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ワールドリンク  作者: さばみそ
第一章-守人の村リドル-
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第四話-追っ手-

「追っ手だ!」


その言葉が言い終わらないうちに、それはやって来た。空から枝葉を折りながら、背中に生えた翼を広げ、アリシアに向かって短剣で斬りかかってきたのだ。アリシアは槍を短く持ち、刃先で受け止める。一瞬の攻防。へし折られた枝葉が辺りに散らばる。逃げるどころではない。拮抗した鍔ぜり合いの最中、追っ手が叫ぶ。


「やーっと見つけたぜアリシアッ! 今度こそ仕留めてやるぜー!!」


有翼人種。上層に住まう少数民族で、戦闘能力が高いうえに飛行能力を持つと書物で見たことがあるが…

(初めて見たな有翼人種… なんか… テンション高いってか、アタマ悪そうな…?)


ソーマと二人、いろんな意味で驚き戸惑っていると、追っ手さんもこちらに気づいたようだ。


「何? もしかして、もう救世主見つけた? マジ? え~ん~いいや、とりあえず全員倒すっ!!」


短髪赤毛、金の大きな瞳で鎖帷子っぽいものに肩当てと胸当て、見た目は実に健康的な美少女といったところか。しかし、こちらは全く会話にならない系のようだ。呆気に取られているとアリシアが真顔で叫ぶ。


「ここは任せろ! 君達では敵わん!」


鍔ぜり合いを長引かせ、逃げる時間を稼いでいるようだ。しかし、そうはさせないと追っ手さんは蹴りを放ち距離を取る。


「くっ…」


怪我は軽くはない。判断が一瞬遅れ鳩尾みぞおちに食らったようだ。


「逃がさないよ~ やっと父様が天界統一に動いたんだ。止めさせないからね~」


どうやら戦争は本当らしい。この追っ手さん、うまくすれば全部喋ってくれるのでは? とソーマと顔を見合わせる。瞬間、追っ手さんが斬りかかってくる。


「うおっ!?」


アタマはともかく、かなりの実力者ではあるようだ。咄嗟に防いだが、こちらは木製。一撃で真っ二つ。短剣でなければ首も一緒に持っていかれていた。


「なんかご相談中だった? でも~続きはあの世でお願い… ねっ!」


今度は短剣を逆手に持ち脳天目掛けて突き下ろす。ヤバい! と思った瞬間「ぎゃっ!?」という叫びとともに辺りを熱が包む。アリシアが炎熱魔法を飛ばしてくれたようだ。だが、咄嗟だったのか威力は極小。びっくりさせて動きを止められた程度、といった感じか。すぐさま体制を立て直す。

一方、弾けた火の粉が馬を繋いでいた綱を焼き、熱にあてられた馬たちが荷物を落としながら逃げていく。


「この~! どうせみんな死ぬんだから大人しく待ってろよ死に損ない!!」


馬のいななきにイラついたのか、さらに声を荒げる。言ってることは物騒だが、なんというか残念だ。


「父様が王様になったら、今まで散々邪魔してきたゼフィスの連中は皆処分だからなっ!」


仁王立ちでアリシアに向かって力いっぱい叫ぶ。

そして、斬りかかりながら叫び続ける。


「クソな下層の連中もっ!どっち付かずの中層の連中もっ! まとめて消してやんだからなっ!」


怪我の影響か、徐々に圧されていく。が、こちらとしてはこの状況への焦りよりも、彼女の言い分に段々腹が立ってきた。幸い延焼はなかったが、森で火を飛ばしたアリシアにも若干イラつく。


「ふざけるな! 私の命に換えてもっ! お前はここで倒すっ!」


互いの武器がぶつかり合い、そして後ろに飛び退き再び間合いを取る。睨み合いながら徐々に間合いを詰め、一撃必殺を打ち込むべく呼吸を整える。


「「これで終わりだぁーっ!!」」


ガキンッ!!


鋼の双剣が二人の武器を止める。先ほど馬が落とした荷物に、有事のためにと常に持ち歩いている愛刀があったのだ。それを拾ってソーマが割って入ったのだ。驚きを隠せない二人の女戦士たち。だが、それだけでは終わらない。


「おっらー!!」


今度は俺が追っ手さんに鉄杖で殴りかかる。なんだと!?と言いながら飛び退く彼女を、回転しながら追撃する。遠心力が加わり、攻撃を防いだ彼女を吹き飛ばす。そこへさらにソーマが無言のしかめっ面で流れるように斬撃を重ねていく。


「お前ら、命を粗末にし過ぎ。他人のも、自分のも。あとな、俺らナメす…ぎっ!!」


いい加減に堪忍袋の緒が切れた俺は口元を歪めながらそう言いつつ、ソーマと逆方向から回転しつつ打撃を合わせる。


ガキンッ!!


二人の武器がぶつかり合い衝撃音を放つ。


「!?」


消えた? 姿を見失い、動きが止まる。


「上だ!」


アリシアの言葉で上を向くと、追っ手さんは空を飛んでいた。あの翼は飾りではないらしい。空を飛ぶ敵、どう対処しようかと思うや、またもテンション高めに彼女が叫ぶ。


「くっそ~ さすがは救世主サマじゃないのっ!! どっちかわかんないけど。ここは一旦引かせてもらうけど、次は必ず仕留めるからねっ! 」


そして、言うだけ言って飛びさって行ってしまった…

(ほんとに追っ手なのか?)

彼女のあまりにも残念な言動に、疑問が溢れるのだった。逃げる時にぶつかって落としたのだろう枝葉がまた落ちてきた。葉っぱが背中に入ってビクッとなった俺を見て、二人が笑う。やっと落ち着けるようだ。

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