第五話-驚天動地-
「あの、上の戦いに参戦するつもりですか? 具体的にはどうするんです?」
おそらくここにも転送装置はあるだろう。それを使って上に飛ぶのかもしれない。ならば、俺も行きたい。行かねばならない。
「そうだな。もちろん上に行って暴れるつもりだぜ。お前、一緒に来るつもりだろうが、それは無理だな」
「何故!?」
「お仲間の救世主は向こう側だ。敵になるかもしれないヤツを、わざわざ連れていくなんてしねーよ」
もっともな意見だ。ケイトを人質にされたら、たしかに俺は向こうについてしまうかもしれない。保証は出来ない。
「クソッ!俺がもっと強ければ…」
思わず口に出す。その言葉を聞いて王たちが不思議そうな顔をする。
「お前、まさか魔法が使えないのか?」
俺が頷くと、魔王たちは顔を見合せる。何かに気づいたようだが…
「君、もしかして地球人かい?」
「魔法は、まだ使えねー、で間違いないんだな?」
!?
いったい何を言ってるんだ? 地球人という言葉が出てくるとは微塵も思っていなかった。それに「まだ」だと? ということは、俺も使える可能性があるのか? いったいどういうことかと詰め寄ると、カジャ王に蹴り落とされてしまった。そして、転がっている俺に向かって続けて話す。
「地球人はナノマシンに鍵がかけられてちまってるからな。魔法は使えないで当然だ」
「魔法とは、血液中に存在するナノマシンに魔力を注ぎ込むことで発動する事象のこと。ナノマシンごとに発動する魔法は異なります。そして、地球の人々も同じくナノマシンは保有しているんですが、諸事情で使えなくさせられているんですよ」
ナノマシン!? それに地球人には鍵って何だ? ここは、この世界はいったい?
バーンッ!!「カジャーいるー?」
突然、叫び声とともに勢いよく扉が開く。赤髪の、いや頭頂部に黒が目立ってきているところを見ると、赤く染めているのか? ボリュームあるロングヘアーの… ボンデージを彷彿とさせる過激な服装の女性である。おそらく、さっき話に出た三人目の幼なじみだろう。
「ちょっと、何よこいつら。禁呪の匂いのする男と、ヤバい魔力の女。てか、美人じゃん。何よ!浮気!?」
「浮気も何も、お前とはそーゆー関係じゃない!」
勢いよく話し続ける女性と、呆れてぞんざいに扱うカジャ。完全に話の腰を折られ、呆然とする俺たちにロゼクスが声をかける。
「あれが三人目の幼なじみで、自称カジャの許嫁。名はルーベロッサ。そして、私たち三人が、この大陸の事実上の支配者、ですね」




