第二話-堅牢なる岩窟ゼモニア-
「お?」
大陸の側面を20分ほど飛んだあたりで、岩盤の薄い部分を発見する。中の状況は見えないが、閉鎖環境下なら人口が増加する可能性が高いのでは?と思ったのだ。人口が増えれば土地が必要になる。岩窟の王国ならば、土地が必要になれば岩盤を削るしかない。国の目を盗んで勝手に大規模に削るやつもいるだろう。
「予想的中、かな」
四角い穴が空き、中への道が出来る。
予想的中。そこは貧民街のような場所で、ボロ家とボロを着た人で溢れていた。人々がこちらに気づき驚いて見ている。少しずつ騒がしくなってくる。
(さて、どうするかな? 待ち伏せされていると思ってたんだけどな… っと、言ってる間に)
人混みを掻き分けてくる団体。この国の兵士のようだが、装備が一世代以上前の旧型に見える。ウィンダリアの人が見たら貧乏自警団かと見間違えるだろう。
兵士たちに罵声を浴びせる人もいるが、意に介せず俺の回りを取り囲む。
「何者だ。簡潔に答えよ」
隊長格らしき兵士が問う。いや、だいぶ年配に見える。こういう国なら年功序列でけっこう上の役職かもしれない。ならば王の過去の脱走と、島での事も知っているだろうか。
「流刑島から来た」
俺は簡潔にそう答えた。老兵士が眉をひそめる。しかし、付いてこいと一言言うと、連行するわけでもなく城へと向かう。他の兵士たちが野次馬を抑えて道を作る。俺も事を荒立てるつもりはないので、おとなしく付いていく。少し歩くと、大きな籠があった。立ち止まって見ていると、後ろから付いて来ていた道を作っていた兵士たちが、俺の横を通り次々と乗り込むので、たじろいでしまった。
「早く乗れ」
老兵士は、感情を出さずに淡々と一方的に話す。話し終わると顔を背けてしまう。会話は難しいようだ。というよりも『ここでは話せない』という合図にも見える。他の人間には聞かせたくないのだろうか。ならば、こちらもそれに合わせてやれば、この後あるだろう会談もスムーズにいくかもしれない。
籠が音もなく動き出す。土の魔法で地面を走る。
(いや、これは磁力で浮いている!? 金属性魔法でもレアな磁力制御か。地球でもリニアの実装はなかったのにな…)
ただの籠がリニアモーターカー、というギャップに驚きと残念が混ざり合い、複雑な感情になる。街中は道路の真ん中を走るので、時速で20~30kmくらいだろうか。街の中心へ行くにつれ、建物も立派になり人々の身なりも清潔になっていく。やはりそんなもんだろう。時折見える、岩をくり貫いて作った昔ながらの建造物は珍しかった。開国すれば、いい観光資源になるだろう。
城へは三十分ほどかかった。逆に言うと、城からあの場所へも同様にかかる。やはり最初から俺に気づいていたのだろう。
城に到着すると、兵士が颯爽と降りて道を作る。こちらへどうぞ、というよりは、余所見しないで真っ直ぐ歩け、に思える。老兵士の後ろに付かず離れずキョロキョロせずに付いていく。
「王の間だ。くれぐれも粗相の無いように」
そう言って先に入る。兵士たちは入る様子はない。あとに続き中へと入った。




