第五話-帰郷-
俺を捕まえる… やはりそういうことになっていたようだ。天界の王殺しの共犯者。そして魔界の二国を滅ぼした怪物。そう見られて不思議はない。(しかし、噂があったとはどういうことだ? 上との交流は無かったはず。下の情報なんて更に入手が困難だろうに… 誰かが噂を流す? 何のために? 上にも下にも詳しい人物が? 俺に動かれると困る?)
いろんなことが頭を駆け巡る。しかし、答えなど出るわけもなく、呼吸荒く立ち尽くしてしまった。
「確認なんだが」
何も言わない俺にしびれを切らしたのか、アグラス様が語りかけてくる。
「お前、何しに此処に来た?」
下手な言い訳を並べても無意味だろう。それどころか逆効果になる。この人は尋問官としても優秀なのだ。
「これまでの経緯を説明に。そして、世界同盟を結ぶための先駆けとして」
簡潔に答える。そして、小声でひとつ付け加えた。
「あの後の事の確認に…」と
「世界同盟とは大きく出たな! だが、ここは通せんよ。お前さんのことは既に国中が知っている。俺の一存では不可能だ。たとえ王であっても独断でやってしまえば立場が危うい。わかるな?」
たしかに。国際指名手配犯を招き入れてしまっては、王の人格が問われるし、諸外国からも非難轟々だろう。国内に入らずに王と連絡を取る方法…
(たぶん、ストックひとつでイケるかな…)
「ひとつ確認したい。王は現在御手隙か?」
俺が訪ねると、怪訝な顔をする。
「いや、お前さんの動き次第では指示を出さねばならんからな。玉座で動向を伺っておられるよ。だからと言って、ここは通さんし此処に来られることもない。さっきも言った通りだ」
なるほど。状況は理解した。それならば好都合。
「大丈夫です。俺もここからは動かないんで。ちょっと連絡取らせていただきますね」
両手を広げて、その上に1m×1mの平面を作る。さらに魔力を込めると、それに王の間が映った。会話をしながら、自身の魔力を王の間まで伸ばしていた。そして、その魔力を用いてそこの空間とこちらの空間を繋げたのだ。空間を直結させて通り抜けることも可能かもしれないが、それは得策ではないし、ただでさえ魔力の気配を消しながら長距離伸ばすという作業でかなり消費している。これ以上は体力的にヤバい。
「お久しぶりです。ガルド王。只今戻りました」
突然に目の前に広がった外の映像に、さすがの王も驚きを隠せない。しかし、すぐに落ち着いて現状確認をする。
「うむ、久しいな。もう聞いたと思うが、お前、世界中で指名手配されとるぞ? 何か言い訳はあるか?」
自身の優位は崩さずに、弁明する機会を与えてくれる。やっぱり優しさと厳しさを兼ね備えてた信頼出来る王様だ。中層はなんとしてもこの人にまとめてほしい。そんなことを思いながら、俺は、あの爆発の後からの出来事を王に、そして周りにいる兵士たちに語ったのだった。




