第二話-会食-
俺たちが語り終わると、もう日が落ちかけていた。窓から夕日が差し込み王の顔を照らし、眩しさで少し目をそらす。兵士が慌てて遮光カーテンを閉めに走る。皆の目はカーテンを閉める兵士に集まっていた。だから気づいたのは俺だけだっただろう。眩しさのせいではない涙が、王の目から流れたのを。
審問が終わると謝罪され、解放された俺たちは来賓として扱われることになった。会食を行うから待っていてほしいと、侍女たちに客室へ案内される。王と二人で話したいが、自由行動の許可は出ない。会食は王とは対面ではあるが円卓で、他の貴族たちも同席であるため会話をすれば丸聞こえになってしまう。貴族や有力者たちは、たまにこちらを見つつ部下や隣席の者とこそこそ会話をしている。なるほど『来賓』として扱うことで、行動の制限と監視をしているらしい。ここの政治家たちは、救世主という存在が勢力図をどう変化させるのか?が相当気になるらしい。王も表情はうんざりしたような顔である。それが初対面の俺にもわかるくらいに顔に出ているのに回りが気にしないあたり、状況は相当ひどいのだと伺える。隣に控えている王補佐官が水を注ごうとしたが、王は大丈夫と断る。
この風景は、ここでは日常的なものなのだろう。何かを見つけては『敵』を作り、評し、貶め、蹴落とし、のし上がる。『敵』が国の外に出来ても、国内での争いが消えるわけではない。むしろ、内通という新たな武器を手生み出し、ヤル気満々なのだろう。アリシアが単独で救世主を探しに来たのも、この状況をなんとか出来るかもしれない、という期待があったのだろう…
しかし、現実は厳しいものだ。
(うまく取り入れば、事の後に素敵な肩書きをゲットだぜ!って感じか…)
たまに話しかけてくる言葉にも、そういう厭らしさがにじみ出ている。俺たちが気づいてないと思っているのだろうか、その取り入るはずの救世主様ですらうんざりしている。
会食が終わり、部屋へと送り届けられる。三人ともかなり疲弊していた。あの直後にこの国の現状を見せつけられては仕方ない。そして、結局王とは会話は出来なかった。聞きたいこと、伝えたいことが、どうしても直接ぶつけたいことがあったのに。彼女の想い、王の真意…
しかし、この状況では他の誰かに必ず聞かれてしまう。そいつ次第では、王も救世主も失脚させられてしまうだろう。それは俺も望むところではない。
気付けば、既に深夜になっていた。二人はベッドの上で熟睡していた。たぶん声はかけてくれていたのだろうが、全く記憶になかった。もしかしたら、考えていたようで、実は俺も椅子の上で眠っていたのかもしれない。
(起きたら謝らないと、だな。とりあえずトイレ行っとくか…)
部屋の外へ出ると、さすがにこの時間は皆寝静まっていた。監視もついていない。さすがに王の部屋には警備はいるだろうが、俺たちまでに人員は割かないようだ。いや、むしろ監視の隙をついて悪さを… が都合がいいのかもしれないな。そんなことをぼんやり考えながら歩いていると、トイレを通りすぎてしまっていた。
ふと、目の前の扉を違和感を感じる。人の気配か?
第二会議室、侍女に案内された時は、あまり使われていないと言っていた。なんとなく気になり、扉に手を伸ばす。
バチッ!?
電撃が周囲を走り扉が開く!
扉が開かれると同時に中の魔力が城内に一気に広がっていき、それに気づいた人々が一気に騒がしくなる。
中にいたのは王だった。そしてもう一人…




