第六話-異形の王-
魔王、魔王の娘、盗賊、そして地球人。混乱する俺たちにロゼクス王子が簡単に現状説明をする。
「なるほどね。上の使いで来たのに、何も知らないってことね。そんで、巻き込まれた事情すら知らない子達」
まったく持ってその通りと、うんうん頷くコルとレガ。ちょっと違うけど、まぁいいかとニア。
「じゃあ、爺さんとこ連れてくのが手っ取り早いんじゃない?」
「俺もそう思っていた。説明が長くなる。めんどくさい」
「爺さんというのは、また別の国の王で、おそらくこの星で一番の長命の人物です。記憶に作用するレアな魔法を持っていて、知識の共有はお手の物なんですよ」
王子がまた説明してくれる。非常に助かる。あちらの二人は、同じことを考えていたなんてやっぱり気が合うとか、うるさい帰れとか、こちらを無視して騒いでいる…
「んじゃ、さっさと移動すっか」
無視かと思いきや、しっかり状況は見ていたようで、説明が終わると直ぐに移動の準備に入る。
というか…
「よし、ちゃんと円の中に入っていろよ」
これは…
「転送魔法の魔法陣です。円の外にはみ出たら、その部分が消し飛びますよ?」
とロゼクス王子がニヤリとする。
「転送魔法って禁呪でしたよね? 王様も使えるんですか?」
とニアが聞く。同じ魔族で角をあまり気にしなくていいからなのか、比較的会話をしやすそうだ。
「自由に使えるわけじゃあない。装置を応用して、いろんな場所で使えるようにしてるだけだ。発動するぞ。黙っとけ」
カジャ王が言う。一同静かに見守る。そして…
一瞬で目の前の景色が変わった。遺跡のとは違い、まさに瞬間移動だった。そして、目の前には異形がいた。
「オフェロニス様、ご無沙汰しております」
王たちが片膝を着いて畏まる。俺たちも目の前の存在に畏怖し冷や汗をかきつつ、続けてそれを真似する。
「ほほほ。お前たちは、ほんとうに何時も唐突じゃのぉ」
頭上から声がする。そこには巨体な頭があった。特に大きな頭頂部は、あちこちから支えられている。そして、俺たちの目の前の王座には、その頭部から生えているかのように老人の体があった。いや、その体はさらに老化が進みシワ垂れた皮膚は象のように変色、硬質化していて、およそ人間と呼べる状態ではなかった。
「お見苦しいモノをお見せして、申し訳ありませんな。地球のお方」
まただ。この人も地球を知っている。俺がそうだと区別出来るほどに。そのことへの驚きが強く、異形への畏怖は薄れていく。
「さて、説明は言葉よりこちらの方がよかろうて。元々、そのつもりできたのじゃろ?」
「理解が早くて助かるぜ。頼むよ爺さん」
「ほほ。いよいよ全て見せる時が来たようだ。では… ふん!」
オフェロニス王が気合いを入れると、部屋全体を覆うような立体型の魔法陣が展開した。そして、俺たちは身動きが取れなくなり、意識が遠ざかる。




