第四話-獄炎の魔人-
下層の大半を占める超大陸モルスメトス。そこには6つの国があり、それぞれ牽制し合っている。そのうち一番勢力の大きな国がイグナメリスである。どれほどの王が治めているのか、緊張に押し潰されそうになりながらも、王の間へと通される。
「よぉ。シンの使いっパシりらしいな。で、要件は何だ?」
目の前の絢爛豪華な玉座に腰掛け、肘掛けに肘をついて頬に手を当て、足を組んでこちらを見下ろす王。ツーブロックの赤黒い髪、緋色の瞳で、その尊大な態度に反比例するかのように小柄だ。身長はケイトと同じくらいだろうか。しかし、強大な魔力は、隠す様子もなく外に溢れ出ており、城内の温度を数度上げている。日照時間の少ない下層は上より温度が低めなので、これは助かる。もしかすると、わざとやっているのだろうか。
「上層はロディエル領の領主、シン・ロディエル候より書状を預かって参りました」
カジャとは逆に、すらりと背の高い黒い長髪の男が書状を取り、カジャ王へと渡す。この男も強い魔力を感じる。
(ただの側近でこれだと、かなりの国力じゃないか?)
冷や汗が出る。カジャ王は、こちらのことは気にも留めず、体制そのままに書状を受け取り、片手でざっと眺めた。
「おい、ロゼクス。始めるってよ」
と隣の男に嬉しそうに話しかける。
「そうか。カジャ、お前はどうするんだい?」
男が返す。タメ口?側近ではないのか?それともそういう感じの風潮なのか? 俺たちが混乱していると、カジャ王が少しめんどくさそうに説明する。
「こいつは隣の国サンクトロスの第一王子のロゼクスな。俗に言う腐れ縁ってやつだ」
「いや、それを言うなら幼なじみです。あと、幼なじみはもう一人いますよ」
国同士は対立関係にあり、自分たちも昔は仲が悪かったが、ケンカしているうちに互いを認め合い、交流を続けているそうだ。しかし、他の二人はまだ王ではない。現国王の意に反する形になっているのにこうしてここにいられるということは、王を黙らせるだけの実力があるということだろうか。それにしても、上での通説など、現地に来てみると当てにならないものだ。
「どっちでもいい。それより、もちろん動くぞ。ムカつく連中を一掃出来るチャンスだからな」
格好はそのままに、ニヤリと笑う。すごく嬉しそうだ。戦闘狂、そんな言葉が頭に浮かんだ。




