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ワールドリンク  作者: さばみそ
第五章-天空都市ルクセリア-
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第三話-炎帝ロディエル-

そこにいたのは、燃えるような赤色の短髪を逆立てた、金色の瞳を持つ男だった。ゼフィス王より一回りは若く見える。年齢のわりに、どこか幼さも残るような、例えるならワルガキがそのまま成長したような…

(ワルガキで赤髪で金の瞳!? ルティナの父親!? シン・ロディエル王か? いや、こんなとこにいるわけが!?)

突然に現れた大きな魔力の気配に、大臣も兵士も、侍女すらも目覚めて、城内は騒然としている。王の姿が見えないことも拍車をかけているのだろう。もうすぐここにも誰かがやってくるはずだ。状況が飲み込めないで混乱していると

「くそっ! どうする!?」

赤髪の男が小さな声で怒鳴る。ゼフィス王は

「やるしかあるまい…」

と言った。

「いいんだな? 今、ここで!?」

再度、男が問うと、ゼフィス王は男の目を真っ直ぐ見て小さく頷いた。そして懐から短剣を取り出す。

(殺される!?)

そう思った。しかし、王はその短剣を男へ渡し、男はそれで王の胸を刺した。

(なっ!?)

夢でも見ているようだった。王は出血もなく、刺された部分から身体がみるみる白くなっていく。目の前の出来事に思考が追いつかない。俺はただ見ていることしか出来なかった。

「あとは任せろ」

赤毛の男はそうささやき、ゼフィス王は小さい頷いた。そしてこれまるで石像のように白く固まってしまった。


「王!?」


兵士たちが入ってくる。すると、男は俺の手を取り


「ご覧の通り、ドーガ・ゼフィス王は我が魔力により石の像へと成り果てた。お前たちの王はもういない。親愛なるゼフィス領の諸君よ、この私、炎帝の配下に下るがいい。地位も財産も保証するぞ? 答えは一月待ってやる」


国中に響くのではないかという大声で、そう叫んだ。片手を取られていた俺は耳も塞げず、頭がくらくらした。いや、このくらくらは魔法のせいだったかもしれない。次の瞬間、視界が歪み一瞬で景色が変わっていた。城の外、どこかの岩場のようだ。


「おかえりなさいませ。シン様」


女性の声がした。前髪パッツンの黒髪で、ボブで眼鏡の神経質そうな女性だ。おそらくは、この男の側近だろう。あちらの補佐官といい、こういうタイプが多いのか?

いや、そんなことを考えている場合ではない。たしかに「シン様」と呼んだ。やはりこの男がシン・ロディエル王、ルティナの父親なのか!


「城が騒がしくなりましたが、問題ですか」


女性が問う。


「ああ、やってくれたよ!」


と王がこちらを見る。女性は不可解な顔をしている。


「普通の人間のようですが… 何を失敗されたんです?」

「俺のミスじゃない。もちろんドーガでもない。こいつが結界を破ってしまったんだよ。禁呪だぞ? それをこんなやつが? 救世主ならともかく! くそっ!」


王は先程までの冷静さを失い、荒れている。女性も無理になだめることはせずに様子を見ている。少しして落ち着きを取り戻したロディエル王は、再び俺に話しかける。


「よし。お前、責任取って下に行け。そこから飛び降りろ」



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