第三話-盗賊二人-
「はい。この先の街がカジャ様の治めるイグナメリスですはい」
男たちは瞬殺された。ニアちゃんが出るまでもなく、俺の護身術だけで事が済んだ。そういえば、愛用の棒は天界に置いたままだ。武器の調達もしないといけないな。
「よし。カジャ様に会いたいから、なんとかしろ」
正座して反省させている盗賊コンビを、見下しながらなるべく威圧的に言ってみる。無論、駄目元ではある。
「いやいやいやいや!無理!無理ですよ! あの人は興味のあるもの以外は完全に眼中に無いんすから。そのおかげで盗賊紛いのことも放置されているくらいなんすから!」
なるほど。こいつらのことはだいたいわかった。申し訳ないが、十分利用できる連中のようだ。ニアちゃんは俺の考えを察知したのか、可哀想だよという目で訴えてくるが、相手は盗賊。遠慮無し。自業自得だ。
「興味を引く『モノ』はあるさ」
俺は懐の書状を取り出した。
城門の前に来ると、屈強な門番が立ちはだかる。盗賊コンビのコル(丸いハゲの方)とレガ(細長いモヒカンの方)が対応するも、要領を得ず揉めている。十分に揉めて、門番がキレる限界直前のところで「もうよい!」と割って入る。そして上からの正式な使者を装い、書状を見せて取り次いで貰うように『お願い』をする。それがあるなら俺たちは不要じゃないかと文句を言うコルレガに
「それでは普通過ぎる。興味がないと無視されるんなら、現地の人間も交えて揉め事を起こし、結果正式な使者だったという方が面白いだろ? 王様に近づくには、少しでも印象を強く与えないと」
と、小声で伝える。城に近づくまでも、堂々とした態度を心掛けていた。ビクビクオドオドの盗賊コンビとのギャップが、より違和感を生み、俺の『位の高さ』を際立たせるはずだ。しかし、相手の趣味嗜好がはっきりしない以上、逆効果の可能性があるのが難しいところ。
しばらくすると、門番の一人が帰ってきた。どうやら会ってくれるらしい。所々に火傷を負っているのが気になるが… ともかく、この国の王カジャに対面出来ることになった。




