第二話-ぎこちない旅路-
移動中は思ったより時間がありそうだ。何しろ、ただ落ちると思っていたのだ。速度が出ているとはいえ、ゆったりとした空中散歩になるとは思ってもみなかった。なので、ちょうど良い機会、ニアと会話を試みる。
「ニアちゃんって、魔力、マジでヤバいね。修行とかしてたの?」
街に入れば職質みたいなこともあるかもしれない。お互いを、ある程度は知っておかないといけないだろう。それに、普通に興味がある。
「あ、いえ、元々魔力だけは高くて。それが原因で… だったんですけ…」
最後の方は声が小さくて聞き取れない。しかし、何を言いたいかは理解出来た。
「…聞いたよ。お母さんのこと。でも、君が生まれる前にはわかっていたことじゃないかな。そうなってでも君を生みたい。君に生まれて来て欲しかったってことなんだろ。まぁ、親になったこともない俺が言うのもなんだけど、さ」
この程度の慰めの言葉は聞き飽きたかもしれない。でも、言ってあげたかった。せっかく一歩踏み出した少女のその想いは遂げさせてやりたい。そのために、少しでも助けになってあげたい。
(もしかすると、アリシアとダブらせているのかもしれないな)
そんなことが、ふと頭を過る
「ぁりがと ございま…」
やはり声は小さいが、後ろから感謝の言葉をかけられる。思わず少しニヤけてしまった。
(少しは前に進めたかな? )
そんなこんなで、目的地へ近づいてよく見ると、集落は都市であり、火山の麓ではなく中腹の盆地を利用している城塞都市であった。上空から街の近くに降りては危険と判断し、火山の影になるように、やや遠回りして降りた。ここからは歩きになる。しかし、ここまで一時間足らず。かなりの時間短縮になった。
「ちょっと歩くけど、大丈夫かな?」
火山岩をくり貫き整地された道。見た目より歩きやすそうだ。ニアちゃんも、コクりと頷く。
!?
ニアの結界が二人の周囲を包む。
「何か、来ます。敵意、持ってます」
ニアが呟く。わかるの?と聞くと
「普段から魔力は外に漏れでています。それを利用して、周囲の生物の反応を感知してます。少しの感情ならわかる、です」
俺は魔力はなくとも魔法に興味はある。たしかそれは聖属性魔法の分類だったはず。先の移動は風属性。複数の魔法を高出力で出せるとは、ますますハンパネェ…
構えていると、岩場の影から二人の男が姿を現す。
「おう! いいところで会ったぜ。身ぐるみ置いて消え失せな!」
細長い男が言う。
「痛い目みたくなかったら、さっさとしな。女は残ってもいいぜぇ」
丸い男が言う。
俺たちは顔を見合せ、呆れ顔で頷いた。




