第四話-計画破綻-
(飛び降りろ? いったい何を言って…)
状況が飲み込めず呆気にとられているが、そんなことはお構い無しとばかりに矢継ぎ早に喋り続ける。
「この書状を持って下に行け。下ってのは魔界な。そこに俺たちの仲間… ってか、協力者になりそうなやつがいる。そいつに渡せ」
魔界? 天界の人間と協力関係? そもそも何を協力しているというんだ? 頭がパンクしそうだ。そもそも、責任を取れってどういうことだ?
(だいたい、俺はこいつに文句を言いたくてしょうがなかったんだぞ!)
「わかったら、さっさとそこから…」
「ふざけるな!!」
俺は王の言葉を遮り叫んだ。二人とも驚くこともなくこちらを見ている。俺はそのままの勢いで喋り続ける。
「俺のせいとか意味がわからん! それに、あんたロディエル王だろ? ルティナは、あいつはあんたの」
「黙れ!!」
ルティナの名前を出したとたんに雰囲気が一変する。抑えていた怒りが膨大な魔力と共に溢れ出る。あまりの力と豹変ぶりに完全に萎縮させられる。
「シン様、バレます」
女性の一言で王が落ち着く。そして、俺に語る。
「俺とドーガが長年かけて練り上げた計画だった。いろいろやってきたんだ。あとは軽く争いを起こして、俺たちの一騎討ちで和解まで持っていけるはずだったんだ。あと一歩で俺たちの夢だった上層統一だったんだ。救世主はどうでもよかった。来ようが来まいがどちらでも、むしろ終わってから来た方が、俺の権威は圧倒的なものになったんだ」
「どうでも? その、どうでもいいもののために…」
「言うな! 安全な場所に旅立った。そう思っていた。あいつらが殺し合うなんて… 誰も予想出来なかった。出来るはずなかったんだ…」
つい口を挟んだが、悲痛な顔で話す王に対してそれ以上の言葉はかけられなかった。
「そもそも、何故救世主が、今転生したのかが謎なんだ。俺たちが起こそうとした争いなんぞ、過去の大戦に比べれば『ごっこ』だぞ?」
その場にしゃがみこみ、両手で頭を抑えながら独り言を話す。たしかにそれは俺も疑問だった。上層の大陸内での小競合いで救世主登場なんて有り得るのかと。
そこでハッと思い出した。救世主は、ケイトたちはどうなった? 俺が心配になって、城はどっちの方角かと辺りを見回す。
「連れは諦めろ。救世主はあいつらにいいように利用される。男の方は最悪処刑も有り得る。フィデス一人では貴族どもは抑えきれん」
そんな… いや、絶望で思考を、足を止めるな! 走れ!そして辿り着くまでに考えろ。そう思って場所を聞こうと振り返ると、胸ぐらを掴まれ、そのまま持ち上げられた。
「これが書状な。名前はカジャ。ここから真っ直ぐ落ちれば魔界一デカイ大陸だから。死んでもいいからちゃんと届けろよ
言い終わると、書状を無理矢理に突っ込んで180度回り手を放す。俺はなす統べなくそのまま落ちた。そこには直径3m程の穴が開いていて、真下には中層の大陸は無く、さらに下方に大陸が見えた。
空から落ちて気を失うのは二度目だった




