第七話-ニア・カジャ・シン-
ニア隊
ニアとルーはゼモニアへと飛んだ。新たに出来た入口はしっかりと整備され、付近の集落も改修された。高層アパートの案を提出してやったおかげで、住宅不足は少し解消されていた。ニアたちが到着すると、兵士たちが整列し城までの道を作る。どうやらこれは客をもてなすパフォーマンスの一つだったようだ。
「ニア… 似ている… 娘、なのか… ああ、ああああ…」
コルナークは人目も憚らず大泣きした。 「あの… お父さんですですか? お願いがあるんですが…」
「うん… おお、何だ? 何でも言うがいいぞ?」
「とりあえず、泣くのやめて封印解きに行きませんか?」
コルナークはショックで固まり、周囲は爆笑失笑、様々な笑いに包まれた。ルーもご機嫌である。
「文献を調べて、おおよその場所は掴んでいた。城の真上にあたる山がそれだ」
封印が解けると岩が勢いよく崩れ落ち、筋骨粒々の角刈の巨人が出現する。
「そなたが大賢者デフロスか? 私は…」
「黙れクソ王。お前に用はない」
一蹴されるコルナーク。再びショックで固まる。ルーはもはや真顔でスルーだ。
「新女王ニアよ。喜んで力になろう」
カジャ隊
光の欠片も通さぬ永遠の闇。時間の概念も消えたような世界。自分が地面に立っているかもわからなくなる程に感覚を狂わせる。それでも二人はお互いの存在を把握し、真っ直ぐ領域の中心へ向かって歩く。
「おや、空間が歪められましたね?」
「近づく人間を遠ざけるシステムだな。だが、結界のじゃあねーな」
「ですね。これは闇の魔法。封印されてる方はよっぽどの人見知りでしょうか」
カジャが大きく溜め息をする。
「最近、すげえ感じてたんだけどよ、どいつもこいつも俺をナメてるよな?」
怒りがこみ上げ、同時に魔力がどんどん高まる。
「ですねぇ。只の炎に出来るのはその程度。とでも思っているんですかねぇ」
更に上がる。まだまだ上がる。上限が見えない。
「全てぇぇぇ燃え尽きろぉぉぉ!!」
カジャが吠え、正真正銘の全力の炎を放つ。炎の光で闇は切り裂かれ吹き飛ばされ、辺りは焦土と化した。禁呪は禁呪でしか… そんな常識ごと結界も闇も燃やし尽くしてしまった。ロゼクスは落ち着いた顔で自身を氷の結界で守っていた。燃えカスの中から黒蛇が一匹這い出る。カジャが睨むと人の姿になる。
「ひいい! お助け~」
気弱そうな、片目が髪で隠れた青年。賢者ニゲルを確保した。
ロディエル隊
クラルの魔法でルクセリア上空を探索する二人。未だに手掛かりすらも見つけられていなかった。
「クソッ! 任せろと大見得張ってきたが、これだけ飛び回っても何も成果が得られないか」
「そんなに焦らないでください。予想の範囲内で…」
クラルの魔力が不安定になる。ずっと飛び回っていた反動だ。
「よし、焦っても仕方ないな。降りて休もう」
「いえ、まだ…」
「休むぞ!」
シンが押しきって休憩を取る。ちょうど下は草原地帯。寝転んで背伸びをする。
「ん~あ~… ふぅ… いい天気だなぁ…」
「そうですねぇ… のんびり空を見上げるなんて、ほんとに久しぶりですねぇ…」
柔らかな風の草を揺らす音だけが聞こえる。しばし、その音に聞き入る二人。
「そういえば、この星が出来た時ってよ、あの太陽は都合よくそこにあったのか?」
地球のように、人類が生きるのにちょうど良い場所に、ちょうど良い大きさの恒星が、ちょうどよく一つある。たまたまそんな場所に転移したのか? そんな場所を選んで転移する余裕があったのか?
「星が転移させられ、大賢者たちが再構成した。月人類が生きることが出来るように。ならばその時に太陽も!」
「行きましょう!」
二人は太陽へ向かって飛ぶ。正解だった。結界を解呪すると、光輝く鳥が現れ、光が収束して人の形をとっていく。
「よくたどり着いてくれましたね。愛しき我が子たちよ」
金髪ショートの女神はそう言って地上に降り立った。




