第七話-希望の目覚め-
ガラッ
瓦礫の一部が崩れる。マディラはまだ生きていたのだ。今度は俺の魔法も問題なく通る。箱に封じて、今度は俺たちが尋問する番である。
「簡潔に聞くぞ。協力者は誰だ?」
禁呪を使ったこと、外界に情報を流せたこと、逆に外界の情報もタイムリーに知っていたこと、そしてこの新技術。凡庸な政治屋が急に思い付いて出来ることではない。ましてや、ひとつではなくその全てなど到底不可能だ。
「き、きき、救世主よよ、おぁ… そのあ、悪人どども… どもをお… 何をももたもたたた…」
へし折れて、あらぬ方向に曲がった腕を無理矢理に伸ばし命令し続けている。いや、もはや命令ではない。ただただ同じ言葉を繰り返させられている。
「こいつ自身も洗脳されていたってことか」
「いえ。会議等での立ち振舞いは、洗脳された人間のそれではありませんでした。おそらくは、何かを引き金として精神が壊れるようにしてあったのかと」
だとしたら惜しいことをした。黒幕の存在に近づくチャンスの逃したのだ。
「こっちだ。気をつけろ!」
「残りの部隊は生存者の確認と瓦礫撤去だ。急げ!」
外が騒がしくなる。なにしろ施設が半分すっ飛んだのだ。騒ぎにならない方がおかしい。
「さてと… ケイト、寝起き早々に申し訳ないんだけど、一仕事お願い出来るかな?」
ケイトが察してコクりと頷く。
「いたぞ! 救世主だ! 目覚めているぞ! フィデス様と… 指名手配中のカルムもいるぞ!?」
やはり俺の存在でパニックになる。一部隊どころか、結局全部隊来たのではないか? まぁ、この際だ。まとめて来た方が後々都合がいい。
「フィデス様、ここで何をしているのです!? 何故に救世主様が目覚めて? マディラ様は? どうしてカルムと一緒にいるのですか!?」
なんとなく見た顔だ。ここの総隊長的な人物だろうか。その言葉に答えるように、俺たちはケイトを中心にして囲み、ケイトに対して膝をつく。
「皆さん、ご無事でなによりです。悪逆マディラは、この者たちの尽力のおかげで討伐出来ました。マディラは私を、救世主を洗脳し、私的兵器として使い私利私欲のための世界征服を目論んでいました」
美しい大人の姿。救世主というネームバリュー。説得力がある。兵士たちがざわつくが、嘘つきを見る目ではない。
「し、しかし、そこのカルムはドーガ王を…」
「あれもマディラの策略です。事後の動き、あまりにも手際が良すぎたとは思いませんでしたか?」
全てを近くで見てきただろう総隊長。確かにそうだったという顔になる。それを見た部下たちも、やはりそうなのかと救世主の発言に納得していく。あれは事故でありマディラが知るはずもなかった。彼の悪知恵と対応力が凄かっただけなのだが、他人には怪しく見てたようだ。
「さあ、もう同士たちが傷つく姿は見たくありません。ロディエル領の方々と同盟を結び、天界が一つになることを私は望みます」
この話はゼフィス領に瞬く間に広がった。救世主を国の代表に会談が行われる。配下に加わるのではない。同盟になる。戦争は起きない。話に尾びれも付いているようだが、皆、喜んでいるようだ。やはり平和が一番なのである。




