第一話-敵地探索-
「流刑島って知ってる?」
「そこにいるのか!?」
何人かが食い気味に叫び、ニゲルはヒィと小さな悲鳴をあげる。
「そ、うじゃなくて、あんな感じの小島が他にもあるんだ。僕の知るかぎり、他に2つ」
「よく知っているな」
「うむ。やる男だと思っていたぞ」
ディールとデフロスが感心する。何故かこの二人は、人見知りでヘタレ気味のニゲルを気に入っているらしい。当のニゲルは困り顔であるが。
「や、やめろよ~ 将来独りで静かに暮らせるとこを探してただけだよ。別に誉められることじゃない…」
そう言って照れるニゲルを、謙虚でいいとさらに誉める二人。そろそろやめなよと止めるケイト。それを眺めて微笑む他の方々。それを見て、なんだかほっこりする。
「どうしたの? 楽しそうじゃん」
ソーマがこっそり話しかけてくる。
「ん? こういうのいいなあって思ってさ。大賢者といえども普通の人間で、それぞれ年も考えも、生まれた場所も全然違うのに、いつの間にか家族のように仲良くなってさ」
「うらやましい?」
「かもな。やっぱりさ、自分は異世界人って一線引いてたんだと思う。全部終わったら、もう少しだけ積極的に人と関わって生きてみようかな」
と、そんなことを話したのだが、その島の捜索は難航していた。シルヴァの風によって魔力を飛ばし、触れた植物と感覚を共有するという感知魔法と、リコリスの光子を飛ばして触れた物を認識解析する感知魔法、ニゲルの影に魔力を通して、影の中の生物の動きと感情を感知する魔法。それらと俺の空間魔法をリンクさせ、世界中に魔力領域を広げる。小島とはいえ、それでも流刑島の1/3の大きさはあるらしい。それだけ大きな物なら見つけるのは難しくはないと思っていた。しかし、時間だけが過ぎていき、ケイトが俺の体力の回復を、他の賢者は魔力供給をしてくれていた。
「クソッ! 何処だ? 何処に潜んでいる!?」
ただ過ぎていく時間に焦っていた。
「魔法式を見せてみろ。省エネに修正出来るかもしれない」
見かねたロゼクスが提案してくる。
「あ、うん。ありがとう…」
言葉をかけられ、一呼吸ついた。そして、ふと思った。
(あぁ… さっき、人と関わって生きるって言ったのに、結局自分だけでなんとかしようとしてたな。自分にしかやれないわけじゃないんだ。頼ってもいいじゃんか)
肩の力が抜ける。頭もすっきりしてきた。
「おい、大丈夫か?」
皆が心配してくれる。なんと心地よく心強いことか。
「大丈夫。てか、ひとつ聞きたいんだけど、ニア、デフロスさん、流刑島の1/3くらいの島、動かせる?」
「たぶん出来る」
「うむ。速度を問わぬなら可能だな」
皆がざわつき出す。そう、島が漂っているのではなく、要塞として動き隠れた可能性、こんな簡単なことに気づかなかった。
「どんな小さなことでもいい。気づいたことをどんどん出していこう!」




