第八話-知識吸収-
王立魔法図書館。市販されている簡易魔法書から、持ち出し禁止どころか、内容も外で話すことが罪になるほどの禁書まである。正確な数量は今年度分はカウント中らしいが、去年で12万冊を越えていたそうだ。
「で、何が希望だ? やはり禁書か?」
魔法長サピエナ様だ。先代の王の頃には既に魔法長に在していた人で、近代魔法学の権威としても名高い。長くて白い髪と髭。そして白く輝くローブと学帽。まさに賢者という言葉がしっくりくる。
「はい、それもなんですが、歴史書とかも隅々まで確認したいですね。どこにヒントが転がっているかわからないですから」
「歴史書は古代史だけでも相当な量だぞ? 同じような内容の物は省くのか?」
「いえ、細かい違いの中にこそ何かあるかもしれませんから…」
「やれやれ、何年かかることか…」
ここに出入りするには魔法長か副王以上の許可と同伴が必要だ。仕事が多いサピエナ様は必要なこととは思っているが、困っておられるようだ。
とりあえず近くにあった書物を手に取り、空間魔法の箱の中に浮かべる。頁がひとりでにめくれていき、数秒で最後の頁が綴じられる。
「いけそうだ。大丈夫です。二時間で終わらせます」
そう言って『箱』をいくつも出現させる。そして、分類ごとに分けられた本棚に合わせた大きさに調整して、本棚ごと本を取り込む。
「何をしているんだ?」
「本の頁を画像として記憶します。それをデータ化して管理し、いつでも必要な情報を検索して取り出せるようにします」
「この図書館をまるごと取り込むのか!? 私でも全ては頭に入りきっていないぞ? 大丈夫なのか?」
「データ自体は箱の中なので脳に負担は無いです。そのままだと不便なので、少しずつ知識を脳に入れてはいきますが」
後ろで、興味本位でついてきたソーマたちが、会話の内容のエグさにドン引きしていた。
「これの内容、ほとんど頭にあるって? 逆にアホかよ…」
「すみません。思ったより時間がかかりました」
三時間後、全ての作業を終えることが出来た。知識の保管と記憶化もうまくいきそうだ。
「何か進展はありそうか?」
「はい。八人の賢者の所在、なんとなくですがわかりましたよ」
一同が身を乗り出す。
「ほんとか?」
「封印場所ってことだよな?」
「名前と伝承の姿は把握してたが、やるのぉ」
「魔界の王オフェロニス様の知識と、地球の知識も合わせての解読なので」
ちょっと謙遜はしたが、やはり嬉しいものだ。それから俺たちは王の間に戻り、今後の方針を取り決めた。




