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ワールドリンク  作者: さばみそ
第四章-再盛の町テルムス-
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第五話-急報-

「いや、足止めしちまって、ほんとにすまなかったな」

そう言うチョーマさんに、順調に進んでいるので問題無いといった由を伝える。詫びのついでに転送装置までの案内に息子のアレクサンドルをやると言ってくれた。アレクはボサボサ頭を掻きながら、嫌々な風を装っていたが、内心嬉しそうなのがよくわかった。ケイトもちょっと嬉しそうだ。意気投合したらしい。


ともあれ、チョーマさんと語り合った時間でわかったのは、結局『何もわからない』ということだった。唐突に召喚?させられ、説明もなく目的も与えられず、そもそも喚んだ人物がいるのかもわからない。単なる時空間の事故なのか? 何もわからない、何も意味はないかもしれない。ならばと割りきって第二の人生を謳歌していたところ、不意に訪れた「鍵」のメンテナンスの仕事。そして聞かされた救世主の伝説。

「俺は、この仕事のために喚ばれたのかもな」

「鍵」を見ながらそう言った。

ならば俺は、俺の喚ばれた理由は何だろう。彼女を無事に上に送り届けることか? そのためにすべきことは…

最善のために最悪を考える。しかし、その最悪は酒の残る頭に響き過ぎた。その姿を見て「飲み過ぎ」とアリシアが小突いてきた。今はこの関係が心地よかった。



朝、朝食をご馳走になってからの出発となった。皆すっかり打ち解けて、昔からの親友のようになっていた。特殊な状況下において、同郷や同年代というのは絆がより強くなる要素足り得るのだろう。チョーマさんが「鍵」を渡そうとした時、馴染みの若い商人がやってきた。

「おはよーございます! 聞きました?アルチョムさん、リドルの村長さんがヤバいらしいって」

荷物を下ろしながら言うその人に、俺たちは詰め寄った。

「どういうことですか!?」

「詳しく聞かせてください!!」

商人は驚きながらも答えてくれる

「いや、俺もそこで聞いたんですけどね、なんか野党? 襲撃にあったとかで、大怪我だとかなんとか噂になってましたよ」

大怪我とかなんとか… やはり噂、大事な部分があやふやだが、放置出来ない内容だ。さすがにソーマは固まってしまっている。俺もどうすべきか考えが… 頭が正常に動かない。

「いけ!ソーマ!」

そう言ったのはアリシアだった。ソーマがやっと我に返る。俺もソーマを見て頷く。

「頼む!」

俺が言うと、ソーマは馬に乗り、そのまま帰路についた。唐突な別れになってしまった。もっと涙ながらの感動の別れになるかと思っていたが、こんなことになるなんて…

朝日が小さくなっていくソーマを照らしていた。俺たちは見えなくなるまで、その後ろ姿を見守っていた。

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