第二話-世界樹解放-
翌日昼、リドル村、村長宅
「おかえり。いろいろ大変だったようだな」
「はい、ご心配と、ご迷惑おかけしました」
深く頭を下げて謝罪する。そんな俺を、そして皆を優しく招き入れてくれた。
「なるほどな。世界樹にそんな秘密が… 遥か先祖の墓だったらしい、と昔じい様から聞いた事があったくらいだったよ」
「やっぱり先祖なのかな。ちょっと楽しみになってきたよ」
「だけど、封印ってのがわかんないよな。それっぽい感じあったか?」
「なんとなく強い魔力を持った木だとは思っていたけど…」
「禁呪で封印されてんなら禁呪の使い手じゃねーとわかんねーとか?」
「やはり行って見ないことにはわからんようだな。現地に着いたらサピエナ殿にも御意見頂こう」
昼食を取りながらの作戦会議… というより、後半は完全な雑談になってしまった。楽しい時間はあっという間だ。しかし、すっかり気が緩んだかと思ったが、皆、死線をくぐった戦士だ。森に一歩入れば顔つきが一瞬で変わり空気が張りつめる。
(俺は、まだまだだなぁ… アレクも意外とやるねぇ)
ケイトと同年代だが、親の教えか中身はそこらの大人よりもしっかりしている。というか、この年齢で命をかけたり、機械の体になっても受け入れ、つらいはずのリハビリもこなして、短期間で王国中隊長クラスの戦闘能力まで達したのは狂気すら感じる。
「どした?」
「いや、頼りにしてるよ」
これもまた本心である。
「なるほどだわ。禁呪には禁呪だわ…」
この力を得て、あらためて世界樹の前に立つと、禁呪による結界が張られているのがはっきりとわかった。魔法陣の中央に世界樹が聳え立つ形である。そして、魔法陣から伸びた呪文が、光る鎖のように幹から枝葉に至るまで絡み付いている。
「内側からも外側からも干渉出来ないようになっているんだな。結界を維持する魔力は森から得ている。森を守るって、そういうことだったんだな」
状況を理解出来たのでサピエナ様と映像を繋ぐ。現代の大賢者とはいえ、やはり禁呪の使い手ではないので結界は見えないらしく、すごく悔しそうだった。
「では、試してみます」
魔力を込めた手で結界に触れる。
バチッ!!
強力な力で弾かれる。
「大丈夫か!?」
心配する皆に大丈夫と伝える。結界の文字と、今の接触から仕組みは理解した。大図書館から得た知識も脳に染み込んできているようで、魔法に対する理解力が凄まじく向上しているのを実感する。
「では、いただきます」
両手を合わせて念じ、再び結界に触れる。そして、結界を構成している魔力を分解して吸収する。いや、なかなか吸収しきれない。膨大な魔力だ。
(この量の代わりなんてカジャでも無理だろ!?)
今まで出会った中でも最強クラスの魔力を持つカジャ王も遥かに凌ぐほど。俺自身の体がヤバそうだったので、途中で吸収しきれない魔力を解き放つことになった。勿体ないが命のが大事だ。結局、半分も吸収出来なかった。が、それは問題ではない。
結界が消えたあとの世界樹。何も変化がない。
間違いか? 失敗か? そう思って溜め息がちらほら出ると…
バリバリバリバリ…
根元の辺りが割れて、洞が出来ていく。その中には人の姿が見えた。音が止むと、中の人が目覚め、外に出てくる。
「う、う~ん…」
思い切り背伸びをする。そして、体を左右にひねる。軽く体操をしているようだ。光を浴びて翡翠のように輝く髪。腰まで伸びたその美しい髪が体と共に左右に揺れる。白いワンピースのような服を纏っていて、まるで、どこぞのヒロインのような風貌だ。いや、年齢は少し上か?
「心、少し読めますよ?」
俺を見てニコリと笑う。背筋が凍りついた。




