキレて少女に命令する。少女は結界で男を守り、俺たちに向かって表情ひとつ変えずに飛んできた。ものすごい速さだ。
ドンッ!
強力な魔力の塊を叩きつけてきた。
(これは… 禁呪の、時間魔法の力! やっぱりかよ)
俺の空間と、ケイトの星の力を合わせて防御する。が、それでも後ろに押されてしまった。
「時間だ! 任せろ!」
要件だけを手短に伝える。それを聞いた他の皆は、男の確保のために結界を取り囲んで解除にあたる。
「な、ナメるなよ… 私だって、た、戦える!」
男が呪文を唱えると、地面に魔法陣が現れ、そこから土人形が生えてきて結界の外側に歩いて出る。その時に結界を体に纏っていた。
「まぁ、厄介ね」
「実力はたいしたことないのだが…」
「く… 一気に全部燃やしたい」
時間魔法の結界のせいで意外と苦戦を強いられてしまう。こちらで戦いながらも多数のゴーレムに遠隔で結界を纏わせる。やはり、この少女は強い。俺たち二人がかりで互角だ。いや、魔力の総量なら負けてない。単純に俺らの実力不足だ。時間魔法による減速と加速を巧みに使い分けているうえ、自身にも防御魔法がかけられている。対処しきれず後手後手にまわらされ、なんとか攻撃を加えても無効化されてしまっていた。そのうえ、タイムパラドックスの応用のような破壊魔法に、重ねがけした空間防御魔法もあっという間に削られる。
「ならば三人ではどうだ?」
「シン!?」
強力な電気の球を圧縮した巨大な塊を空間魔法でさらに圧縮した魔法、それを複数、巧みに操作して少女を襲う。
「てか、雷魔法!?」
「見た目と二つ名で勘違いするやつ多いんだよな! ちなみに石化はドーガの魔力な」
さらっととんでもないネタバレをするシン。しかし、その攻撃も時間固定で動きを止められてしまう。
「シン、合わせろ!」
少女ごとシンの雷珠を空間魔法で取り囲む。シンが即座に雷珠を解放すると、空間内が凄まじい電撃で満たされる。
「どうだ?」
!?
少女は雷の速度すらも制御して、人が一人歩ける空間を作りだし、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。雷に触れないようにゆっくりと。俺たちはそれを見守ることしか出来ない。彼女は無事にゴールまで到着してしまうと、結界に手を触れ簡単に解除してしまった。
「まったく素晴らしい力だな。なんで悪党なんてやってるんだか」
微かに少女の表情が揺らいだ。




