第四話-実験-
「で、俺の炎を借りたいってわけか」
「はい。お願い出来ますか?」
実験の進捗状況を説明する。ルーはカジャにべったり。当のカジャはしかめっ面である。ニアはロゼクスとの会話に夢中だ。先日の適正検査で、全属性が使えるというぶっ壊れ性能が判明したニア、ロゼクスとの魔法談議が面白くてしょうがないようだ。少しさみしい気がする。
「いいぜ。面白そうだ。俺も見てみたいからな」
乗り気で参加してくれることになった。ルーの腕を振りほどいて、さっさとやるぞと外へ出る。いつも素っ気ない態度をとっているけど、嫌いではないっぽいんだよなぁ。外堀埋めてあげないとダメなやつか?
などと思っていると、急に振り返って睨まれた。心が読めるわけではないが、なんとなく感じるらしい。
「すっごい目が泳いでて面白かったよ」
と、あとからニアにからかわれた。
「では、お願いします!」
両手を開き、その上に虚数空間の立方体を創り、カジャの方に向ける。
「よーし。んじゃ、軽くいくぞー」
ボゴオォォー!!
軽くとは言え、炎系最強クラスの使い手。その威力たるや、失敗すれば俺は消し炭だろう。緊張が走る。
「そらよっ!」
凄まじい勢いの炎が向かってくる。そして
バォン!!
立方体は炎が触れた場所から一瞬に取り込む。そして、掌の上で箱の中は真っ赤に輝いている。
「成功、ですかね…?」
「まだ成功ではないよ。それをちゃんと出せるかが問題だからね」
ロゼクスの言うとおりだ。次はルーがゴーレム数体を作り、それを的に炎を解放する。カジャの出したものと同様の炎が排出され、ゴーレムたちは一瞬で燃え尽きた。
「今度こそ成功だ! っと…」
一瞬くらっと立ち眩みがする。課題は多いが、実験は成功。実戦でも十分に戦える武器になることがわかった。いや、俺の想像どおりなら、思い描くとおりの使い方が出来れば…
「あの、モルスメトスは6国が対立してる大陸って聞いてたんですけど、そのうち4国はここで同盟状態で、残りの2つはどういう国なんですか?」
気になっていたことを聞く。すると、とたんに魔王たちが不機嫌になる。
「あぁ、あれな」
「クソよ、あれは」
「クソですね」
ロゼクスまでもがこんな感じだ。相当たちの悪い国らしい。口に出すのも忌々しいとばかりに、カジャがロゼクスに説明してやれと投げる。いやいやながらもロゼクスが口を開く。
「ひとつはファルサクルナ、自分たちを神の直系と疑わない誇大妄想のアホどもです。もうひとつはミセラモリシア、奴隷とネクロマンサーしかいない腐臭が酷い国です」




