第三話-進捗状況-
「カルムくん、もっとちゃんとしないとダメだよ!」
「まったく、カジャに言われて仕方なく来たけど、後生感謝し続けなさい!」
俺たちはニアとルーベロッサ様に叱られ続けている。ロゼクスは一生の不覚と気落ちが半端ない。今日はこのまま休みにした方がよさそうだ。
「ほんとにありがとう。そっちはどうなっているんだい?」
「私はルー様のところで修行中なの。魔法の上手な使い方の他にも、こっちのお料理とかいろいろ♪」
一週間ほど会っていなかったが、印象が大分変わっている。笑顔が増えてなによりだ。
「あとね、ルー様が王女になったんだよ! 継承式典、すごかったんだよ~ あとね、コルとレガが正式にカジャ様の家来になったの。面白いし、扱いやすいから側近にする、だって」
こちらが死にかけている間に、あちらもいろいろ進んでいたようだ。ルー様は条件付きでの王位継承らしいが、そこは秘密とのことでニアにも教えてくれないらしい。楽しそうに状況報告してくれるニアが微笑ましい。
「えと…、父親の情報はどう? 進展あった?」
せっかくの笑顔が消えるかもと思ったが、彼女がここに来た目的だ。やはり気になる。
「うん… もしかしたら、な人はいるみたい。ただ、その国は鎖国状態で、まず入国が困難みたいなの」
なるべく心配させまいとしてなのか、その顔は今までのような不安いっぱいではなく、ちょっと困った感じのハニカミ混じりだ。成長、してるなぁ
堅牢なる岩窟と呼ばれる国ゼモニア。現王は過去に放浪癖があり、国外逃亡していたと噂がある。そして、代々土魔法の使い手の家系にも関わらず、風の使い手として、名が知られていた。王位を継承してからは岩窟の入口を閉ざし完全に外部との接触を断ってしまっていた。ほぼ間違いない感じだが、会うことは現時点ではかなり難しいようだ。しかし、鎖国の理由が気になるところ。
「あんたらはどうなの? 少しは使えるようになった?」
ルー様が空気を読んでか読まないでか、話を変える。
「それなりに、ですね。効果の確認の進みが悪い。私が継承するにあたって、反発する者が大量に出て、それらで人体実験する予定だったので」
そう答えるロゼクス。人格者と思ったが、それなりに危ない部分はお持ちのようでいらっしゃる。まぁ、それに全面的に同意な俺も、それなりにヤバいんだろうが。
「なら、進捗をカジャに報告に行きなさいな。その辺、なんとかしてくれるかもだし。あたしも行きたいし、着いてくから」
と半ば強引にイグナメリスへ戻ることになった。




