第一話-新国家始動-
新国家誕生。代表者たちは、慌ただしくそれぞれの仕事に戻った。国を統一するということは、今まで違っていてよかったことも統一していかなくてはならない。法や物価や賃金や土地建物関係も… 政治家たちの手腕が試される時である。しかし、先程までの不安な表情はどこへやら、ほとんどの人は、希望に満ちたやる気満々な顔で走っていく。相手を貶めるための政治ではなく、平和で住み良い国を作るための政治、彼らが本当にやりたかったことなのだろう。これなら大丈夫だ。
(さて、俺は俺の仕事をするか…)
城の裏手、目を凝らすと夕闇に紛れて動く人影がいくつか確認することが出来た。
「マディラが失脚するとは…」
「すんなり話が決まるとは、やはり救世主の存在…」
「今までの苦労が… いったいいくら…」
「救世主とは言え寝込みを…」
マディラに与して悪事を働いていた連中だ。先程の『ほとんど』に含まれない連中。ロディエル側の人間もいる。表では国が対立関係にあっても悪党の間には関係ないらしい。むしろ好都合だったわけだ。
「やあ、皆さんお揃いで。マディラ氏の協力者とは連絡は取れましたか?」
にこやかに声をかけるも、反応はイマイチ。どうやら何も知らない下っ端だ。そもそもマディラ以外は知らない可能性もある。また黒幕への道が消えた。掃除を済ませ、会場へ再び戻った。
「おう! 戻ったか! ずいぶん化けたもんだな。見違えたぜ」
シン王が笑顔で寄ってきた。
「あの時はマジで殺してやろうって思ったからな。我慢してよかったよかった。まぁ、そもそもお前がいなきゃって感じなんだけどな」
そう言って笑う。耳が痛い。
「冗談だ。そう落ち込むな。あのままやってても、うまく行った保証はない。今、こうして上手くまとまったことが大事なんだよ」
そう言って、拳を俺の胸にドンと当てる。ありがたい言葉だ。心底救われる。
「それより、いろいろ動いてたらしいな。俺にも話を聞かせろ。あいつはどうしてる?」
シン王が腕を肩にわましいろいろ聞いてくる。天界にも封印がある以上、王が手伝ってくれるのは非常に助かる。新たなメンバーを加え、引き続き王の間にて今後の方針を決める会議の開催となった。
「お疲れ様。無事に終わったみたいね」
シルヴァさんと映像を繋ぎ進展を報告する。
「はい。ケイトも、まぁ無事ですね。これをやったヤツは操られてました。敵の目的も姿もはっきりしないですね」
「国の乗っ取り… にしては理に敵わなすぎだね。外にお金が動いた形跡もないみたいだよ」
「考えても仕方ないわね。それは一先ず置いといて、こっちを優先しましょ」
「そうですね。直ぐに戻って順番を…」
「あ、戻らなくて大丈夫だし、決めるのは順番じゃないわよ?」
「え? それはどういう…」




