第二話-布陣-
「では、ヴォード隊はディール解放へ。ウィンダリア経由でウルカニスへ。
アレク隊はロード解放へ。ウィンダリア、イグナメリス経由で海へ。
ソーマ隊はテンペスト解放へ。ここよりカルネア鉱山へ。
ニア隊はデフロス解放。イグナメリスよりゼモニアへ出発。
カジャ隊はニゲル解放。同じくイグナメリスよりノクスタット領域へ出発。
そして、俺はウィンダリア、イグナメリスと送迎した後にリコリス解放へ、ルクセリアより上空へ飛びます」
一時間前…
「あなたのその魔法。虚数空間?の箱って他人が持ち運ぶことも可能よね? だったら、ケイトちゃんの結界解呪の魔法を中に入れて、それぞれの場所に行けば時間がかなり短縮になるわよ。頼れる人、いるんでしょ?」
シルヴァさんが提案する。たしかに可能だ。頼れる人もいる。むしろ、それぞれ適任な編成が可能な程だ。ただ、カジャたちとはやっぱり繋げにくいなと…
「後回しにすればする程、しんどくなるだけだよ?」
さすが、心が読めるだけある。的確に突いてくる。
「よし! じゃあやります」
覚悟を決めて映像を繋ぐ。カジャが映った。待ち構えていたように玉座で足を組み、こちらを哀れな何かを見るような目で見下していた。
「あ、お、お久しぶりです… でございます…」
迫力に負けてしどろもどろ。我ながら情けない…
「ふぅ…」
呆れた顔で目を背けるカジャ。何を言ったらいいかわからなくなってしまい、暫し沈黙が続く。
「あーカルムくんだー 久しぶりー」
ニアだ。出会った頃のびくびくおどおどはどこへやら、すっかり元気になって… 清涼剤のような安心感だ。
「カジャ様もすごく心配してたんだよ! ちゃんと謝らないとダメだからね!」
おでこに青筋たてるカジャの後ろで、ロゼクスたちの笑う声が聞こえてくる。画面からカジャが消えコルとレガの悲鳴が聞こえる。俺は何を悩んでいたのだろう。自分の浅はかな考えに呆れるばかりだ。
「それで、そちらがどうなったのか、お聞かせしていただきましょうか」
ロゼクスが現れ玉座に座る。すかさずルーが何処に座っているんだと蹴り飛ばしケンカになる。やっと話が出来ると思ったのに… やれやれだ。
「みんなごめん! とにかく話をしよう!」
俺は頭を下げて叫んでいた。皆が映像に映るように集まり座る。
何を考えて旅立ったのか、ゼモニアでの事、ウィンダリアでの出来事、八賢者シルヴァの解放、天界統一、そして今後の方針を。
「星の寿命は不明。そこまで急がなくても大丈夫とは聞いています。しかし、寿命以上の不安要素が確認されました。敵意を持った何かがいます。それの能力次第では…」
それ以上の表現は出来なかった。目的も存在もはっきりしないのだから。
「んじゃ、邪魔される前に、誰が何処に行くかさっさと決めないとだな。てか、もう決まってんのか?」
カジャが言う。この人は豪快だが軽率ではない。ちゃんと考えた上での余裕なのだ。だからこそ、この作戦は順調に進んでいる。敵意ある何かへの対処も大丈夫だ。そういう自信を与えてくれる。
「では、布陣をお伝えします」




